JAの役割発揮を 日本協同組合連携機構(JCA) 和泉真理客員研究員【JA全中新規就農支援実践セミナー講演】2023年2月9日
JA全中は1月26日、東京・大手町のJAビルで「新規就農支援実践セミナー」をオンライン併用で開いた。JAグループは、将来の食料・農業・農村を担う次世代組合員を確実に育成・確保していくことを目標に「次世代総点検運動」に取り組むことにしており、新規就農支援を重点事項の一つとしている。セミナーにはJA担当者ら約90人が参加し、実践報告などをもとに地域にあった新規就農支援を計画的に続ける必要性を確認した。講演と事例報告の概要をまとめた。
日本協同組合連携機構(JCA) 和泉真理客員研究員
農水省の統計によると49歳以下の農業者がいる販売農家は1割だが、そのうち1000万円以上の農家は45・2%と比率が高い。その意味ではJAが農産物を高価格で販売し所得を確保することが最大の後継者対策である。これを前提として新規就農者をどう支援するかを考えたい。
農外からの新規参入者は毎年2500人程度で推移している。今の親世代と時代背景は大きく変わっている。日本経済は停滞が長引き農業以外ももうかるわけではない。一方、農産物を作れば売れるという時代でもなくなったが、農業に対するイメージは変化し、農業をやってもいいと考える若者も出てきた。
同時に農村の姿も変わり、今や農業者は少数派になった。その農業も多様化し、何を作りどこに売るか、選択肢も増え、省力化技術やIT技術も出てきた。
農外からの若い新規参入者はもはや珍しい存在ではなくなっているが、地域にばらつきがあり、参入者の多い地域はさらに就農希望者を引きつけ増えている。ただ、就農5年目でも農業で生計が成り立っているのは半分以下という厳しい現実もある。
そのうえで新規就農時の課題を整理すると、農地の確保、施設園芸などの場合の資金の調達、技術の習得、の3点が最大の課題となる。このほか、機械や設備、住宅、さらに地域へどう溶け込むかも課題となる。
新規就農し地域で定着するまでに10年はかかるし、次の研修生を受け入れて地域に新規就農者が定着するにはさらに20年はかかる取り組みだ。定着するまでにさまざまな課題があることを考えると、地域に根差しさまざまな機能を持つJAは新規参入支援に最適な組織だと思う。
もちろんJAだけではなくさまざまな課題に対して関係機関の連携が必要で、JAの生産部会、都道府県、普及センター、農業大学校など教育機関、市町村、研修生受け入れ農家などと役割分担の仕組みを作ることが重要となる。
そのなかでJAだからできる支援として、多様で安定した販路の提供や生産部会を通じた技術指導、中古農機具の斡旋や副収入確保の機会の提供、青年組織を通じたネットワークづくりのほか、パッケージセンターや苗の供給など生産や販売に関わる負担軽減などがある。とくに新規就農希望者はJAの役割や機能を知らない。募集のときからJAが関わり、地域の新規就農支援をリードしていってほしい。
先行している地域はどこも将来の担い手に対する危機感が元になっている。具体的には地域の将来展望を現在の担い手へのアンケートなどで明らかにし、10年後の姿を農地マップに落とし込んで「見える化」するとともに、外からの就農希望者を受け入れようという地域の合意・体制づくりが急務だ。JAが合意形成を後押し、実践策を具体化することが求められている。
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