個別経営大賞に「エヌ.オー.エー」、「服部農園」、「ライスフィールド」 第52回日本農業賞2023年2月1日
日本放送協会とJA全中は1月31日、第52回日本農業賞の審査結果を発表した。
日本農業賞「個別経営の部」と「集団組織の部」は意欲的に経営や技術の改善に取り組み地域社会の発展にも貢献している農業者と営農集団や、食や農の担い手として先進的な取り組みをしている個人、集団組織を表彰している。
また、日本農業賞「食の架け橋の部」は農業者と消費者を結ぶ優れた活動や未来の豊かな生き方、地域づくりのヒントとなる活動を行っている個人、団体を表彰している。
今回は個別経営の部に93件、集団組織の部に92件の応募があった。食の架け橋の部には31件の応募があった。3月4日に東京・NHKホールで中央表彰式を開く。
<個別経営の部・大賞>
(有)エヌ.オー.エー代表取締役 髙橋良(JAみやぎ登米)
主要作目:水稲、繁殖牛、大豆、大麦、小麦
【評価】
「エヌ.オー.エー」はエー」はナカダ(地名)・オーガニック・アグリカルチャーの略。本法人は米・麦・大豆・飼料作物を主体とする耕作面積123ha、黒毛和牛繁殖牛124頭の耕畜複合の大規模大規模経営。所在地の登米市は「赤とんぼが乱舞する産地を目指そう!」を合言葉に、「環境保全米」が管内水田の約80%を占める全国有数の特別栽培米地帯であり、本法人は明確な理念のもと、環境保全型農業に早期から取り組んでいる。畜産部門への粗飼料供給を重視し、粗飼料自給100%を確保することで飼料費高騰にも対応して安定的な経営基盤を確保している。今後の我が国畜産の重要な方向性を示すものとして高く評価できる。
<個別経営の部・大賞>
服部農園有限会社 代表取締役 服部忠 取締役 服部都史子(JA愛知北)
主要作目:水稲、大麦、野菜
【評価】
将来にわたり都市農業を維持するという明確な理念を持つ。都市化地域において全町水田面積の30%を借り入れて主食用米74ha、大麦47ha、野菜3.4haを栽培。木曽川左岸の沖積層で土壌条件こそ優れているが、名古屋市の通勤圏内にあり、工場、物流倉庫、住宅への転用が進んでいる。また高齢化や農業従事者の減少も著しく、用水路の維持管理もままならず、農業の継続が困難な環境にある。そうしたなかで地域の農業を守り、農地を守ることを使命とする水田経営である。
<個別経営の部・大賞>
ライスフィールド有限会社 取締役 吉岡雅裕(JAしまね)
主要作目:水稲、 WCS 、ソバ
【評価】
経営面積238ha、作業受託460ha。1日当たり124tの処理能力があるライスセンターや超大型レーザーレベラーなど最新鋭の機械を導入し、1日あたり15haの収穫を実現する大規模水田経営である。取締役を含め17名の常勤従業員を擁している。本地域は日照条件も良く、水田作の営農条件として恵まれる一方、宍道湖沿岸で地下水位が高く水田作を中心とせざるを得ないということや、高齢化が進行するなか、本経営体は、地域の農地・農業の守り手として大きな役割を果たしている。
<個別経営の部・特別賞>苅部博之(JA横浜)
主要作目:ブロッコリー、ダイコン、キャベツ、ジャガイモ、トマト他
【評価】
13代目農家として就農し、都市の立地を生かした家族型経営。2.5haの農地での農地で約100品目の品目の野菜、約10品目の果樹を栽培している。10年かけて作った最初のオリジナル野菜である苅部大根、伝統野菜をもとに全国の在来種と交配して作った赤紫と白のグラデーションが特徴の苅部ネギ、何種類もの色がある苅部人参など、オリジナル品種も開発。都市農業のひとつのモデルとして高く評価できる。
<個別経営の部・優秀賞>
根橋英夫(JA上伊那)
主要作目:酪農
<個別経営の部・優秀賞>
有限会社林農産 代表取締役 林幸治 (JAくろべ)
主要作目:水稲、大豆、白ねぎ
<個別経営の部・優秀賞>
有限会社河井かわいファーム肉よし 代表取締役河井金昭 (JA伊勢)
主要作目:養豚
<個別経営の部・優秀賞>
越智修二(JAおちいまばり)
主要作目:里芋、水稲、麦
<集団組織の部・大賞>
JAやさと有機栽培部会 部会長 岩瀬直孝(JAやさと)
主要作目:有機野菜
【評価】
消費者が有機農産物に関心が高いことをいち早く確信し、平成9年にに設立。国の有機農業推進策が進められる以前より、有機農業に先駆的に取り組んできた。部会員全員が有機JAS認証を個人で取得し、部会員それぞれが地域で生産された有機JAS法に適合した堆肥を確認利用するなど、資源循環の意識を持って取り組んでおり、平地の少ない管内の営農条件を生かした付加価値の高い有機農業を展開している。有機全国的には有機JAS認証を取得している農地の割合が0.3%にとどまる中、有機農業の旗振り役を果たしている部会の活動は高く評価できる。
<集団組織の部・大賞>
JA愛知みなみスイートピー出荷(JA愛知みなみ)
主要作目:スイートピー
【評価】
日本有数の花き園芸地帯である渥美半島に立地する、11戸からなるスイートピー部会。切り花延命剤STSの登場により九州等で大産地が形成され、バブル崩壊もあいまって、平均単価が1本50円から30円まで下落したが、平成7年に安価で大量に出回る一般向けの花から脱却し、贈答品や葬儀に使える高級花の市場を生み出すという新方針を打ち出すことで、20年近くかけて価格をV字回復させてきた。今では全国平均単価の字回復させてきた。今では全国平均単価の1.7倍の高さを誇っている。
<集団組織の部・大賞>
せとだエコレモングループ 会長 宮本悟郎(JA三原)
主要作目:レモン
【評価】
全国有数のレモン産地である瀬戸田で、特別栽培農産物「せとだエコレモン」を栽培する156名からなる部会。瀬戸田の温暖で風も少ない立地条件はレモン栽培に適しており、昭和38年には全国生産の75%を占める大産地であった。翌年のレモン輸入自由化や度重なる寒波に見舞われ、産地存続の危機にまで至ったものの、「一農家一畝運動」や消費者ニーズを追求し続けたことで、国産レモンの火を灯し続けた。
<集団組織の部・特別賞>
JAとぴあ浜松玉葱部会 部会長 田幡吉伸(JAとぴあ浜松)
主要作目:玉葱
【評価】
JAとぴあ浜松玉葱部会は649名の多数の生産者により構成され、1月出荷という全国に先駆けての新玉葱「名称:はるたま」産地である。水はけのよい土壌と恵まれた日照時間により、古くから玉葱栽培が盛んな地域であったが、都市化・高齢化の波にさらされ、ピーク時である平成元年の栽培面積時である平成元年の栽培面積571ha、出荷量2万t超から、平成21年には100ha余り、5000t程度にまで落ち込んだ。なおも部会員数は減少しているものの、農地を再生・集積して担い手に再配分。品質向上を心掛けてきた成果もあって単価は順調に上昇し、出荷額も17億円を達成。着実に産地の地位を回復しつつある。
<集団組織の部・優秀賞>
農事組合法人埼玉産直(センター 代表理事 山口一郎(構成員加入JAはJAふかや、JA埼玉ひびきの、JAくまがや、JA埼玉岡部、JA花園)
主要作目:ミニトマト、いちご、ブロッコリー
<集団組織の部・優秀賞>
八協柑橘共同選果部会 代表者 宇都宮宗昭(JAにしうわ)
主要作目:温州みかん、中晩柑類
<集団組織の部・優秀賞>
島原雲仙農協西部ミニトマト部会 部会長町田誉孝(JA島原雲仙)
主要作目:ミニトマト
<食の架け橋の部・大賞>
馬路村農業協同組合(高知県馬路村) 代表 北岡雄一
主要作物:ゆず、ゆず加工品
【評価】
1980年代に林業が衰退する中、活路を見いだすために始めた「ゆず」の加工品販売は、「ぽん酢しょうゆん酢しょうゆ ゆずの村」や「清涼飲料水ごっくん馬路村」が大ヒットし、馬路村は全国にその名が知られることとなった。それから40年近く経過するが、その後もゆず胡椒や、化粧品など様々な加工品を開発し、その数は60にも及ぶ。人口800人、森林率96%という山間地でありながら、「ゆず」というひとつの作物で市場を切り開き、長年にわたり事業を継続してきたりながら、驚きと賞賛に値する。
<食の架け橋の部・特別賞>
合同会社ねっか(福島県只見町) 代表 脇坂斉弘
主要作物:米と米焼酎
【評価】
人口約4000人、高齢化率約48%の只見町で、米どころとしての景観を守り、冬の雇用と地域の特産品を生み出すべく、6年前に始まった米焼酎づくり。酒蔵の醸造家だった代表の脇坂氏が、華やかな香りを生む酵母を選び出し、低温で発酵・蒸留することで、吟醸香豊かな焼酎を開発することに成功した。自社6haの田んぼ(J-GAP認証圃場)から質の高い米を調達できる強みも加え、短期間で独自性・将来性の高い事業に育て上げている。
<食の架け橋の部・特別賞>
株式会社日向屋(和歌山県田辺市) 代表 岡本和宜
主要作物:みかん、梅、ジビエ
【評価】
人口約人口約1500人の田辺市上芳養地区で、みかんや梅の加工を行う「日向屋」を中心に、若い人人たちが連携し、獣害対策や、急傾斜地の耕作放棄地の活用などに取り組む。地元のハンターや、修行を積みや、修行を積みUターンで帰ってきた料理人、大手企業から転職してきたIT技術者など、高い専門性を持つ若者が連携して様々な事業を展開。新しい地域のあり方を新しい地域のあり方を示す成果を上げ、注目される。
<食の架け橋の部・優秀賞>
半農半陶の里 波佐見 地域内循環プロジェクト(長崎県波佐見町) 代表 澤田健一
主要作物:水稲、じゃがいも、キャベツ
<食の架け橋の部・優秀賞>
株式会社グラノ24K(福岡県岡垣町) 代表 小役丸秀一
主要作物:アスパラガス、ぶどう
<食の架け橋の部・奨励賞>
前田農産食品株式会社(北海道本別町) 代表 前田茂雄
主要作物:小麦5品種、ビート、ポップコーン、緑肥など
<食の架け橋の部・奨励賞>
ねりまワインプロジェクト(東京都練馬区) 代表 越後屋美和
主要作物:ブドウ、ワイン
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