茨城県八郷地区で地域の未来を考える集会 有機や農への思いなど語る2023年8月22日
今年3月、同地域を管内とするやさと農協の有機栽培部会が長年の努力を認められ、「日本農業賞」の大賞を受賞。関係者が喜び合った(本紙三月二〇日号参照)。このことを背景に、先月19日、同農協が石岡市中央公民館で「地域の未来を食と農と交流から考える集い」を開いた。この集いには市民や関係者ら約百人が参加した。(客員編集委員 先﨑千尋)
約百人が参加した「地域の未来を食と農と交流から考える集い」
パネルディスカッションのテーマは「交流から創造へ」。神生(かのう)賢一同農協組合長が司会を務め、柴山進さんら4人が、それぞれのこれまでの歩みや今後の展望などを語り合った。
柴山さんは同農協の元職員。営農指導員として有機栽培を進める原動力となってきた。この日は「地域総合産直と有機農業」というテーマで、これまでの同農協の歩みを話した。同農協は1976年に東都生協と卵の産直を始め、鶏肉、シイタケ、野菜と品目が増えていき、1988年にあらゆる品目を含めた「地域総合産直」に展開した。出荷先も、いばらきコープ、常総生協などに広がっていった。
有機栽培部会が設立されたのは1997年。この地域では1970年代から、後述する魚住道郎さんらが有機栽培に取り組んでいたことが土台にあった。
90年代に入り、地域の養蚕が壊滅し、桑畑が残された。柴山さんらはこの桑畑を新規就農者の研修農場にすることを思いつき、「ゆめファーム」が始まった。新規就農者は家族単位。二年間ここで研修する。農場、農機具、ハウス、作業所などは農協が提供し、有機栽培部会のメンバーが指導に当たる。
石岡市は七年前に、市が運営する朝日里山学校に新規研修農場「朝日里山ファーム」を開設し、研修農場が二つになった。研修の仕組みは「ゆめファーム」と同じだ。朝日里山学校は体験型観光施設で、食、農業、工芸、自然体験や食の提供などを行っている。来校者は年間で1万5000人を超えている。里山学校と里山ファームの運営は、柴山さんが中心のNPO法人「アグリやさと」が市の委託を受けて行っている。
柴山さんは最後に、「農は最高の教育資源。都会の中高校生や親子の農林業体験受け入れは、農業を理解してもらい、自然環境のこと、食べ物のことを考えてもらう大切な機会だ。八郷地区の自然、田園、農地、山、人、それぞれがみんな大切な資源」と強調した。
一粒のタネが実を結ぶ
話者の二番手は魚住道郎さん。テーマは「有機農業で生きて、活かされ、生き貫く」。学生時代に熊本県水俣に行き、有機農業を志した。1974年に建設された消費者の自給農場「たまごの会」に参加。1980年に独立し、長男夫婦と共に二世代で有機農業に取り組んでいる。八郷町有機農業の草分けで、現在は日本有機農業研究会の理事長も務めている。
魚住さんは冒頭、やさと有機栽培部会が日本農業賞を受賞したことについて、「自分たちがまいた一粒のタネが広がっていったことの証で、うれしい」と語った。そして有機農業と慣行農業の違いから話を始めた。有機農業は、堆肥やボカシの適切な品質と量の施用で作物を健康に育て、病害虫の被害を最小限に抑える、農薬を必要としない農業だと話した。
さらに、日本有機農業研究会の理念である生産者と消費者の提携関係について触れ、提携は両者の自立と相互扶助の協同組合精神に基づく支え合いの関係で、有機農業を進めていくためには大事なことだと、その重要性を強調した。
三番目は、地元に「八郷留学」を立ち上げた原部直輝さん。まだ二十代の若手だ。タイトルは「暮らしも遊びも物語も、作るのは全部きみだ」。原部さんは三年前にUターン。八郷の良さを残し、八郷に魅力を感じる人を増やしたいと考え、「八郷留学」を思いついた。
「八郷留学」は、地域内外の小学生が八郷に留学するという設定で、泊りがけで自然体験や里山の暮らしを体験してもらうプロジェクト。築53年の古民家を拠点に、八郷地内の耕作放棄地や棚田を活用し、裏山と民家の環境整備、農的暮らしと生態系の関係を学ぶ、というものだ。プログラムは、子どもだけで宿泊し、滞在中の食事はもちろん、食料も、田んぼや畑で子どもたちが作るという内容。原部さんが企画運営し、地域の住民や栄養士などがサポートする。原部さんは「八郷全体をフィールドとした複合体験プログラムを展開し、町をあげて八郷を自然教育のメッカにしたい」と語る。参加者は年々増え、今年は二百人が目標だ。
トンネルを抜けると里山の風景
パネルディスカッションのしんがりは中島紀一さん。有機農業研究の第一人者で、なおかつ実践者。全国各地の有機農業生産者らとの交流も積極的に進めてきた。現在は「やさと里山文化研究所」の設立準備を進めている。
この日は、「茅葺農家と里山農業を中心とした次世代里山プラットホーム」構想の具体的な内容として、大場観光ぶどう園と、里山農業にチャレンジしている「やまだ農園」の事例を紹介し、やさと農業の将来を展望した。
「大場ぶどう園」の大場克己さんは85歳で現役。23歳の時に新しい農業を求めて山梨で研修し、フランスのブルゴーニュのようなぶどう園を目指し、観光ぶどう園を経営してきた。中島さんらの構想は、大場さんの茅葺きの家を次世代のプラットホームとし、いろいろな人がこの家を中心にして、里山景観の保全と活用を図り、新たな里山農業の実践と後継者の育成を進め、地域への波及効果もねらうというもの。
「やまだ農園」は、就農して七年になる山田晃太郎さん夫妻が、築百年になる茅葺き屋根の家を譲り受け、NPO法人「みんなの広場」を活動の拠点として、落葉や雑草、敷き藁など植物の力を活用し、自然に寄り添った、たくさんの生き物と共に生きる農業を目指している。今年の冬には多くの人たちが参加し、かや屋根の葺き替えを行った。
中島さんの描くやさと農業のこれからは、「自然と暮らしの伝統を活かして、里山農業の地の利を活かす人々が集う地域へ。文化の香りのする農業の多様性。老若男女、助け合いと心の交流を大切にしながら、みんなが和やかに暮らす」ということだ。トンネルを抜けると里山の風景が開ける。これこそユートピアだ。
集いが終わって、神生組合長は「これからもこのような企画を考えている。八郷の実践を石岡市全体に広めたい」と語った。
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