手荷役のない米の物流確立へ 統一フレコンで作業時間52%減 JA全農2022年6月3日
JA全農は、米の物流でフレコン輸送による輸送力の確保とコスト抑制による生産者所得の確保をめざしているが、このほど農水省の事業を活用した実証試験で紙袋輸送にくらべて作業時間が平均52%減、生産流通経費が23%減となることなどを示した。試験結果をもとに全農統一フレコン利用の拡大など、さらに米の物流改善をめざす。
JA全農は、4月に令和2年度、3年度に行った実証事業報告書(玄米の推奨規格フレコンを活用した物流効率化実証支援事業報告)をまとめた。
実証事業では、生産者からの出荷、検査と倉庫での保管、トラックへの積み替えなど輸送、納品先の荷受けや張り込みといった各段階での「安定性」、「作業性」、「経済性」を全農統一フレコンと紙袋で比較した。
実証試験の結果、各段階で荷崩れや傾きといった安定性についてフレコンは紙袋と同等以上であることが確認されたほか、トータルで作業性や経済性が向上した。
たとえば、生産段階で米を詰める作業人数はフレコンのほうが多いものの、作業時間は大幅に短縮されるなどの結果が示され、トータルで作業時間は平均52%低減するという結果だった。
また、人件費、運賃を含めた経済性の比較では、トータルで生産流通経費が23%低減した。
実証試験では、玄米の製品データを電子化し、QRコードにしてフレコンに付け、事務効率化やリスク低減などの効果も測定した。
たとえば、積み込もうとしているフレコンのQRコードを読み取り注文データと照合し、注文どおりかどうかを色で知らせる仕組みを導入し、効果などを検証した。
その結果、フレコンごとの情報を電子化することで、データに基づく在庫配置の最適化や配送経路の最適化など、保管・輸送コストが5%削減できる可能性や、検査証発行時間や、出庫時、荷受け時の作業時間を5%~10%短縮できる可能性などが確認された。
また、貨物の取り違え防止など目視確認に比べてミスが減ることも確認されたほか、QRコードで品質情報を伝達することによって、実需のニーズに対応した原料選択と製品化オペレーションが可能となるなど、販売拡大にも寄与することも考えられた。
QRコードの活用でデータを蓄積し、リアルタイムの在庫把握とともに、今後はAI分析による施設利用の効率化、配送ルートの最適化による流通コスト削減が実現できる可能性も示唆された。
JA全農はこの実証事業の結果から、全農統一フレコンが米の物流合理化に資することが確認できたとして、関係者が連携して普及拡大に取り組むために産地に広くメリットを伝えることが有効だと報告書で強調している。
米の物流改善は大きな課題で紙袋輸送はトラックへの積み込みという負担が大きいため、ドライバーの確保が難しくなっている。運賃とは別に手荷役を料金化する動きもあり、コスト増加による生産者所得への影響も懸念される。
全農統一フレコンは、生産者とJAが無償で利用ができ、繰り返し利用するため環境にも配慮した取り組みだ。2022(令和4)年産米では25万枚が利用される見込みで約25万tが統一フレコンによる物流となる。
一方、統一フレコンの普及と合わせ、玄米流通のまだ半数を占める紙袋についてはパレットに載せる「全農パレチゼーションシステム」による一貫輸送を進め、手荷役発生によるコスト増加に取り組む。こうした米の物流改善によって安定供給と生産者所得確保をめざす。
JA全農米穀部は「生産者が作った米を、買いたいという人に確実に届ける役割をしっかり果たしていきたい」と話している。
重要な記事
最新の記事
-
【JA部門】優秀賞 やりがいを感じる仕事で組合員対応力の強化 JAうつのみや TAC・出向く活動パワーアップ大会20242024年11月26日
-
令和6年「農作業安全ポスターデザインコンテスト」受賞作品を決定 農水省2024年11月26日
-
農水省「あふ食堂」など5省庁食堂で「ノウフク」特別メニュー提供2024年11月26日
-
鳥インフル 米オクラホマ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月26日
-
マークアップ上限kg292円に張り付いたSBS入札【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月26日
-
「りんご搾り粕」から段ボール「りんごジュース」出荷へ実用化 JAアオレン2024年11月26日
-
JAかみましきで第22回JA祭を開催 過去最多の来場2024年11月26日
-
鹿児島堀口製茶 DX通信に追加出資 地域農業の高度化と地域創生へ2024年11月26日
-
海の環境保全と国内水産業を応援 サンシャイン水族館で生産者と交流 パルシステム2024年11月26日
-
アグリビジネス創出フェア 農水省ブースに「レポサク」展示 エゾウィン2024年11月26日
-
2大会連続日本一の技術 坂元農場の高品質な牛肉づくりを紹介『畜産王国みやざき』2024年11月26日
-
「プレ節」発売10周年記念 無料配布イベント実施 マルト2024年11月26日
-
不健康な食生活がもたらす「隠れたコスト」年間8兆ドル FAO世界食料農業白書2024年11月26日
-
農業資材などお得に 2025年「先取り福袋」12月1日から予約開始 コメリ2024年11月26日
-
宅配システムトドックに「通販型乳がん検査キット」掲載 コープさっぽろ2024年11月26日
-
食品宅配サービスOisix「鈴鹿山麓育ち みんなにやさしいA2ヨーグルト」新発売2024年11月26日
-
需要好調で売上堅調 外食産業市場動向調査10月度 日本フードサービス協会2024年11月26日
-
気候変動緩和策 土地利用改変が大きい地域ほど生物多様性の保全効果は低い結果に2024年11月26日
-
雨風太陽 高橋代表が「新しい地方経済・生活環境創生会議」有識者構成員に就任2024年11月26日
-
サカタのタネ スペイン子会社がアルメリアで新本社の起工式を実施2024年11月26日