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基本法見直し 新自由主義からの転換必要 森山最高顧問が講演2023年5月13日

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JA全中と全国農政連は5月12日に東京都内で食料・農業・地域政策推進全国大会を開いた。そのなかで自民党の総合農林政策調査会最高顧問で党の食料安全保障に関する検討委員会の森山裕委員長が基本法の改正について講演した。講演の概要を紹介する。

森山裕自民党農林食料員会最高顧問森山裕 自民党総合農林政策調査会最高顧問

日本支えているのは地方と第一次産業

自民党は食料安全保障に関する検討委員会で基本法の見直しに向けた議論を開始し、昨年5月と12月に提言をとりまとめ、予算の拡充などに取り組んできた。

今年の最大の課題は基本法と関連法案の改正であり、党では政府の検討と並行して若手議員にも参加してもらい見直しの方向性を検討してきた。

基本法では国内生産の増大を基本に食料の安定供給を図るとしているが、輸入に過度に依存するようになってきているというのが正直なところではないか。いつでも何でも手に入る時代のなかで、短期的なことや一部の成長に捉われ、国や命を支えているものや持続可能性などを重視しなくなってきたのではないか危惧している。

大豆は日本の食文化を支えている極めて大事な農産物だが、自給率は7%しかない。もっと怖いのは世界の貿易量の60%を中国が金の力で買い占めているというのが、市場の現実だ。われわれはこのことも直視しなければならない。

日本を支えているのは地方であり、第一次産業であると確信している。新自由主義で地方や第一次産業の厳しさが増してきているのではないか。転換が必要だ。岸田総理も新自由主義からの脱却を図って新たな資本主義を掲げていくと述べた。

基本法見直しの基本的な考え方は、将来に向かって持続可能で強固な食料供給基盤を確立することを大きな目標にしたい。短期的に実現できることではないので20年後を見据えた長期的な視点で取り組む必要がある。

とくに大事な視点は3つある。

環境との調和も重要

1つ目は、G7農相会合の宣言に盛り込まれたとおり、食料の武器化が進み食料がいつでも安価に輸入できる状況が続くわけではないということだ。ここをしっかりと認識して食料安全保障を抜本的に強化することが必要だ。

その際、国内生産の増大をしっかり進めつつ、国内で賄えない小麦や肥料原料などは将来に渡って安定的に確保できるような備蓄強化と併せて、同盟国や友好国との連携・関係の強化に取り組むことが大事なことだ。

2つ目は気候変動などが進むなかで持続的な食料生産を確保するためには、農業、食品産業を環境と調和の取れたものへと転換することが不可避だ。

3つ目は人口減少への対応。海外市場も視野に入れつつ中山間地も含めて生産と地域コミュニティを維持できるようにすることも極めて大事なことだ。

これらを実現するためには今までの施策を見直し、統合や拡充を進め将来に渡って安定的に運営できる政策を確立していく必要がある。

新自由主義からの転換である。新自由主義が軽視してきた食料自給、環境、地方重視、食料安全保障の強化も含めて、豊かで強固な日本社会、経済を作り上げていくことが大事だ。

改革や成長は必要である。しかし、新自由主義的な改革では持続可能性や、広く国民のためになるのか、ということが非常に大事な視点ではないか。

コロナ禍を経てこのことが多くの方々に理解されるようになっていると実感している。以前は牛乳や卵の値段を上げることはできないと信じられてきたが、現場の状況が消費者に届いたことで理解をいただけるようになっているのではないか。

昨年、生産資材価格の高騰で大変厳しいなかで対策を検討したが、これを教訓として国内資源の活用や環境負荷軽減の取り組みも提言した。この取り組みにも国民の理解をいただきつつあるのではないか。これまでまったく取り上げられることがなかったたい肥や下水汚泥活用について多く報道されるようになった。

基本法の改正のポイントは何かと聞かれたら、やはり新自由主義からの転換と答えている。農業者を含め意識と行動の変容が必要ではないか。

多様な経営体 しっかり位置づける

転換の重点のひとつが担い手対策だ。中小・家族経営を含む多様な経営体をしっかり位置づけることが大事だ。どうもそう思っていない人もいるようだが、ここはすべての人に理解をいただけるようにしなければならない。

畜産の世界でも、たとえば1頭飼いなど家族経営が全共で日本一になった素晴らしい牛を育てている。家族経営も大事であることをしっかり意識しなければならない。家族経営でがんばっている方が地域の農業のリーダーであったり、若い人たちを育てているということを忘れてはいけない。今回の基本法見直しで、しっかり位置づけていくことが大事なことだ。

人口減少によって担い手の規模拡大がますます必要になるのはその通りだが、一方、担い手がいない地域のなかで地域農業や農村社会を守るために多様な経営体を支え手として確保していくことは極めて大事なことだ。

4月に施行された改正農業経営基盤強化法でも多様な経営体を地域計画のなかに位置づけ、農地の持続的な利用を進めるとしている。多様な経営体を基本法に位置づけることは、私はしっかり約束していいと思っている。
農業者に安心して営農を続けてもらうためには経営安定対策の拡充が必要だ。現在は価格や収入の変動に対する対策しか位置づけられていないが、資材価格の変動への対応を強化していくことが必要だ。

畜産酪農については飼料高騰で大変厳しい状況であり、特例を利用しながら随時対策を講じてきたが、引き続き状況を注視し必要な対策を講じていくことは当然のことだ。
一方、肥料は飼料のような制度がない。しっかり補てん対策を明確化していこうと考えている。

このことはフランスのエガリム法を参考にして検討を進めている価格形成への対応として必要なことでもある。

急な高騰の分をすべて転嫁させることは困難。その場合の対策として経営安定対策を拡充させる必要があると思っている。量販店のみなさまにもぜひ考えてもらいたいのは、今の状況が続けば売るものがなくなる方向に進みつつあるのではないかということだ。そうではなくて再生産がしっかりできる価格というものにご理解をいただく必要がある。

水田政策と直接支払い政策についてだが、基本法改正は大きな政策転換を行うために実施するわけで、その際、米政策をはじめ重要政策を将来に渡って安定運営できる政策としてどうしていくかがいちばん重たい課題だと認識している。

今すぐどうこうすると決めてはいないが、人口減少を見据え持続可能で強固な食料安定基盤の確立をするためは、農地、多面的機能、環境負荷軽減などの幅広い観点から丁寧に検討を進めていくべきだ。

改正後の基本法のもと、人、農地、作物について具体的な将来像の取り組みが検討されているのでそのなかで進めていきたい。

本日、JAグループから要請をいただいた内容は概ね同じ認識であると考えている。現場をしっかり見て政策を進めていくことが大事だ。

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