【農協協会 JAのコメ実態調査】ドローンの普及進む2022年9月27日
(一社)農協協会が全国各地のJAの協力で実施している「JAの安心・安全な米づくりと防除対策について」の2022年度調査結果がこのほどまとまった。その調査結果から今回は米の特別栽培への取り組みや防除対策などの実態をまとめた。
この調査は、水稲作付け面積100ha以上の全国543JAを対象に、各JAの水稲関係者(営農・購買)に回答をしてもらった。調査方式は郵送による自記入式アンケート。調査期間は2022年2月9日~5月31日で回答は470件となった(回収率86.6%)。
地区別の回答数は次の通り。
〇北海道=45件(回収率93.8%)
〇東日本地区(東北6県、関東7都県、甲信越3県、北陸3県)=194件(同85.8%)
〇西日本地区(東海4県、近畿6府県、中国5県、四国4県)=152件(同84.4%)
〇九州地区(九州7県、沖縄県)=79件(同88.8%)
回答があった470JAの2021年度の管内水田面積は、全国平均4381haとなった。北海道は3424ha、東日本は4728ha、西日本は2359ha、九州は2608haだった。
新栽培技術 普及見込み
各栽培技術に2021年度の普及面積と5年後の推定面積を聞いた。
移植栽培の全国平均は2087haで5年後には1996haへと4.6%減少する。東日本では平均2849haだが、5年後には2716haへと4.7%減となる見込み。
ただ、移植栽培でも疎植栽培は増える見込みだ。2021年度の全国平均では294haだが、5年後には343haと16.7%増える。とくに東日本では383haから456haへと19.0%と増える。
栽培技術では湛水直播栽培(鉄コーティング)、乾田直播いずれも普及が進むと見込まれるが、とくに密苗と密播が伸びそうだ。密苗は全国平均で現在は59haだが、5年後には109haと84.5%増える見込みだ。密播も全国平均26haが52haへと倍増するという結果となった。(図1)
図1 各栽培技術の普及面積
ドローン散布 増える
水田農業では労働力不足に対応するためにスマート農業の導入など省力化も課題となっている。
そこで調査ではドローンの活用実態についても聞いた。JA管内でドローンを使った農薬散布をしている農家がいるとの回答は全国平均で80%だった。昨年調査の73%からさらに増えた。北海道では89%、九州では85%となっている。
ドローンの活用法でもっとも多いのはやはり「農薬散布」で80.2%を占める。そのほか「生育状況の確認、施肥時期、収穫適期の予測」に活用しているとする割合は11.6%だった。わずかだが「病害虫発生のモニタリング」にも活用されている。
JA管内の平均ドローン所有台数は全国平均で13.9台。昨年の回答のまとめでは平均9.8台だったことを考えると導入が進んでいる実態がうかがえる。地域別では北海道14.2台、東日本16.3台、西日本8.6台、九州16.4台となった。
ドローン散布農家が増加する見込みとの回答は94%に達した。
農薬成分の制限 6割超
使用農薬の制限や散布回数を制限した特別栽培の取り組みについては「成分数を制限して取り組んでいる」が62%となった(図2)
図2 特別栽培の取り組みの有無
慣行栽培の成分数は17.3成分、これに対して特別栽培の成分数は8.8成分となった(全国平均)。使用農薬の成分数を制限した特別栽培の面積比率は全国平均で12.5%となった。地域別では北海道19.1%、東日本12.9%、西日本8.8%、九州14.0%となった。
また、「散布回数を制限している」との回答は1%。「成分数と散布回数の両方を制限している」は10%だった。
散布回数は慣行栽培が9.4回。これに対して特別栽培では5.2回となった。
特別栽培「増える」は1割
特別栽培で満足な防除ができているかを聞いたところ、全国平均で「現在の回数で十分防除できている」は29%、「使用できる回数が少なく毎年品質を保つのに苦労する」が18%だった。もっとも回答数が多かったのは「年によって病気、害虫の発生頻度が異なるため、規定の防除回数では十分防除できない年がある」で48%だった。(図3)
図3 現在の総散布回数での満足度
特別栽培でさらに農薬散布回数を減らす意向があるかを聞いたところ、「もっと減らしたい」が12%、「これ以上、減らしたくない」が88%だった。
2021年度調査での特別栽培面積は全国平均で335ha。一方、取り組んでいないとの回答は27%だった。3年後の予想は「減る」21%、「増える」12%、「現状と変わらない」が66%だった。(図4)
剤型「多いほどいい」
除草剤についての剤型への評価を聞いたところ「剤型が多いほどいい」が36%ともっとも多かった。次いで「3つ以上の剤型が必要」が30%だった。「2つの製剤が必要」は5%、「参考にする程度」は23%だった。(図5)
図5 剤型の多さに対する考え方
また、現在使用している剤型の状況を薬剤別に聞くとともに、3年後の見込みも聞いた。
初期除草剤では粒剤33%、フロアブル剤38%、ジャンボ剤14%、乳剤13%となった。3年後には粒剤32%、フロアブル剤38%、ジャンボ剤16%、乳剤13%とほとんど変わらない見込みとなった。(図6)
図6 初期剤使用面積
また、初中期一発剤では粒剤42%、拡散粒剤7%、フロアブル剤21%、ジャンボ剤23%、豆つぶ剤5%だった。3年後は粒剤39%、拡散粒剤9%、フロアブル剤21%、ジャンボ剤24%、豆つぶ剤6%と大きな変化は見込まれていない。(図7)
図7 初中期一発剤使用面積
JA管内で問題となっている病害について聞いたところ、「防除が極めて困難」との回答率がもっとも多かったのは「稲こうじ病」で25%だった。次いで「もみ枯れ細菌病」の8%だった。そのほか「防除がかなり難しい」という声が多かったのは「育苗期細菌病害」「穂いもち」「紋枯病」などが挙がった。
また、「抵抗性がある」との回答がもっとも高かったのは「もみ枯れ細菌病」で回答率は25%だった。抵抗性病害の発生による被害面積の程度で「大」との回答がもっとも多かったのは「育苗期細菌性病害」、「紋枯病」だった。
病害虫について「防除が極めて困難」だとする害虫には、イネシンガレセンチュウ、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)、イネハモグリバエが上位に挙がった。
抵抗性の有無を聞いたところ、「有り」との回答率が多かったのは、セジロウンカ、イネドロオイムシが挙がった。
担い手に複合経営促進
JAでは生産者の経営安定のためにどんな取り組みをしているかを聞いた。(表1)
生産者の経営安定のためのJAの現行の取組(取組中)、
将来的に積極的取り組みたいもの(検討中)・検討していないもの(選択率)(Q86)(クリックで拡大)
全国平均でもっとも多かったのは「担い手向け大型規格の取扱い」で回答率は75%となった。次いで「畑作・園芸を含めた複合経営の取り組み」58%、「多収品種の導入」57%となった。
地域別にみると北海道では「複合経営への取り組み」が70%ともっとも多く、次いで「主食用米の新規販売先の開拓」が59%と続く。ゆめぴりかなどの新たな品種の評価を背景にJAの販売力の強化により担い手の経営安定につなげようという考えがうかがえる。
一方、東日本では「担い手向け大型規格の取扱い」が87%でトップだが、次いで「多収品種の導入」が69%となっている。業務用向けの需要に応える米づくりが意識されている。西日本、九州もともにトップは「大型規格の取扱い」だが、西日本では「国産化成肥料の銘柄集約」、また、九州では「共同利用施設の有効活用」がそれぞれ二番めに挙がった。
農水省は化学農薬や化学肥料の削減していく「みどり戦略」をこの秋から本格的に推進していく。現場ではそのために施肥や防除体系などの見直しを進めることが課題となっていく。持続可能な農業へ産地の取り組みが期待されるとともに政策支援も求められる。
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