現状つかみ具体的対応を 組織基盤強化策を探る JA全中がフォーラム2022年8月30日
農業従事者の減少に伴って弱体化するJAの組織基盤をどのように強化するかー。このテーマでJA全中は8月26日、東京でフォーラムを開き、対応策を探った。立命館大学経済学部の増田佳昭教授は、自分のJAの組織基盤の現状を把握し、対応策を明確にすること、JA静岡市の大原正和組合長は、JAからの積極的・機能的な情報発信することの重要性を指摘した。オンラインで配信し、JA組合長や担当の常勤役員らが参加した。
組織基盤の強化をめぐり意見交換する参加者
JA全中は2021年の第29回JA全国大会で「組合員の拡大とアクティブメンバーシップの確立」を打ち出し、組織基盤の強化に取り組んでいる。この背景には基幹的農業従事者減少の危機感がある。
2010年から2020年で70万人減少し、10年後の2020年にはさらに55万人減ると推計される。正・准合わせた組合員も2017年を境に減少に転じており、このまま推移すると、JAの組織基盤の弱体化が進む恐れがある。このためJA大会では、対話を通じた組合員ニーズ把握と相談をもとに活動・事業利用の促進を促し、組織と経営の基盤強化に取り組んでいる。
フォーラムで増田教授は「つながり志向のJA経営―戦略的な組織基盤強化を」と題して基調講演。JAの経営基盤は組織基盤に支えられており、「組合員とのつながりをきちんと形成し、管理できるかがJA経営の成否を決める」として、JA独自の「つながり」の重要性を強調した。
そのつながりが世代交代やコロナ禍で希薄化し、組織基盤の危機を招いている。同教授は「JAトップは、つながりが経営効果に与える効果を認識するとともに、ギャップをどう埋めるかが課題」と指摘する。
大原組合長は、「農協の役職員の言動が組合員の意識変革を誘導する」として、役職員の〝人財基盤強化〟が必要という。〝人財〟とは組織を動かすことのできる人のことであり、その育成が結果的に農協の組織基盤強化につながるという。
そのうえで、役職員の人材基盤強化では、①役職員の意識変革②「スマート農協」の推進③組合長としての方針・意見の提示④若手職員を主体とした労働生産性プロジェクトの実施、⑤理事会の活性化などを挙げる。
大原組合長のいう「スマート農協」とは、コストダウンと効果的事業推進の両方を同時に進めることのできる賢くて高能率な組織のこと。例を挙げると、資料は同一フォーマットで1枚、会議は参加者全員が発言し1時間以内に結論を出す、悪い情報や案件も隠匿、躊躇なく報告することなど。
また、毎月1回の理事会で、組合長としての方針・意見を示す「組合長通信」を発行。労働生産性プロジェクトでは、自由の発言できる職場風土づくりを実現し、若手職員のアイデアの掘り起こしに努めている。
一方、組合員対象の組織基盤強化・アクティブメンバーシップ強化では、ふれあい座談会や認定農業者情報交換会、青壮年部・女性部との意見交換会などへの参加を促す。また、信用事業の35%、共済事業の利用率45%を占める准組合員に対しては「じまんの農業塾」や「オトナ女子短大『シズカレ』などへの参加を呼び掛けている。
こうした組合員への働きかけについて同組合長は「組合員一人ひとりが農協の基本理念を理解し、行動に移すことで実現可能になる」として、組織基盤強化には、農協の理念・原点の周知が重要であることを強調した。
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