子実用トウモロコシ 現地で播種実演会 JA古川 JA全農2022年5月24日
宮城県のJA古川とJA全農は今年度から子実用トウモロコシの大規模実証試験に取り組んでいるが、播種実演会を5月23日、大崎市内のほ場で開いた。JAグループ関係者のほか、東北農政局、宮城県、農研機構などから合わせて150人ほどが参加した。
目皿式播種機による播種
子実用トウモロコシの実証実験にはJA古川管内の大豆生産組合が「大豆/トウモロコシ」の輪作に取り組む。
JA古川の佐々木琢磨代表理事組合長によると、米の転作対応で大豆の生産に取り組み、米と大豆、最近では飼料用米も加えたブロックローテーションを行ってきた。
地域によっては単収300kgを達成しているところもあるが、主食用米の生産調整の面積が増えるにつれ大豆を連作せざるを得ないほ場も出てきて連作障害で収量が上がらない地域も出てきたという。
こうしたなかJA全農は大豆との輪作体系をJA古川に提案、実証試験に取り組むこと決めた。
生産組合がトウモロコシを生産、JAが一括して大豆センターに集荷・保管し、石巻市のJA全農北日本組合飼料に飼料原料として供給するという一貫した取り組みを行う。
作付面積は予定を超える92haとなり、北海道を除けば最大の生産地域となる。
あいさつするJA古川の佐々木組合長
右はJA全農の富田常務とJA全農宮城県本部の大友本部長
佐々木組合長は「トウモロコシとの輪作で大豆の生産性向上も期待される。限られた農地をフルに活用していきたい」とあいさつした。
大友良彦県本部長は、今回の実証試験について「飼料を外国に頼っている現状についても消費者に知ってもらいたい」と話す。
JA全農は大崎市での実証を皮切りに今後試験を広げる予定。富田健司常務理事は「しっかりと検証して全国に広げていきたい」とあいさつした。
圃場では種子会社の担当者や農研機構の研究者らが播種深度(3~5cm)や追肥(4~6葉期に実施)、除草剤散布などの注意点を説明し、実際に2タイプの播種機による実演が行われた。播種機は大豆でも使用する。機械を兼用できる点も大豆生産組合にとってメリットとなる。
トウモロコシは分けつをしないため、種子1粒から1本のトウモロコシが育つことになる。播種量は10a当たり7000粒が目安だという。
ほ場は排水性がもっとも重要で弾丸暗渠など整備されている。
4月20日に播種した圃場。4~5葉期で順調に生育。
当日は4月20日に播種した場場も視察。4~5葉期で順調に生育していた。
子実用トウモロコシの作付けは年々拡大しており、令和3年産の面積は全国で992ha、6477tとなった。産地別では北海道が約8割を占める。これまで岩手、秋田、千葉、山口で作付けが行われてきた。主食用からの転換のためだけでなく、25%の飼料自給率を向上される意義があるほか、牛糞堆肥の投入による土づくりなど耕畜連携を進めることにもなる。
6条の真空播種機
労働生産性が高いこともメリットで10a当たりの労働時間は主食用米の23時間に比べて、子実用トウモロコシは2時間程度。全農などの試算では大豆の10a当たり所得が5.4万円でトウモロコシが3.3万円だが、大豆の労働時間は7時間でトウモロコシの3倍以上かかる。
トウモロコシの収穫後は茎をすき込むことで次作の大豆の収量向上にもつながる。
一方で台風の倒伏リスクや、収穫機械としてコーンヘッダーを購入する必要があることや、カビ発生リスクやアワノメイガなどの防除、鳥獣対策など課題もある。
また、農業共済の対象でないことや、交付金の単価など支援策の拡充も課題となる。実証試験ではこうした課題と対応策も検証していく。
トウモロコシの種子を見る生産組織連絡協議会の鈴木組合長
今回の取り組みを行う生産組合の一つ、富長生産組合の組合長でJA古川の大豆・麦・子実用トウモロコシ生産組織連絡協議会の鈴木正一会長(74)は「昨年の米の仮渡金が3000円も下がって1万円を切った。ショックで頭の痛いところにトウモロコシの話が来た。飼料用米の交付金も複数年契約の助成がなくなり下がった。トウモロコシを何とか生産拡大させたい」と話した。
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