農の価値を地域へ 変革進め「共感力」さらに 東京農大総研が農協シンポ2022年11月14日
東京農大総研農協研究部会は11月11日、東京・世田谷の同大学で「農的価値への共感力」をテーマにシンポジウムを開いた。オンラインを含め学者やJAの関係者らが参加し、多様な農業形態が生まれているなかで、農協はどのようなイノベーションが求められているか、そのために必要な教育研修・広報、農家・法人に対する支援策などについてディスカッションした。神奈川県のJAはだの、茨城県のJA水郷つくばが実践報告した。
農協の「共感力」が議論されたシンポジウム
シンポジウムの狙いについて、座長を務めた同研究部会会長の白石正彦・東京農大名誉教授は「農協活動において組合員・住民の『農的価値への共感力』の源泉と事業活動成果の好循環メカニズムをいかに進化させるか」と説明。それによって組合員が主人公である農協活動は、協同組合の特性を維持しながら組織・事業・経営のイノベーションを先導する役割があるという。
報告した神奈川県のJAはだのは、何らかの形で農業に関わりたいと思っている市民のニーズに応えて都市農業センターをJA本所敷地内に設置。市役所とワンフロアで、新規就農・基礎セミナー・農産加工の市民農業塾を開いている。併せてJAは独自の協同組合講座・組合員専修講座・専修講座を開講。こうした取り組みによって、15年間で73人の新規就農があった。
また、集落単位のJAの生産組織には准組合員もメンバーになっており、正・准組合員を区別しない組織文化をつくりあげている。同JAの宮永均組合長は「自給的な新規就農者を含め、さまざまな人に農や地域にかかわっていただく仕組みを拡大し、農業者の担い手育成に取り組むとともに、農的くらしを進めていきたい」と話した。
茨城県のJA水郷つくばは、ネットワーク型マネジメントによって、レンコンやかっぱ大根、マッシュルームなどを栽培する多様な農家・農業法人への支援を行っている。池田正組合長は、ネットワーク型組織のメリットとして、相互の意見交換が活発になりイノベーションにつながることをあげる。
この考えで同JAは営農・経済事業成長・効率化プログラムで17のソリュ―ションに取り組み、レンコンの市場外取り引きの拡大、選果場の統合再編、直売所の販売力強化、生産資材の品目見直しなどに取り組み、収支改善の成果をあげた。また米や旬の野菜の販売などのクラウドファンティングによる年間サポーターの募集も進めている。
ディスカッションでは、JA出資型農業法人への支援や直売所の役割などが話題になった。都市農業のJAはだの管内でも17haで米や大豆を栽培しJAの直売所に出荷する株式会社がある。100haを超える経営も多いJA水郷つくばでは、農地の集約などで支援している。
直売所については、JAはだのの「はだのじばさんず」が新規就農者の確かな販路としての機能を果たしている。またJA水郷つくばでは本店の1階が直売所になっており、金融の窓口に行くには1階を通る配置になっており、JAの存在感を示す取り組みとして関心を集めた。
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