国産穀物の増産 国内資源活用で自給率向上へ JA全農 23年度事業計画2023年3月28日
JA全農は3月28日に書面による臨時総代会を開き2023(令和5)年度の事業計画を承認した。ロシアによるウクライナ侵攻やパンデミックなどによって食料安全保障への国民の関心が高まる一方、生産資材価格も高騰しており、23年度の事業ではたい肥や子実トウモロコシなど国内資源の活用や、輸入依存度の高い穀物の計画的な増産で食料自給率の向上に取り組む。また、生産コストを反映した適正な販売価格への形成に向けた国民理解の醸成にも力を入れる。
23年度事業計画は昨年策定した中期計画の2年目となる。ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染症など「想定を超え長期化する変化を捉えて策定した」(JA全農・安田専務)として、食料安全保障や持続可能な農業への取り組みを事業計画に反映させた。また、資源価格の高騰が農家を直撃するなか、生産コストを反映した適正な販売価格の形成に向け新聞広告や取引先への要請などにも力を入れるほか、ECサイトなどを活用した適正な価格実現にも取り組む。
全体戦略は以下の6つを柱としている。
【生産振興】
国産化成肥料の銘柄集約や共同購入の取り組みで生産コスト低減を図るとともに、営農管理システム「Z-GIS」や営農栽培支援システム「ザルビオフィールドマネージャー」などデジタル技術の普及・活用で生産性向上を図る。
たい肥や子実トウモロコシなど国内資源の活用と、麦・大豆・飼料作物など輸入依存度の高い穀物を生産者・産地へ作付け提案し計画的な増産を通じて食料自給率の向上に取り組む。子実トウモロコシの栽培実証は5県で行う。
また、国内の研究機関と連携し多収性、加工適性、耐病性を持つ米・麦などの品種開発や普及に向けた栽培マニュアルの作成も進める。
【食農バリューチェーンの構築】
JA域や県域を超えた共同配送体制の構築と卸売市場と連携した効率的な輸送体制の整備、冷凍野菜など消費者ニーズに対応した食品流通施設への積極的な投資を行う。
実需者に向けた適正な価格形成や消費拡大の働きかけや、JAタウン、全農グループの直営飲食店舗などを通じ、国産農畜産物の価値向上による適正な価格の実現に取り組む。
【海外事業展開】
肥料・飼料原料の安定確保が大きな課題となるなか、50年以上かけて築いてきた海外ネットワークや全農グループの海外インフラを最大限活用し、必要量を安定調達する。
輸出では、香港で日本産鶏卵の現地加工施設が3月から稼働しているほか、海外市場ニーズをふまえた商品開発や、産地と連携した輸出用米の安定確保、JAと連携した青果物の産地リレー品目の拡大などに取り組む。
また、クリームやアイスなど国産乳製品のアジアへの輸出拡大にも取り組む。
そのほか国内の育成者権の保有者と連携した新品種の海外流出の防止と、国内研究機関による「育成者権管理機関」の設立、運営へ参画する。
【地域共生・地域活性化】
地元の農産物を提供するファーマーズ型Aコープ店舗の出店拡大や直売所の運営支援など、生産者が意欲的に農業に取り組める環境づくりを行う。
太陽光発電や蓄電池普及など地域で使うエネルギーを地域でつくる環境整備に取り組むとともに、過疎地域のライフライン維持に向け、生活物資の宅配、簡易型SSの設置などにも取り組む。
【環境問題など社会的課題への対応】
畜産現場で発生するたい肥とたい肥入り混合肥料の開発と広域流通で耕畜連携事業を耕畜する。脱炭素化に向け、水田での秋耕や牛から排出されるメタンの削減など技術の開発・検討を国が主導する事業へ参画し取り組む。
秋耕の普及拡大は、23年度に全JAでの栽培暦への記載を目標とする。環境調和型農業に関する技術・資材を体系化した「グリーンメニュー」に基づく提案も行う。
【JAグループ・全農グループの最適な事業体制の構築】
集荷・販売や資材物流業務などでのJAとの機能分担の見直しやJAとの広域接点整備など共同事業による事業拡大、全農グループ会社の事業再編や人材活用などを進める。
また、JAグループが持つ情報をデジタル技術を活用して農家・組合員のサービス向上に役立てる取り組みにも着手する。
【経営計画】
経営計画は、直近の肥料・飼料原料の相場をふまえ取扱い高は4兆8200億円を計画。4年度計画比で105%、3年度実績比で108%となる。
畜産事業は4年度計画比で118%、営農・生産資材事業は同110%と原料高騰を反映した。米穀事業は米の取扱いを拡大し同106%とした。園芸事業は価格が上昇した4年度と比べると97%だが、3年度実績と比べると107%としている。
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