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【農業協同組合研究会 報告】消費者負担型農政は限界 安藤東大大学院教授の報告2023年4月28日

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農業協同組合研究会は4月22日東京都内で2023年度研究大会「JA・農業者は食料安保確立をめざす基本法見直しにどう向き合うべきか」を開き、JA、生産者と研究者が問題提起、どう基本法を見直すべきかを議論した。オンラインを含めて80名が参加した。安藤光義東大大学院教授の報告を紹介する。

安藤光義 東大大学院教授安藤光義 東大大学院教授

食料政策として「合理的な価格」は消費者はもちろん、生産者にとっても不可欠だ。ただ、コロナ禍による消費減退と販売価格の低下、一方ではロシアのウクライナ侵攻にともなう資材価格高騰という打撃を受け、農業者の再生産を保証する価格形成をどう実現するかが大きな課題となっている。

消費者、生産者双方にとって合理的な価格形成のための施策はなく、政府がフランスのエガリムⅡ法を検討しているのはそのためだが、多くの生産者の生産コストに関するデータをどう集めるか、価格交渉の仕組みをどう設定するか課題は多く残されている。

ただし、農業者の経営を維持できる再生産価格の実現は必然的に食料品価格の上昇をもたらす。国内の所得格差が進むなかでの食料品価格の値上げは低所得層には極めて厳しく、その実現可能性と影響については慎重に検討する必要がある。

消費者負担型農政には限界があり、適切な所得再分配政策こそ必要だ。貧困層を取り残さない食料政策を実現するためには、法人税の課税強化、金融資産課税の実施など農政を超える課題にも目を向ける必要がある。

また、国内農業の生産増大は食料自給率の向上を実現すると考えられるが自給率は上昇しなかった。その最大の要因は飼料の輸入だ。現在の食生活を支えるためには輸入は不可欠だが、飼料の国内生産には財政支出が伴い国の覚悟が問われる。子実用トウモロコシや飼料米などの増産には財政支出が必要だが、予算の上積みがなければ農業者は踏み出せない。

農業政策の論点は、農地集積ではなく担い手の育成・確保である。人・農地プランが地域計画として法定化される一連の農地制度改正で、効率的かつ安定的な農業経営のほかに「農業を担う者」が加えられたことと、地域での話し合いで策定される地域計画は農地の自主的管理の復活として高く評価できる。

ただ、課題は「生きた地域計画」となるかどうか。見直しが絶えず行われる運動となるかが問われる。

また、「農業を担う者」に対する具体的なメリットは用意されていない。農山漁村活性化法が改正され、担い手がいないからと林地化を選択することもできるが、そこを突破するには農業者を支え、農地を守る直接支払い制度が不可欠だが、一言も議論されていない。

同様にみどり戦略でも、みどりの食料システム法で「消費者の責務」を定め、環境負荷軽減にともなうコストアップについては受け入れをお願いする消費者負担型農政となっている。みどり戦略の目標を達成するには最低でも掛かり増し経費や減収分に対する補償支払いの実施がないと思うような実績は上がらないのではないか。掛け声だけでは動かない。

農業者への支援措置は税制と融資にとどまっており、環境支払いの拡充とその先に展望される直接支払いの実施は今後の検討課題となった。

農村政策の論点は地域資源管理政策に偏っていることだ。日本型直接支払い政策も農地を守ること、水路を守ることに対して支払われており、農村振興のためではない。多面的機能を強調し集落を活用して農地保全を図るという政策は続ける必要はあるが、集落の弱体化は如何ともしがたい。

こうしたなかで「農業の持続的な発展」という経路以外で多面的機能の維持、増進をする「多面的機能自体に着目した政策構築」が求められている。これは環境政策へと政策領域を広げることを意味する。

一方で保全が難しくなった農地を粗放的な管理や林地化したからといって地域が抱える課題が解決するわけではない。鳥獣害問題への対応という点からも包括的な農村地域の土地利用の確立が求められている。

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