食と農を日本の基幹産業に 寺島実郎氏が講演 農協愛友会・協同組合懇話会2022年5月12日
農協愛友会と協同組合懇話会は5月11日、東京・大手町で合同記念講演会を開き、日本総合研究所会長で多摩大学長の寺島実郎氏が「コロナ・ウクライナ危機の先にあるもの-食と農の視座から」と題して講演した。
寺島氏は「埋没する日本」をデータで示し、「健全な危機感を持つ必要がある」と指摘した。
世界のGDPに占める日本の割合は、1994年の17.9%をピークに縮まり2000年には14%、2021年には5.1%となった。一方で日本を除くアジアの割合は同年に25%と存在感を増している。
産業の動向ではこの2000年からの20年間で粗鋼生産、エチレン生産、国内自動車生産はみな約20%減。国民生活をみると現金給与総額は7.9%減、全世帯の消費支出は12%減となっている。
分野別の消費支出では小遣い・交際費が50.8%減、教育・娯楽関連は22.9%減となった。一般紙の発行部数はこの20年で1700万部も減少、寺島氏は「学ばなくなった日本人」と話す。
こうした状況に陥ったのはコロナのせいでも、もちろんロシアのせいでもなく「アベノミクスの冷静な再評価が必要だ」と指摘。異次元の金融緩和で景気を刺激する政策をとったが、産業力を高めることはできていない。安倍政権は2020年度にGDPを600兆円にする目標を掲げていたが、実績は536兆円にとどまった。にもかかわらずCO2の46%削減を目標とする2030年度にはGDP663兆円をめざしている。10年で120兆円も増やすことができるのか、現実をみない政策だ批判する。
ただし、この20年間の家計消費の推移をみると食関連では7.8%のプラスと、家族全員がスマホを持つことで増えた通信関連費とともに増加している。
こうした問題点を指摘したうえで、今後の進路を「国民の安全と安定のための産業創生」だと提起する。産業のデジタル化やグリーン化に向けたイノベーションへの対応が求められるが、食と農、医療・防災、文化・教育を基幹産業とした原点回帰の産業基盤強化が必要だという。
寺島氏はTPPなどメガFTAを締結しても、他の国のように自給率を上げていく戦略を持つべきで代表品目を挙げ、食の生産、加工、流通、調理のサイクルの強化に取り組むべきなどと話した。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日