たい肥の積極活用で新たな施肥体系へ転換を JA全農2022年3月2日
肥料原料の海外市況の値上がりが続くことが懸念されるため、JA全農は生産現場では海外原料市況の影響を受けにくい国内地域資源をいかに活用できるかが重要だとして、たい肥を含めた施肥体系への転換を進める。部会や地域でモデル実証にも取り組む。
たい肥で化学肥料減らす
肥料原料の価格高騰に対して、JAグループはこれまでも化成肥料の銘柄集約を進め生産コストの低減を通じて肥料価格を抑える予約積み上げ運動を行ってきた。
この運動の対象となる一般化成肥料は約550銘柄を24銘柄に集約し、工場の製造コスト引き下げのメリットを価格に反映している。
令和2年度の実績は11万tで3年度目標は12万t。昨年12月末時点では前年同期比105%の進捗状況になっているという。また、10t以上のトラック満車での引き取り可能な生産者には工場から直送することで輸送費を軽減する取り組みも行っており、令和2年度の実績は5万6000tとなっている。
こうした取り組みに加えて重要なのが土壌診断に基づく適正施肥と、たい肥など国内地域資源の利活用促進だ。
全農は全国20か所に分析拠点があり、年間約11万点の土壌分析を実施している。これによって土壌の肥料成分状態を把握し、施肥設計に無駄や不足がないかを診断する。減肥が可能な場合は、土壌状態にあった施肥設計に見直すことでコスト抑制をはかることができる。
これらに加えて全農が今後、生産現場に取り組みを推進していくのが、たい肥を含めた施肥体系への転換だ。たい肥の投入は「土づくり」のために重要だとして、その有効活用はこれまでも強調されてきたが、今回は「化学肥料の施用に加え、たい肥を活用することで、たい肥が持つ肥料成分見合いの化学肥料の減肥が可能になる」との考え方に立つ。
たい肥の機能は土壌の硬度の改善や、有効微生物の増加などにあるほか、肥料成分としては低いものの、緩効性のため作物の利用効率は高いという面もある。
たい肥の窒素、リン酸、加里の成分を計算すれば化学肥料の減肥ができるということになる。全農によれば、たとえば、牛ふんたい肥(2-3-4)を500kg投入する場合、窒素3kg、リン酸7kg、加里14kgの減肥が可能だという。
全農では、地域や部会でたい肥を組み込んだ施肥体系のモデル実証を広く進めることをJAなどに呼びかけていく。実証試験に基づいて、従来の施肥暦をたい肥を含めた新たな施肥体系へ転換することをめざす。
循環型農業の取り組みへ
この取り組みは海外市況動向に左右されにくい国内資源の利活用を進めてコスト抑制を図るだけでなく、地域で循環型農業に取り組むことでもある。
全農は、たい肥の活用に向けて、たい肥の生産から広域流通への取り組み支援やペレットたい肥の活用に取り組む。
また、たい肥と化成肥料の相乗効果がある混合たい肥複合肥料の開発の促進や、2020年12月の法改正でたい肥と普通肥料の混合が可能になった「指定混合肥料」も含めて、使いやすい品目を拡充していくとしている。
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