令和4年度第2回直播タマネギ現地研修会を開催 スマート農機による播種を実施 JA全農2022年10月19日
JA全農、農研機構、東北地域タマネギ生産連携コンソーシアムは10月3日に「令和4年度第2回直播タマネギ現地研修会」を広島県のJA西日本営農技術センターで行った。同研修会では、タマネギを直播栽培することにより、作業時間や費用の削減が可能なことが説明された。また、同センター内の圃場で畝立て技術、溝底播種技術、リン酸直下施肥技術が自動操舵機能付きのトラクタによって披露された。
タマネギ直播を行う様子
タマネギは移植栽培により生産されており、多くの作業が機械化されているが、機械の導入が遅れた地域では生産量の減少が続いており、生産を拡大するために省力的な栽培方法が求められている。また、国内の生産地が偏っており、供給量の少ない時期でも国産タマネギの供給が求められている。
タマネギを直播栽培するメリットとして、育苗・移植作業が不要になることで移植栽培時に必要な育苗施設、移植機の費用を削減、作業時間10aあたり20時間程度削減できることが挙げられる。移植栽培と直播栽培を比べた場合、播種時期に違いがあり直播は移植よりも最適な播種時期が遅くなる。直播において播種時期は重要で、播種が早いと越冬時に植物体が大きいため収穫時に抽苔や分球が発生し、播種が遅いと越冬時に植物体が小さいため小玉が増加するため、可販収量の低下につながる。直播の際は播種時期を移植栽培よりも半旬から1旬遅らせたほうが良く、栽培地域や品種に応じて播種時期を検討する必要がある。
等間隔に播種されたタマネギの種子(赤枠内)
タマネギは1株で1球のため、安定した収量を得るにあたり株立ち数が重要になる。株立ち数を確保するためのポイントとして、適切な播種量と播種深度、適切な圃場の準備、播種時に高温と乾燥の回避が必要となる。播種量については、株立ちが8割であれば播種時に2割程度多く播種することで、株立ち数の増加が見られた事例が紹介された。播種深度については2cmが推奨され、播種深度が浅いと除草剤による薬害のリスクが発生すること、播種深度が深いと発芽が遅れや出芽率の低下につながることが説明された。適切な圃場を準備するにあたっては、水田を転作する場合は排水対策や砕土率の向上が必要となる。同研修会では、排水対策として明渠や弾丸暗渠、高畝栽培の導入、砕土率の向上としてアップカットロータリーの活用が紹介された。また、過乾燥になる圃場で直播栽培を行う場合は、平畝栽培や播種後の潅水を検討する必要があることも説明された。
座学の様子
直播の問題点として、タマネギは初期生育が遅く雑草の生育に負けてしまいやすい。そのため、雑草の防除も重要となる。雑草の防除については、耕起前のラウンドアップ処理や丁寧な耕起、播種後に除草剤を施用することによる初期除草の徹底、中耕除草やタマネギ生育期における除草剤の活用が挙げられた。具体的や薬剤名として、耕起前であればラウンドアップマックスロード、播種後であればグラメックス水和剤とゴーゴーサン乳剤、生育期であればボクサーとクロロIPCが紹介された。また、選択性除草剤としてセレクト乳剤とナブ乳剤、非選択性除草剤の畝間処理としてラウンドアップマックスロードとバスタ液剤が紹介された。中耕除草については、時期の目安としてタマネギの出芽後3~4葉までに行うこと、除草剤と中耕除草を組み合わせることでより効果的な雑草防除ができること、栽培様式(平畝か高畝か、条の広さ)に合わせて機械設定をすること、除草剤の効果が切れてから行うと共にタマネギの葉を傷つけないよう注意することが説明された。
圃場での質疑応答の様子
岡山県で行われた現地試験も紹介され、令和2年度はタマネギが雑草の生育に負け収穫に至らなかったことが報告された。その原因として、当時はグラメックス水和剤とゴーゴーサン乳剤が適用ではなかったことが挙げられた。令和3年度は対策として、難防除雑草の多い圃場を避け、スタブカルチやアップカットロータリーで砕土率を高めた。さらに、播種時期を後ろ倒しにして新たに適用拡大されたグラメックス水和剤とゴーゴーサン乳剤の散布を行った。その結果として、規格、収量の両方で十分な結果が得られたことも報告された。
ロータリー、成形機、播種機、薬剤散布装置、施肥機、フローティング装置が取り付けられたトラクタ
屋内での説明の後、同センター内の圃場でクボタの自動操舵機能が搭載されたトラクタによる直播のデモンストレーションが行われた。トラクタにはロータリー、成形機、播種機、薬剤散布装置、施肥機、フローティング装置が取り付けられており、畝立て、畝上溝成型、播種、種子直下リン酸施肥が一度にできることが披露された。直播の実演を見て、質問をする参加者の姿も見られた。
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