食料安保強化、適正な価格形成など柱 基本法見直しJAグループの考え方2023年2月15日
食料・農業・農村基本法の見直しに向けてJA全中は2月9日の理事会で「基本的考え方」をまとめた。今後、さらに組織で検討を続け5月に政策提案として組織決定する。
「基本的考え方」では▽食料安全保障の強化、▽再生産に配慮して適正な価格形成の実現と国民理解、▽多様な経営体の位置づけ、▽中山間地域など農村の活性化、▽JAなど関係団体の役割強化など6つの項目に整理している。
食料安保については、農産物や生産資材を「いくらでも海外から輸入できる時代は過去のもの」との認識のもと、現行基本法では規定していない「平時」を含む食料安全保障の強化を基本法の「目的」として明確に位置づける必要がある、としている。
また、わが国の輸入依存は「発展途上国への食料供給に影響を及ぼす可能性がある」として、改めて国内生産の増大を中心とすることを基本法で強調し、麦、大豆など輸入依存の大きい農産物を国産へ切り替え、安定供給する措置を講じることを明記する必要があるとしている。
生産資材については、現行基本法は輸入で安定確保する前提となっていることから、生産資材としての国内資源の有効活用、流通の円滑化、備蓄などの措置を講じることが必要、と提起している。
JAグループが強調している柱は「再生産に配慮された適正な価格形成の実現と国民理解の醸成・行動変容」である。
その観点から現行基本法第2条で食料について「合理的な価格で安定的に供給されなければならない」とされているが、この「合理的な価格」を「農業の再生産に配慮した適正な価格」とする必要がある、と提起した。
また、消費者の役割を規定した第12条では「食料の消費生活の向上」とのみ記述されているが、国産農畜産物を積極的に選ぶことによる「食料自給率の向上」に向けた「消費者の努力」を明記する必要がある、としている。
そのほか、学校教育のなかで農業をはじめ第1次産業の価値や役割について体系的に学び体験することを基本法に明確に位置づけるべきとの問題提起もしている。
農業構造については「中小・家族経営」など多様な経営体を基本法に位置づけ、その育成・確保を明記する必要があるとしている。現行基本法では「専ら農業を営む者」による農業構造をめざす方向を示しているが、「基本的考え方」では「人口減少と高齢化が深刻化するなかで、こうした経営体のみで生産の大宗を担いことができない状況になっている」と強調し、多様な経営体の位置づけが必要としている。同時に新規就農者、雇用就農者、農業サービス事業体の育成なども記載する必要があると指摘している。
「基本的考え方」では、「再生産に配慮した適正な価格」について基本法に明記することを提起すると同時に、経営安定対策として農産物の価格変動による影響緩和対策に加え、資材高騰など生産コストの変動についても影響緩和対策を講じることを明記する必要があるとしている。
また、今後、その実践の本格化が求められるみどり戦略など環境負荷軽減に向けた取り組みについては、「農業者・事業者・消費者」のそれぞれが促進する趣旨を基本法に明記する必要があるとの考えだ。
輸出については、わが国の生産基盤の維持・強化と食料安保の観点からその重要性が増しているとの認識をJAグループとして改めて打ち出し、基本法に輸出拡大とそのための措置を講じることを明記する必要があるとの考え方を示している。
農村の活性化では、日本型直接支払いの基本法への位置づけや、地域・環境保全の強化に向けた施策の拡充の必要性も指摘している。また、半農半X、都市からの移住推進など、農業関係人口の増大に向けた施策、農福連携推進も基本法に明記すべきとしている。
現行基本法では、農業関係団体について団体の再編のみしか書かれていないが、JAなど農業団体が食料・農業・農村振興に果たしている役割を明記し、関係団体や地方公共団体との連携強化と役割発揮のための施策を講じることが必要だとしている。
基本計画については「食料自給率」だけではなく、人・農地・技術などを要素とした「食料自給力」も含めて目標設定することが必要だとした。
2月9日の定例会見でJA全中の中家徹会長は「基本法の改正は国の農業政策について今後数十年にわたり方向づける極めて重要なもの」として、JAグループの考え方を政府・与党に積極的に働きかけていく考えを示した。
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