子実トウモロコシ 1800ha 前年比6割増 生産者協会が設立記念シンポ2022年8月26日
日本メイズ生産者協会は8月25日、東京都内で設立シンポジウムを開き、子実トウモロコシ生産への取り組み事例や技術的、政策的課題などが報告された。
都内で開かれた設立記念シンポジウム
同協会は各地で子実トウモロコシ生産に取り組む生産組合が4月に設立した。作付け情報の集約と技術情報の発信、関係団体との連携などに取り組む。
代表理事には北海道子実コーン組合の柳原孝二組合長が就任した。
柳原孝二代表理事
シンポジウムでは、同協会の調べで2022年の作付け面積が1839haと昨年より60%増加したことを明らかにした。北海道が1280haともっとも多く、宮城県が155ha、三重県が80haなどとなっている。
柳原氏は水田リノベーション事業で子実トウモロコシへの交付額が拡充されたことや米価下落を作付け拡大の要因として挙げ「世界的に穀物不足のなか、トウモロコシは重要な品目。需要に応じた適切な生産は食料安全保障にもつながる」と指摘した。
ここまで子実トウモロコシが生産拡大した理由として、茎葉処理除草剤によりほとんどの雑草の駆除が可能となり農作業が軽減したことや、1メートル近く伸びた根がほ場の排水性を改善し、子実トウモロコシ後の大豆栽培の環境が良好になったことなどを挙げた。また、ほ場に残ったトウモロコシ残渣のすき込みによる大豆の増収効果も出ている。
日本の濃厚飼料の自給率は12%だが、1%上昇させるために必要な子実トウモロコシは21万7000t程度、単収900㎏で約2万4000haの作付けとなる。柳原氏はこうした試算をもとに「子実トウモロコシを24万ha作付けすれば10%の濃厚飼料自給率確保が可能」と話した。
生産拡大に向けた課題としてほ場整備をあげる。豪雨などに備える十分な明渠排水路の整備、暗渠排水や地下灌漑などを備えた多目的ほ場の整備などが必要だという。
政策支援では収量増加に向けて面積払いよりも数量払いを重視すべきで交付金による継続的な支援が必要だとした。
そのほか流通体制づくりでは、ほ場に隣接する簡易貯蔵施設は輸送コストや省力化の効果が大きく、飼料工場や畜産農家への供給はJAや各地の子実コーン組合などが調整することも課題とした。
シンポジウムではJA全農が宮城県のJA古川で取り組んでいる実証試験について報告した。JA管内の大豆生産組合を中心に31経営体が計92haを作付けした。
一部は7月の大雨と強風で倒伏したが、回復の可能性は高く、また、被害にあわなかった地域は生育が良好で軸の先端まで雌穂が充実しており高い収量が期待できるという。
JA全農は子実トウモロコシ普及拡大に向けた体制を構築。耕種総合対策部が実証支援・栽培技術確立、耕種資材部が肥料・農薬、農業機械、施設農住部が乾燥調整・保管施設、畜産生産部が品質確認と飼料利用を担当、米穀部が政策要請も含めた全体の窓口を担っている。
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