将来のJAの中核担う職員23人 「必要とされるJA」へ改革案をプレゼン(1)2022年2月21日
JAの中核を担う人材育成に取り組んでいるJA全中は2月18日、第13回「JA戦略型人材育成研修全国研究発表会」をオンラインで開いた。全国各地のJAから将来の中核的な役割が期待される職員23人が参加、JA改革に向けて身近に感じた課題やその解決に向けた提案プレゼンした。
JA全中の戦略型中核人材育成研修は、JA改革を担う若手リーダーを養成するプログラムとして毎年、都道府県単位で開かれている。今年度は全国で約300人が研修を修了し、発表会には、各都道府県を代表して23人の中堅職員が参加した。
プレゼンをした職員たちは、全国的に農家戸数の減少や高齢化などの厳しい環境に直面する中、研修の成果を生かして各JAが持つ強みや弱みを分析した「SWOT分析」などをもとに現状の課題を分析し、地域に必要とされるJAの改革に向けた提案を1人当たり7分間で発表した。
発表会を総括したJA全中の菅野孝志副会長は「それぞれ特色のあるプレゼンだった。大切なのは職員が地域にどれだけ足を運ぶかが信頼のベースになるということであり、そこから期待に応える提案をするという関係性を築いてほしい。皆さんの提案を多くの仲間が支えてくれるのでさらに活躍してほしい」と参加者にエールを送った。
各参加者の主なプレゼン内容は以下の通り(2回に分けて23人の発表内容を掲載します)。
〇JAうつのみや(栃木県)中山貴広さん
「唯一無二の金融機関へ~農業融資で地域社会と繋がる」
農業経営体の法人化や大規模化が進む中、ロボットやAIを生かしたスマート農業化で機械の価格が跳ね上がることを取り上げ、「多くの金融機関の攻勢が強まる中、求められる農業融資を断ることは許されない」と強調した。JAにも農機具を販売する部門があるが、今後は地域農機具店にも営業するとともに、JAの強みを生かして貯金残高や共済積立金をもととした「みなし担保制度」を導入して農業者の所得増大や農業生産の拡大に挑戦したいと提案した。
〇JA広島中央(広島県)沖谷美瑳さん
「組合員が"組合員"としてJAを利用してもらうために」
SWOT分析で今後の戦略を検討したときに6次産業化が課題解決になると考えた。他県の優良事例を調べた結果、そのためにはキーパーソンの発掘や地域資源の発掘などのプロセスが必要だと感じたと指摘、具体的な取り組みとして、管内の農事組合法人をネットワーク化して、レシピと食材をセットにした「ミールキット」の開発を提案し、JAとして生産現場や加工・モノづくり・販売を支援して地域の活性化につなげたいと述べた。
〇JA山形市(山形県)鈴木公俊さん
「みらいの事業展開に向けた職員総合力の向上」
JAの事業総利益の推移を分析した結果、総事業に占める不動産事業の割合が順調に増えていることに着目した。賃貸住宅の管理数も年々増えて不動産関連の相談を受ける事例も多い一方、若い世代の宅建士の有資格者が減少傾向にあることから、「求む若者・宅建チャレンジャー計画」を提案、「宅建を理解することはJAの理解にもつながる」として、若い職員が宅建士に挑戦する制度の構築を進めたいと強調した。
〇JA大分県(大分県)円藤正泰さん
「地域共生社会の中でのJAの役割」
大分県では3人に1人が高齢者で保険請求代行業者とのトラブルが増えている中、コロナ禍をきっかけに県内に移住する人が2020年には1287人と増加傾向にあることに着目し、次世代が地域に戻りたいと思える地域社会の実現に貢献したいと考え、「いえの健康診断」の導入を提案した。家をドローンで空撮し、リフォーム相談にものることで業者とのトラブルを回避し、安心して暮らせる地域社会に貢献できると強調した。
〇全国共済連宮崎県本部 高橋俊之さん
「これからのJA共済ー自動車損害調査サービスの在り方から考えるー」
JA共済の認知率は高く、他にひけをとらない安定の実績を誇っているものの若年層からのブランド認知率が下落の一途をたどっていると指摘、次世代を担う若年層との絆づくりが課題だと述べた。そのうえで「少ない負担で大きな安心の提供」というJA共済の魅力要素を打ち出し、全国2万人のLA(ライフアドバイザー)を通して市場への浸透を図り、できるだけ支払い共済金の抑制を進めつつ、若者の認知率改善などの効果につなげる戦略を提案した。
〇JA愛媛たいき(愛媛県)字都宮祐輔さん
「地域で選ばれるJAを目指すために」
甚大な被害をもたらした4年前の西日本豪雨の被害調査を通してたくさんの「ありがとう」に触れて共済の大切さを痛感した経験を披露。これからも選ばれるJAであり続けるためには、LAのスキル向上などが欠かせないとして、指導にあたるFF(フィールドトレーナー)の配置や、共済窓口のカウンターセールスの強化を通して顧客満足度の向上につなげたいと提案した。
〇JA前橋市(群馬県)山崎貴彦さん
「農協マンの育成と持続可能な発展に向けて」
金融などをめぐる競争環境が激しさを増す中、組合員にパートナーと接し交流を深める"農協マン"の育成が必要だと強調した。そのためには組合員と職員が1つのチームとなった「JA共創ベンチャー」が最適だとして、モデルケースとして無農薬のナスを原材料としたナスクッキーの販売など6次産業化商品を共創する仕組みをつくって持続可能な発展につなげたいと提案した。
〇JA福島さくら(福島県)松崎晴樹さん
「共済事業の目標達成に向けた取り組み」
「地域のナンバーワンパートナーを目指す」ことを掲げ、SWOT分析で、新規取引者が伸び悩んでいることを挙げて若い世代のニューパートナーの確保が重要だと指摘した。その実現のため、LA育成のために入組して5年は渉外担当者にせず、知識習得など基礎固めを中心に専門職を育成する人事制度の見直しやフォロー体制の強化などを提案し、職員の意識改革や幅広いサービス提供を生み出したいと提案した。
〇JA山口県(山口県)岡山圭喬さん
「5年後のJA山口県を見据えた"加工用米"の取り組み」
米価の下落で農業経営が危機に直面する中、加工用米に取り組むことで農業者所得の増大を図りたいと強調し、「やまだわら」の振興への取り組みを披露した。営農指導員全員でとにかく田んぼに入ることを徹底した結果、2021年産で産地形成に向けた成果を挙げたほか、組合員からの信頼感も向上したとことを紹介し、組合員と生産者、営農指導員を「つなぐ戦略」で夢や目標を持ち、仕事に臨みたいと意気込みを語った。
〇JAいみず野(富山県)松長桂佑さん
「いみずの金融共済サロン~地域住民とのつながりを大切に~」
合併などで組合員や利用者との関係が希薄化する中、関係の再構築が必要だと指摘、金融共済部門職員がファイナンシャルプランナーとして、信用共済部門でライフプランをサポートする取り組みを提案した。富山県の持ち家率が全国2位の高さであることに着目し、「金融共済サロン」を直売所に併設してJAが総合事業で地域住民をサポートし、信頼されるJAを目指したいと語った。
〇JAしまね(島根県)菅原敏哉さん
「豊かな高齢化社会を支える地域共生社会の共創」
人口減少や高齢化が進中、県域JAの強みを生かして地域の課題解決に取り組む事業を地域と共創する必要性を強調した。そのうえで高齢者などが買い物に行かなくても済む、食材やレシピを届けるミールキットの開発を提案、規模の拡大より販売地域を島根県内に限定した地域密着型の活動を通して豊かな高齢化社会に必要とされるJAの姿を目指したいと述べた。
〇JA晴れの国岡山(岡山県)別所和実さん
「大型直売所を核とし"協同の輪"で三方良し」
小規模農家が多いことと直接販売では直売所出荷割が半数以上を占める県内の特徴を生かして競合他社と差別化した直売所戦略が必要不可欠だと指摘した。そのうえで准組合員も参画した黒字経営の大型直売所の運営を提案、農園やレストラン、キッチンスタジオも併設して差別化を図るとともにVR技術を活用したバーチャル直売所も開設し、売り上げ増につなげたいと述べた。
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