昆布を牛の飼料に 学生起業家3チームに優秀賞 アグラボのビジネスコンテスト 2023年2月28日
JAグループのオープンイノベーションの拠点、(一社)AgVenture Labは2月25日に社会課題の解決をめざす学生起業家をサポートする「学生ビジネスプランコンテスト JUМP VoL.2」の最終審査会を開き3チームを優秀賞に選んだ。
このコンテストは、農業をはじめとした第1次産業、食、地方創生、SDGsなどの分野で社会課題の解決につながるサービスを生み出すスタートアップを増やすため昨年から実施している。
第2回となる今回は76件が応募し、書類・面談審査を通過した9チームがプランを発表した。審査の結果、3チームが「優秀賞」(賞金総額100万円)に選ばれた。
チーム「地球化学研究室」は「鉱泉を活用した海の環境と漁獲量向上事業」を近畿大学の清水大河さんが発表した。
近畿大学の清水大河さん
魚の生育に必要な藻類を増やすために海に鉄分の供給が必要になるが、大阪湾に流れ込んでいる石仏鉱泉に鉄イオンが含まれていることに着目した。そのままでは鉄が酸化してしまうため、フルボ酸を鉱泉の湧出地点に加えることでフルボ酸鉄として海に届くことを利用して漁獲量を向上させる事業を考えた。
実験ではフルボ酸鉄を供給することで「3日後に小魚の餌となる植物プランクトンが増え始める」という。漁協とフルボ酸販売を契約するビジネスモデルに加え、藻類を増やすことによる大気中のCО2吸収効果も向上することから、カーボンクレジット事業も展開する。全国の鉱泉を利用すれば大阪湾以外にも取り組みを広げられるという。
フルボ酸の供給費用は15万円前後で全国945の漁協と契約すれば1億4000万円以上のビジネスに成長すると試算、また、削減できるCО2の量は約170億トンと見込む。
「日本の漁業を復活し、海と人々を豊かなにしたい」と話した。
チーム「e-Combu」は「もったいない昆布からつくる地球にやさしい飼料」を小樽商科大の大砂百恵さんが発表した。
小樽商科大の大砂百恵さん
国内のメタン排出量の27%は牛のげっぷで、メタンの温室効果はCО2の25倍といわれる。それを削減するために、同チームは北海道の浜に打ち寄せられる昆布から牛のメタン排出を削減できる飼料添加物を開発し提供するビジネスプランを進めている。
帯広畜産大の研究者や地元の昆布漁師と協力し実験を進め、メタンガスの抑制だけでなく疾病予防、肉質改善、生産率向上などに効果があることが分かってきた。畜産農家へこの飼料添加物を提供するのがビジネスモデルだがメタン削減量を企業が買うカーボンクレジットも構想しており、畜産生産者と企業が「炭素」でつながることも見込む。
4月からは北海道広尾町でハウスを借り実証を進め、メタン削減量などを確認する取り組みを進め、2024年に十勝管内への供給をめざす。
「漁業と農業をつなぐ循環型の事業で地産地消でもある。宇宙レベルの視点で地球の社会問題を解決する人になるのが目標」と意気込みを語った。
「(株)LacuS」は「シニア向け完全栄養食ブランド МE TIME」を開志専門職大学の古津瑛陸さんが発表した。
開志専門職大学の古津瑛陸さん
高齢で固形物が食べられないなどで低栄養状態となっている高齢者は推定約360万人だといわれるなか、古津さんは90歳を超えた曾祖母の食事を分析したところ、多くの栄養成分が厚労省基準を大きく下回っていることを知り、高齢者に特化した栄養食の開発にチームで取り組んだ。
第一弾として商品化したのがアイスクリーム。炭水化物のほかにも多くの栄養分を厚労省基準に沿って十分にバランスよく摂取できる食品として開発した。コアターゲットは食に課題を持つ後期高齢者。1個298円で介護者を抱える家族などへのオンライン販売や、介護福祉事業との提携などのビジネスモデルを考えている。アイスクリームを手始めに今後は、スナックやパンなども検討していく。めざすのは「高齢者×完全栄養食」領域のパイオニア。現在の高齢者食の市場は国内メーカー出荷金額ベースで1.5兆円。同社は3年目に売上高5億円をめざす。
古津さんは「新世代を牽引する覚悟を持ち、ウェルビーイング革命でそれぞれの幸せを描ける世界に」と夢を語った。
アグベンチャーラボの荻野理事長は、発表されたビジネスプランについて「誰のどんな課題を解決するかが明確になっている」としたほか、地球環境をはじめ、若い世代が将来を見据え高齢者の課題解決を考えるなどの「企業家マインド」を評価した。
その他の受賞結果は以下の通り
「JUMP賞」(JAアクセラレーター第5期2次選)○チャン5(神戸大学大学院)「ライブ直後に感動を共有し合えるメタバース上のオタク・コミュニティ事業」
○株式会社RelieFood(角川ドワンゴ学園S高等学校他)「アレルギーあるなしに関わらず安心・安全に暮らせる社会を ちょっぴりタマゴクッキー」
「オーディエンス賞」
○うぶごえfirst breath(東京農工大学大学院)「モバイルボトリングサービスによる蔵元支援と清酒の輸出促進」
「岡三証券グループ賞」○e-Combu(小樽商科大学他)「もったいない昆布からつくる地球にやさしい飼料」
「JA全農賞」
○e-Combu(小樽商科大学他)「もったいない昆布からつくる地球にやさしい飼料」
「農林中央金庫賞」
○LIFT(東北大学)「ロープ自走型輸送機を用いた効率的な動物の搬送」
「ニチレイ賞」
○株式会社LacuS(開志専門職大学)「シニア向け完全栄養食ブランド ME TIME」」
「オイシックス・ラ・大地・ラ・大地賞」
○株式会社RelieFood((角川ドワン角川ドワンゴ学園S高等学校他)「
アレルギーあるなしに関わらず安心・安全に暮らせる社会を ちょっぴりタマゴクッキー」
「あぐラボ賞」(セミファイナリスト進出者より今後のビジネス成長を期待するチームに授与)
○キイロタマホコリ(北海道大学)「遺伝子組換え大腸菌を用いた下水中のマイクロプラスチック回収」
○True to yourself(岡山大学)(岡山大学)「ぬいぐるみを用いたセルフコンパッションでHSPさんの生きづらさを緩和するサービス hugood(ハグッドハグッド)」
○DeciQuick(University of Debrecen)「もう飲食店選びがストレスとは言わせない!~「自分の食べたい」「友達の食べたい」「ポストコロナの飲食店」を繋ぐマッチングサービス~」
○株式会社HAGI(近畿大学)「ヒト・モノ・地域活性化を創出する 新しいフリーマーケットのカタチHAGI」
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