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【JA営農指導実践全国大会】担い手育成の最前線確認(1)2023年3月17日

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JA全中は2月16日、第7回JA営農指導実践全国大会を東京都内で開いた。全国8地区から代表として推薦された8人のJA営農指導員が事例を発表。審査の結果、最優秀賞には徳島県JAあわ市営農指導課の土井哲さんが選ばれた。この大会はとくに優れた産地振興や技術普及などに取り組んだ営農指導業務を担当する職員を表彰し、その取り組みを広く紹介、共有することによって、各JAでの営農指導員のレベル向上とネットワークの構築を図ることが目的だ。

3年ぶりの実会場開催で約120人が参加、オンライン中継では約180人が視聴した。

JAグループは令和3(2021)年の第29回JA全国大会で持続可能な食料・農業基盤の確立を柱に据え、その最先端の取り組みとして「次世代総点検運動」を位置づけた。
JA全中の中家徹会長は「地域の次世代の担い手を自ら確保、育成する取り組みは持続可能な農業を実現するための一丁目一番地の取り組み。その中心がJAの営農指導事業だ」と述べ、産地で日々の農業生産を支え次世代農業者の育成に最前線で活躍する営農指導員は「大変重要な役割。地域の組合員との結びつきを力に、成果を上げることが期待されている」と激励した。情勢報告と各事例発表の概要を改めて紹介する。

【情勢報告】
学ぶ姿勢で役割発揮を

JA全中常務理事 肱岡弘典氏JA全中常務理事 肱岡弘典氏

JAグループは第29回JA全国大会で「持続可能な農業の実現」「豊かで暮らしやすい地域共生社会の実現」「組合員と地域にとってなくてはならない存在であり続けていくための協同組合としての役割発揮」を次の10年に向け挑戦する「めざす姿」と決議した。

その実現に向け「多様な農業者による地域農業の振興」「マーケットインにもとづく販売強化」などJAグループが共通かつ優先して取り組むべき六つの重点実施分野を定めた。これらの大会決議を踏まえ、全中では「次世代総点検運動」「JA営農・経済部門職員の人材育成」などの取り組みを進めている。

次世代総点検運動は8割を超える県域で方針を策定し取り組みを進めているが、JA段階で次世代組合員数目標の設定は全体の1割強にとどまっており(2022年4月時点)さらなる取り組み強化が必要になっている。

人材育成では基礎となる営農指導員の上位資格として「地域営農マネージャー」や「JA農業経営コンサルタント」の認証制度を新たなに実施している。

資格取得に向けて一定期間、学習のために時間を割くことは本人の成長だけではなく、結果として農家組合員の営農に貢献しJAの業務拡大につながっていくと確信している。農家組合員との部会での勉強会、先進地の視察研修なども含めて「学ぶ」という業務姿勢を大切にしてほしい。

これまでの大会で表彰されたJA営農指導員は農家組合員から罵倒されるような苦い経験の一方、農家と一緒に喜ぶなど、まさに農家組合員に寄り添い、苦楽をともにした経験を積み重ねている。その経験をもとに自分は農家組合員から信頼されているという揺るぎない自信に満ちあふれ、地域農業の未来を担うJA職員であること、協同組合運動者であることに対する強い誇りを感じた。

現在は生産資材価格の高止まりで農家組合員からの悲鳴、不満が耐えないと思うが、厳しい時代だからこそ今後も組合員に寄り添いしっかり支えてほしい。

【最優秀賞】
「統一」戦略 信頼アップ

JAあわ市(徳島県)土井哲氏JAあわ市(徳島県)土井哲氏

徳島県のJAあわ市は令和3(2021)年4月に3JAが合併して発足。合併を機に「西日本随一の夏秋ナス産地」に育てることを目標にした。生産者の意欲が上がるような新しい取り組みをめざし、「苗供給」「規格・資材」「肥料」「部会」の四つの統一への挑戦を決めた。

苗の供給は旧JA単位で受け渡し方法もバラバラで、無料配達もあれば有料もあり、また引き取りを原則とした地域もあった。協議の結果、苗は引き取りを基本とし配達の場合は料金を徴収することにした一方、営農指導員が配達業務に充てていた時間が個々の部会員に対する指導の時間にかわった。

有利販売のためには出荷規格と資材の統一は必須条件だが、出荷箱など数ミリの違いでしかなくても昔ながらのやり方からの規格統一には反発を受けた。それでも旧JAそれぞれの良いところを採用した規格を丁寧に説明するうちに反発の声も小さくなっていき、令和4年度から資材の完全統一を実現した。年度中にシステム統合も行い、部会員はどの集荷場にも出荷できる体制となる。

肥料の統一には系統肥料メーカーと、生産者、現場の営農指導員の意見を取り入れた、県の施肥基準にとらわれない「低コスト・省力化茄子肥料」を開発した。施肥量が減ることへの部会員の不安、JAからは購買部門の売り上げ減の懸念の声があったが、「目先の利益より未来の産地を見据えるべきだ」と合意形成を図り実証試験で有効性を確認、現在は9割の部会員が導入している。

部会の統一には「統一すれば高く売れるのか」「〇〇地域は品質が悪い」などの意見が出るなか20回以上の説明会に200人以上が参加し、1年かけ令和4年5月にJAあわ市夏秋茄子(なす)部会が発足した。部会員282人、総作付面積20㌶。県内の6割を占める産地になった。

規格・資材の統一で箱当たり20円減、肥料では7割減を実現し、県内随一の産地として市場からの信頼もアップした。営農指導はJAの根幹。今後もわれわれが屋台骨、との強い気持ちで取り組みたい。

担い手育成の最前線確認(2) へ続く

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