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基本法見直しと食料・農業・地域政策推進に向けたJAグループの政策提案【全文掲載】2023年5月12日

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JAグループは5月12日、食料・農業・農村基本法の見直しと食料・農業・地域政策の推進に向けた政策提案を公表した。
全文を掲載する。

食料・農業・農村基本法の見直しおよび令和5年度食料・農業・地域政策の推進に向けたJAグループの政策提案

昨年からの世界情勢の不安定化や気候変動、人口増加などにより、穀物や肥料・飼料原料などを過度に輸入に依存しているわが国の食料安定供給リスクが顕在化し、食料安全保障の強化が国家をあげた課題として、施策の強化と再構築が求められている。

また、わが国農業をめぐっては、生産資材価格の高止まりが農業経営に大きな影響を及ぼす一方、国産農畜産物への価格転嫁はすすまず、生産基盤の弱体化に拍車をかける危機的な状況が続いている。

政府・与党がすすめる食料・農業・農村基本法(以下、基本法)の見直しにおいては、基本法制定時からの情勢変化をふまえつつ、万全な食料・農業・農村政策の確立に向けた検討・具体化が必要であり、あわせて、基本法の見直しに即した基本計画策定および関連法案・制度の見直し、施策の拡充が求められている。

ついては、農業所得の増大、農業経営の安定をはかるとともに、国内農業生産を増大することを基本に、生産者・事業者・消費者、国・地方公共団体が一体となって食料安全保障の強化がはかられるよう、下記の事項を実現する必要がある。

Ⅰ.食料・農業・農村基本法の見直し

1.食料安全保障の強化

(1)食料安全保障の位置づけ・関連施策の強化・再構築
①基本法では、不測時の食料安全保障のみが規定されているが、農畜産物や生産資材をいくらでも海外から輸入できる時代は過去のものとなるなど、わが国を取り巻く環境が基本法制定時から大きく変化している。
このため、わが国における食料安全保障の定義を明らかにしたうえで、「平時」を含む「食料安全保障の強化」を基本法の目的として明確に位置づけるとともに、食料自給力を含め、わが国の食料安全保障の状況を適切かつ定期的に評価する仕組みの構築や政府全体で対応しうる体制を整備するなど、国家をあげた課題として、関連法案・制度の見直しを含め施策の強化・再構築をはかること。

(2)国内生産の増大を基本とした方向の明確化
①食料の安定供給の確保に向け、「国内の農業生産の増大を図ることを基本」としながら、基本法制定以降、輸入が増大し、生産基盤は弱体化している。国民が必要とする食料を安定して供給する必要性が増すなかで、輸入農畜産物に依存し続けることは、世界の人口が増加し、自然災害が多発するなか、発展途上国への食料供給に影響を及ぼす可能性があることをふまえ、改めて国内生産の増大を中心に取り組むことを基本法において強調し、自給率・自給力の向上および生産基盤の強化に向けた施策を講じること。
②また、輸入依存度の高い穀物(小麦・大豆・飼料作物など)および輸入代替が期待できる農産物(米粉など)の増産のほか、国産への切替・安定供給に向けた措置を講じることを基本法に明記すること。加えて、食料の安定供給の観点から、主食である米は現行備蓄水準を堅持するとともに、他の穀物の食料備蓄を強化すること。

(3)生産資材の確保・安定供給
①基本法は、輸入で生産資材を安定確保する前提になっており、「生産・流通の合理化」といったコスト減の視点のみとなっているが、輸入依存できなくなった情勢変化のなか、「国内の農業生産の増大を図ることを基本」とする観点から、飼料、肥料、燃油、種子・種苗、機械・部品など生産に必要な資材の確保・安定供給、生産性・品質の向上をはかること。
②生産資材の安定供給の確保の措置として、国内資源の有効活用・流通の円滑化、調達の多様化、備蓄などの措置を講じること。

(4)新たな食料支援策の構築と円滑な食品アクセスの確保
①わが国における経済格差が拡大し、貧困世帯が増加するなか、すべての消費者に国産農畜産物をはじめとする十分な食料の供給が行われるよう、フードバンクや子ども食堂等への支援の強化および新たな食料支援策を講じること。
②平時からの食料安定供給、地域農業への理解醸成をはかる観点から、学校給食や公共調達の国産化など、国・地方公共団体が一体となって、国産農畜産物の消費拡大を促進すること。
③郊外・地方等から流通業・小売業が撤退するなど、平時でも食品アクセスが困難な事態が顕在化するなか、移動購買車への支援など、円滑な食品確保に向けた必要な施策を講じること。

2.再生産に配慮した適正な価格形成の実現と国民理解の醸成・行動変容

(1)再生産に配慮した適正な価格形成の実現
①持続可能な農業の実現に向け、基本法第2条の「合理的な価格」については、適正な価格形成の実現を意識した「農業の再生産に配慮した適正な価格」とすること。
②「食料の供給」に加え、フードバリューチェーンを通じて行う生産・流通コスト等をふまえた適正な価格の転嫁、環境負荷軽減の取り組み強化など、食料安全保障上の事業者の責務を基本法に明記すること。
③「消費者の需要に即した農業生産の推進」に加え、食料安全保障の観点から、海外の取り組みを参考に、再生産に配慮した適正な価格形成の仕組みについて、早急に具体化をはかること。

(2)国民理解の醸成・行動変容に向けた施策の拡充
①食料安全保障上、消費者の役割が大きいなか、現行法には「消費生活の向上」のみとなっていることから、食料安全保障強化の観点から、国産農畜産物を積極的に選ぶことによる「食料自給率の向上」に向けた消費者の努力を基本法に明記すること。
②国民に対する「情報提供(表示を含む)」、「教育の振興」などを通じて、適正な価格形成に向けた理解醸成および国産農畜産物の消費拡大に向けた行動変容を促すこと。
③国民のくらしに不可欠な食料とそれを生産する農業など第1次産業が果たす価値・役割について、小・中・高校および大学の各段階での学校教育等の中に、体系的に継続して学び、体験する施策を講じること。

3.農業の持続的な発展に関する施策

(1)多様な経営体の位置づけ・役割
①人口減少・高齢化が深刻化するなかで、認定農業者などの担い手のみで生産の大宗を担うことができない状況となっているとともに、生産基盤と一体の地域経済・社会の維持も困難となっている。こうした状況をふまえ、農地の受け皿となる経営体を育成するとともに、地域計画に位置付けられた「中小・家族経営」などの多様な経営体を基本法に位置付けること。また、その育成・確保に向けた施策を講じること。
②新規就農者や雇用就業者などの育成・研修、事業承継、農作業受託組織など農業サービス事業体の育成・促進をはかること。

(2)農地の適正利用・集約化
①荒廃農地の増大等がすすむなか、わが国の重要な財産である農地について、農地の持続性をもった最大限の活用をはかるため、不適切な取得・利用の排除、優良農地の転用規制の強化、耕作放棄地の発生防止など、国が責任をもって優良農地を確保・活用する旨基本法に明記するとともに、農地関連法で地域と調和した農地の適正利用を強化すること。

(3)農業者の経営安定対策の強化
①世界情勢の不安定化等により、資材価格の高騰による農業経営の悪化が問題となるなか、食料の安定供給に必要な農業者の経営安定をはかるためにも、経営安定対策について、農産物の価格変動の影響緩和対策に加え、資材高騰など生産コストの変動に対しても経営の影響緩和をはかる対策を講じる旨基本法に明記すること。

(4)みどりの食料システム戦略など環境負荷軽減に向けた取り組み強化
①農業にも深刻な影響を与えている地球温暖化を防ぎつつ、農業の持続的発展をはかることが必要となっているなか、みどりの食料システム戦略をふまえ、農業者・事業者・消費者それぞれにおいて、環境負荷軽減に向けた取り組みを促進する旨基本法に明記すること。
②みどりの食料システム戦略の実現に向け、必要な研究・技術開発を促進するとともに、国内資源、未利用資源の最大限の活用に向けた措置を講じること。

(5)DX化・スマート農業、物流の効率化等の推進
①人口減少のなかで担い手不足が課題となるなか、省力化・生産性向上が期待されるDX化、スマート農業などの技術開発・実装の推進に向けた施策を講じる旨基本法に明記すること。
②流通に関して、食料の安定供給を支える物流の強化・効率化に向けた施策を講じること。

(6)生産基盤の強化のための輸出拡大、知的財産の保護・活用
①わが国の人口減少がすすむなか、世界的には人口が増加し、わが国農業の生産基盤の維持・強化および食料安全保障の観点からも輸出の重要性が増しているが、基本法にはそうした観点がないことから、生産基盤の維持・強化および農業所得向上のための輸出拡大を基本法に明確に位置づけ、輸出拡大に向けた施策を講じること。
②公的研究機関の充実等を通じ、生産性向上や高付加価値化に寄与する品種開発・改良およびこれら知的財産の保護・活用をすすめる旨基本法に明記すること。

(7)防災・減災に向けた取り組み強化
①自然災害が多発・激甚化するなかで、災害による損失に対する補てんに加え、災害からの復旧支援、防災・減災に向けた施策を講じる旨基本法に明記し、必要な施策を講じること。また、農業生産の基盤の整備に加え、農地・水路等の保全についても必要な施策を講じる旨基本法に明記すること。

(8)家畜伝染病、病害虫への対応強化
①鳥インフルエンザや豚熱、サツマイモ基腐病をはじめとする病害虫等の発生が、生産基盤や食料の安定供給に大きな影響を及ぼすなか、家畜伝染病や病害虫への対応を強化する旨基本法に明記するとともに、動植物検疫等の強化や家畜疾病等の蔓延防止に向けた必要な施策を講じること。

4.農村の活性化、都市農業の振興

①中山間地域・離島等における農業の振興、多面的機能の発揮、環境保全型農業の推進に向けた施策として、日本型直接支払いを基本法に明確に位置づけるとともに、地域・環境保全の強化に向けた直接支払い等の施策を拡充すること。
②農村の活性化に向け、農村RMOの推進や半農半X、農泊、都市からの移住推進等の施策などを含め、農業関係人口の増大に向けた施策を講じること。
③深刻な影響を与えている鳥獣被害対策とその体制整備およびジビエの利活用拡大に取り組む旨基本法に明記するとともに、必要な施策を講じること。
④都市農業については、平成27年に制定された都市農業振興基本法をふまえ、単に需要に即した農業生産のみならず、「都市住民の農業に対する理解の醸成」を含む「多様な機能」を果たすための施策を講じる旨基本法に明記すること。
⑤障害者、高齢者の農業での活躍、農村活性化に向け、農福連携を推進する旨基本法に明記すること。

5.JAなど関係団体の役割強化

①基本法では、団体の再編整備のみ記載されているが、JAなど農業団体が食料・農業・農村振興に果たしている役割を基本法に明記するとともに、食料・農業・農村に関する関係団体・地方公共団体との連携強化、その役割発揮に必要な施策を講じること。

Ⅱ.食料・農業・地域政策の確立

1.食料安全保障の強化

(1)食料安全保障にかかる基本政策の確立
①基本法の見直しを見据え、食料安定供給に不可欠な人・農地・生産資材等の安定確保や技術開発・実装の促進による生産基盤の強化・生産性向上等により、食料安全保障の強化と食料自給率・自給力の着実な向上に必要となる基本政策を確立すること。
②また、その実現に向け、食料安全保障関連予算をはじめとする農林水産関係予算を確保すること。

(2)生産資材の安定供給体制の確立および生産資材高騰対策の措置
①生産資材価格の高止まりや供給の不安定化をふまえ、肥料・燃料・飼料等の生産資材の安定供給の確保や輸入依存からの脱却に向け、国内資源の有効活用のための体制整備や取り組みの後押し、省資源化・効率的利用にかかる技術開発等を強力に推進するとともに、備蓄も組み合わせた万全な安定供給体制を確立すること。
②肥料価格の急騰時においても、農業経営の安定がはかられるよう、事務負担の軽減に配慮しつつ、肥料価格の変動の影響を緩和する仕組みを構築すること。あわせて、当面、肥料価格の高止まりをふまえ、肥料コストの低減に向けた対策を講じること。
③飼料の高騰・高止まりにかかる対策については、新たな特例が措置された配合飼料価格安定制度を安定的に運用するとともに、飼料価格や畜産・酪農経営の動向等もふまえ、生産者負担が急増する場合には、十分な影響緩和策を機動的に講じること。

(3)輸入依存穀物の増産・米粉等利活用の強力な推進
①食料安全保障の観点から、食料自給率の向上を意識した輸入依存度の高い穀物(小麦・大豆・飼料作物など)の増産・利用拡大がすすむよう、生産・流通にかかる支援を拡充すること。
②小麦代替としての米粉用米の生産拡大に向けた支援や、需要拡大・機械導入・サプライチェーンの強化等にかかる支援を拡充すること。
③高騰する海外飼料原料への対応として、国産飼料の増産や流通・利用拡大に向け、畑地化により飼料作物の生産性を高めていく生産者に対する継続性のある抜本的な支援の拡充や、耕畜連携を全国的に推進・拡大するために必要な対策を継続して措置すること。

2.国民理解の醸成および適正な価格形成の実現

①食料の安定供給にかかるリスクの拡大を含む食料安全保障の重要性や環境負荷軽減等生産現場での取り組み、農業・農村の持つ多面的機能等について、国民理解の醸成に向けた取り組みを早急に展開・強化するとともに、国産農畜産物の選択など消費者・事業者の行動変容の促進に向けた対策を講じること。
②国民理解の醸成をすすめるため、表示など消費者等への情報提供や小・中・高校および大学の各段階における食農教育を促進するとともに、学校給食や公共調達では国・地方公共団体における国産農畜産物の積極的利用を推進すること。
③農業生産の持続性を高め、食料安定供給を確保するため、生産・流通コストの変動等も含め、再生産に配慮した適正な価格形成の実現に向けた新たな仕組みの創設を見据え、海外の事例を参考に調査および実証事業を行うこと。
④全ての国民が栄養ある十分な食生活を享受できるよう、フードバンクやこども食堂等への支援の強化をはかるとともに、他省庁とも連携し、新たな食料支援策を検討すること。

3.国内農業生産の増大に向けた生産基盤強化対策の抜本的拡充

(1)地域の話し合いの活性化と多様な経営体の育成・確保
①地域の関係者が一体となった話し合いを着実に実施するため、地域計画目標地図を含む地域の将来の農業のあり方等に関する計画の策定に対する十分な支援を講じること。
②地域計画に位置付けられた多様な経営体(中小・家族経営などを含む)に対する支援や機械の共同利用等に対する支援を拡充するとともに、親元就農を含む新規就農者の確保や集落営農の活性化、労働力の産地内での確保に対する継続的な支援を講じること。
③技能実習生制度および特定技能制度の在り方について、最大限人権に配慮されるとともに、両制度の趣旨を前提に外国人材が求めるキャリアアップをはかりながら農業労働力の確保に資する制度体系とすること。

(2)共同利用施設の整備・更新等にかかる支援の拡充
①多くの産地で産地基盤の脆弱化や出荷量の減少がすすむなか、食料安全保障の強化を生産現場に実装するため、強い農業づくり総合支援交付金や産地生産基盤パワーアップ事業等にかかる予算を増額するとともに、共同利用施設の整備・更新等にかかる支援を拡充すること。

(3)農地の維持、集積・集約化、適正利用の推進
①地域と調和した農地の適正利用・最大限の活用に向け、地域計画の早期策定・実現のため、地域の関係機関の十分な連携のもと、農地バンクの体制・取り組みを強化するとともに、農地の集積・集約化の加速化等の推進に向けた支援を拡充すること。
②わが国の重要な財産であり、食料生産の要となる農地を確保するため、国の責務規定を法律上位置づけるとともに、市町村ごとの農地目標面積の設定や農地の転用規制の強化など、農地確保・適正利用の推進に向けた施策を講じること。営農型太陽光発電等の再エネ設備の導入については、地域との調和や下部農地の営農に支障がないことを前提とすること。
③農業・農村の持つ多面的機能の維持・発揮、環境調和型農業の推進に向け、日本型直接支払を拡充すること。また、多様な機能を有する都市農業の振興に向けた万全な支援を講じるとともに、地方圏における生産緑地制度の導入を推進すること。

4.将来を見据えた活力ある産地づくりの推進

(1)みどりの食料システム戦略もふまえた環境調和型農業等の推進
①品目・地帯別の先行事例の横展開も含め、地域実態に応じた環境負荷軽減の取り組みを引き続き推進するとともに、必要な機械・設備等の導入に向けた支援や環境保全型農業直接支払交付金を拡充すること。
②資源循環や土づくり、化学肥料の削減等を強力に推進するため、耕種農家の堆肥利用の促進や堆肥等の広域的な地域資源の循環に対する支援を継続・拡充すること。
③環境負荷の軽減に資する革新的な技術・生産体系・品種の開発・普及および低コスト化を推進するとともに、関連事業者の事業転換・再構築に向けた支援を講じること。
④みどりの食料システム戦略の実現に向け、生産現場の取り組みの起点となる流通事業者・消費者等の行動変容に繋がる国民運動を強化するとともに、消費者選択に資するよう、生産現場の取り組みの適切な見える化等をすすめること。また、環境に配慮して生産された農畜産物の公共施設等での積極的な活用をはかること。

(2)デジタル等新技術も活用した地方の活性化
①省力化等に資するスマート農業の社会実装を加速するとともに、スマート農機等の低コスト化やデータ有効活用、更なる技術の開発等に向けて継続的な支援を講じること。
②デジタル技術の活用を前提とした生産性の高い農業の実現に向け、農業分野におけるデジタル人材の育成や情報通信基盤の整備、行政手続きの簡素化、関係機関でのデータ共有等に向けた農業DXのための環境整備を加速すること。
③農的関係人口の創出・拡大や、地域内経済循環の確立を含む地方回帰・活性化の促進に向け、農村RMOの育成および農山漁村発イノベーションの推進に向けて継続的な支援を講じること。
④食料安全保障強化、みどりの食料システム戦略の達成、農業所得向上に向け、日本の風土や実需者のニーズに合わせた品種の研究開発に対する支援を講じること。

(3)生産基盤の維持・強化にむけた輸出拡大対策
①生産基盤の維持・強化および農業所得の向上に向け、輸出先国の規制緩和に向けた対応を加速するとともに、輸出産地や輸出先国での体制整備や、品目団体によるプロモーション、知的財産保護への支援を講じること。あわせて、米国向け牛肉輸出の促進に向け、十分な低関税枠を確保すること。

5.品目別対策等

(1)水田・畑作農業対策
①水田・畑作経営の安定や需要のある畑作物等の生産拡大に向け、飼料用米等も含めた作付転換にかかる必要な予算を恒久的に確保すること。
②中山間地対策も含め、営農継続や農地保全に配慮した交付対象水田の整理や、流通を含めた地域実態をふまえた飼料用米専用(多収)品種化への対応をすすめること。
③食料安全保障を強化する観点から、備蓄米の現行水準を堅持するとともに、不安定な海外穀物状況をふまえ国産利用の拡大に寄与するべく、麦・大豆等の豊凶に左右されない安定した供給体制についても検討・措置すること。
④予期せぬ需要減や豊作への対応にかかる生産者・団体自らの取り組みを後押しする必要な対策を検討・措置すること。

(2)畜産・酪農対策
①現下の厳しい畜産・酪農経営の状況はわが国の食料安全保障に支障をきたしかねないことから、生産・流通コストの増加をふまえた適正な畜産物価格・乳価を実現するため、流通事業者や消費者の理解醸成など必要な環境整備を早急に行うとともに、飼料価格の高騰を生乳取引価格に反映させる新たな仕組みの創設を検討すること。あわせて、万全な経営安定対策の実施に向け、十分な予算を確保すること。
②牛乳等の官民を挙げた消費拡大運動の更なる展開に加え、脱脂粉乳等乳製品について、輸出を含む需要拡大等を通じた需給の安定をはかるため、国も積極的に関与した継続的な枠組みの創設等の支援を講じるとともに、特に消費の拡大が見込まれるチーズについては、国産チーズの需要拡大に向け、必要な対策を講じること。
③生乳需給・酪農経営の安定をはかる観点で、畜安法を含む現行制度の検証を早急にすすめるとともに、酪農家間の不公平感が生じないよう必要な対策を行うこと。
④コスト削減や環境負荷軽減など持続的な畜産物生産の確立や和牛肉等の更なる輸出拡大をはかるため、畜産クラスター事業やエコ畜事業等の生産基盤対策、食肉処理施設等の整備等の流通体制強化対策を継続・拡充し、十分な予算を確保すること。

(3)青果対策
①産地からの国産野菜の安定供給と生産者の経営安定のため、野菜価格安定制度を堅持し、十分な予算を確保するとともに、収入保険との同時利用の恒久化に向けて拡充すること。
②加工・業務用野菜等において、国産切り替え等により今後の需要が見込める品目・用途での産地づくりを行うため、国も関与した全体需給に関する情報提供等とあわせ、転換を促進する産地への支援、出荷調整のための冷蔵・冷凍保管施設の整備支援、国産化をすすめる実需者等への支援の拡充をはかること。
③果樹の生産拡大に向け、十分な生産基盤の強化が行われるよう、省力樹形の導入を含む改植・新植や、産地の新たな担い手・労働力確保等に対する支援を拡充し万全な予算を確保すること。
④物流の2024年問題への対応が待ったなしを迎えるなか、農産物の共同配送拠点の整備、品質保持対策、パレットの標準化、トラック予約システム等の導入等を促進するための支援ならびにモーダルシフトの促進への支援について、産地へのコスト負担が集中しないよう、抜本的に拡充すること。

(4)甘味資源作物対策
①甘味資源作物の安定生産に向けて、糖価調整制度の持続的な運営を行い、着実に経営安定対策を実施すること。また、サツマイモ基腐病対策を含めた万全な生産振興対策を講じるとともに、国産糖の消費拡大対策を継続・拡充すること。

(5)鳥獣害対策
①鳥獣被害を確実に減少させるため、鳥獣特措法をふまえた都道府県・市町村の体制強化をはかるとともに、広域捕獲の実施やICT等の活用等による捕獲強化、侵入防止柵の設置、効果的な捕獲等を促進する専門家の育成等、鳥獣被害防止総合対策交付金を抜本的に拡充すること。

(6)災害復旧・復興対策
①自然災害が激甚化・頻発化するなか、防災・減災の観点から施設等の改良など、災害に強い農業づくり対策を継続的かつ十分に講じるとともに、被災状況に応じた継続的かつ柔軟な復旧対策の措置・拡充、関係省庁等と連携した支援体制を構築すること。

(7)家畜伝染病、病害虫対策
①鳥インフルエンザ・豚熱等の家畜疾病、病害虫被害が深刻化するなか、水際対策の徹底・強化のほか、地域実態に応じて、家畜疾病等の発生予防・防除等にかかる有効な対応策が実践できるよう、消費・安全対策交付金などの支援を継続・拡充すること。特に鳥インフルエンザについては、感染拡大リスクもふまえつつ、殺処分等の迅速な防疫措置に関する人員等の地域負担の軽減や早期の経営再開に向け、必要な支援を行うこと。

(8)国際貿易交渉対策等
①生産基盤等の継続的強化に向け、TPP等関連政策大綱に基づく対策を継続的かつ十分に講じること。
②輸入検疫協議等については、影響を精査しつつ、関係する産地等に対し、事前を含め十分な説明・情報提供を行うこと。

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