【第6回JA営農指導実践全国大会】(2) 地域農業の未来創る要に JA全中2022年2月25日
大会では審査の結果、最優秀賞にJAおちいまばりの二宮孝文さん、審査員特別賞にJA紀州の大野隆之さんが選ばれた。
【最優秀賞】
「紅まどんな」が救世主に
JAおちいまばり(愛媛県) 二宮 孝文氏
ベテランから若手まで6名の農家で結成された集落営農組織「松尾坊ちゃん倶楽部(くらぶ)」から地域を盛り上げるために何かアイデアをと言われ、水田を利用したかんきつ「紅まどんな」栽培を提案した。紅まどんなは高単価で農業経営の柱になっている。若い人が夢を持てる農業と次世代につなぐ収益性の高い施設栽培をめざすことにした。
構成員以外の農地を含めて合意形成し水田を集約、利用権を設定して約900本を定植した。雨よけのためにハウスも設置。作業労力を軽減するため水源と液肥混入機を設置。品質向上を目的とした周年マルチとドリップかん水チューブも導入する「マルドリ栽培」に取り組んだ。
水田転換のメリットは平たんで作業がしやすく、水源の確保が容易なこと、水稲から高単価かんきつへの転換で所得が増大したことにある。
JAはハウス資材や、水源設備の配管、かん水設備などの導入に補助事業をフル活用して農家負担を軽減した。初めての施設栽培であり組合員には不安も多い。JAが栽培指導など全面サポートした。
1年目の平成29(2017)年は液肥やかん水のタイミングが分からず肥大不足となった。そこで翌年からはマルドリ栽培指針を活用して施肥の時期、潅水の目安など栽培管理を分かりやすく見える化した。10a当たり400万円以上を目標に収量・品質の向上に取り組み、10a5t目標に対して令和2(2020)年産で4tを実現、高品質割合も70%以上確保した。水稲では10a当たり13万円程度の収益が280万円まで増大した。
「松尾坊ちゃん倶楽部」のハウスは地域モデル園として県内外から20団体以上が視察。菊間町の農家を対象に栽培講習を行い、当初は否定的だった農家も実績を目の当たりにして取り組みが広まった。菊間町では13園地が設置された。松尾から始まった取り組みが地域農家を巻き込んで大きく発展している。
【審査員特別賞】
小玉スイカ産地の復活に向けて
JA紀州(和歌山県) 大野 隆之氏
JA管内は小玉スイカの西日本有数の産地だが、近年は出荷量が不安定となり販路の拡大も厳しくなっていた。しかし、品種改良で味は良くなってきており、冷蔵庫に収まりごみが少ないなど消費者ニーズを捉えればまだまだ売れると考えた。
生産の維持・拡大のために花のスターチス生産者に栽培を推進した。彼岸以降、4月からはスターチス価格が下がるため、後作として栽培すればトータルで所得が向上できる。当初難色を示していた生産者も次第に積極的になった。ただ、前作があるためスイカ苗を生産する労力と時間がなく、新たな育苗会社を選定し安定した優良苗の供給体制を確立した。
JA紀州ブランドを確立するため生産組織の統合に取り組んだ。統合して農家にメリットがあるのかなどの声もあり、2年間50回以上も話し合いのうえJA紀州スイカ連絡協議会を設立した。地域を超えて栽培方法など情報交換と交流を行い、JA職員も営農、販売、生産資材購買担当者も参加して連携、JA全体でスイカを推進しているという意識を共有し、協議会で生産・出荷の調整、統一を図った。
出荷規格は消費者に望まれる形、生産者メリットがある形に統一。1ケース5円のコスト削減も実現した。また、栽培環境の変化に対応した防除暦を作成するなど、栽培方法と管理を提案している。
そのひとつして、薬剤抵抗性害虫に対して性フェロモン剤を導入、被害と環境負荷軽減、JA利用率の向上にもつながった。
新品種「ひとりじめNEO」は、着果性がよく、収穫後の日持ちもよく食味も上々で、今後積極的に導入を進めていく。また、地域や組織を巻き込んだ鳥獣被害対策も実施したことで秀品率と販売単価の向上につながった。
量販店での宣伝や小学校への出前授業などファンづくりにも力を入れている。今年は小玉スイカ部会を設立予定でさらなる産地の強化をめざす。
以下、(3)に続く。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日