自主・自立の事業を 農協のあり方探る JCA公開研究会2023年4月19日
農業協同組合の事業はどうあるべきかー。協同組合連携機構(JCA)は4月15日、総合農協の事業の今日における有効性についての公開研究会を開いた。組合員の多様化、事業の多角化・広域化など農協をめぐる環境が大きく変化する中で、協同組合の伝統的な性格付けの出資・利用・運営の三位一体性、非営利・非公益性を、現代的に再定義する必要があるのではないか、との認識でディスカッションした。オンラインを含め、協同組合分野の学者や指揮者、JAの関係者など約90人が参加した。
報告者によるディスカッション
ネットワーク型組織へ
協同組合は株式会社などの営利セクター比べ、所有・利用・運営といった〝三位一体性〟が事業の優位性になっている。その効果は「協同組合間の事業を通じた連携が必要だが、その仕組みと効果など、営利セクター(株式会社など)に対する優位性が十分解明されていないのではないか」と、座長を務めた小山良太・福島大学食農学類教授は問題提起した。
また、「多様な協同組合組織、非営利協同セクターが生まれる中で、農協の新たな位置づけが求められている」という。特に今日直面している多様な組合員を前提としたメンバーシップ制の限界性を指摘し、「それを前提とした少人数・多組織化するネットワーク型の組織基盤が必要になるのではないか」と農協組織のあり方を問うた。
板橋衛・北海道大学大学院教授は、北海道の組合員勘定(クミカン=組合員勘定)と愛媛間の青果専門農協の歴史を紹介するなかで、農協事業への組合員参加について報告。北海道の農協の営農指導事業は経営指導の割合が高いこと、愛媛の専門農協は地区単位の出荷組合を起源とするため、自主自立(独立採算)の運営体制が確立していたことなどを指摘。現在は総合農協に合併しているが「自主自立の運営としての共選か農協(総合農協)の施設(選果場)の一つか」と問題を投げかけた。
令和は「地富論」の時代
玉真之介・帝京大学教授は総合農協の歴史を振り返り、「『制度に根差した農協』としての日本型農協が、その役割を果たすべきだ」と指摘。同教授は戦後の総合農協の底流にイエとムラを基盤とした「集落」をみる。
制度としての農協は戦前の「農会」から引き継いだものだが、それを令和の時代は見直されているとみる。グローバル時代の平成が終わり、「令和は円安・インフレ、製造業の国内回帰、地方への人の移動など『地富論』の時代」と位置付ける。その時代を切り開く主体として、「イエとムラ」という制度に根差した日本型総合農協の役割があるのではないかというわけだ。
また、協同組合は、目的達成のために組合員の活動があっての事業である。北川太一・摂南大学農学部教授は、そこに一般的にいうビジネスモデルとの違いをみる。農協の事業は広域化しているが、ムラ構造は生きており、「協同組合的な社会制度をつくっていくべきだろう」と指摘した。JA兵庫中央会の小寺収常務も、自治村落の変化を踏まえ、「自主自立が担保される『制度』構築の可能性を探るべきだ」と問題提起した.
協同組合の事業は目的ではなく、組合員の共通する目的を実現するための手段である。菅野孝志・JA全中副会長は「そのために結びついた自治的な組織であり、自発・自立・自治は活力と発展性を保持する」ものだと、自主・自立に基づいた事業展開の必要性を強調した。
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