無人ヘリ防除からドローン業者への作業受委託防除へ 一宮町の挑戦 全農グリーンリソース2023年9月8日
一宮町植物防疫協会は、長年続けてきた無人ヘリによる航空防除をドローン業者による作業受委託防除に切り替えることを決めた。それに伴い、紙の地図による散布依頼から、Z-GISを活用したデータ提供に移行する。データの作成は、全農グリーンリソース株式会社(以下ZGR)の「Z-GISの入力支援とポリゴン作成」(旧名称:Z-GISの入力代行)を活用した。
Z-GISで見た一宮町の航空写真_海が近く開けた圃場が特徴的
千葉県の東部、九十九里海岸の南に位置する一宮町は、東京オリンピックのサーフィン競技が行われるなど、海に面した平地を有する農業生産の活発な地域。
一宮町役場に事務局を置く一宮町植物防疫協会が、長年続けてきた無人ヘリによる航空防除をやめ、ドローン業者による作業受委託防除に切り替えることを決めたのは、令和4年の航空防除を終えたときだった。
千葉県九十九里地方特有の平地が広がる。
管内のJA長生を通じ、全農千葉県本部とJA長生(以下JAグループ)が連携して進めているドローン業者による作業受委託防除を知った。一宮町は、作業受委託防除の導入に向け協議おこない、JAグループと協力関係にあるドローンプロフェッショナルサービス株式会社(千葉県市原市 以下DPS)と進めることにした。
一宮町植物防疫協会から地域住民への説明看板を設置し作業をおこなう。
JAグループとDPSの作業依頼にならい、散布先データの引き渡しにはZ-GISを使用することを決めた。Z-GISを使用することで、散布業者が地域の地理に慣れていなくてもタブレットやスマートフォンのZ-GISアプリから、現在位置と作業場所を確認することができ、散布間違いや作業指示者の立ち合いなどを回避することができる。また、作業指示だけでなく、作業終了後の確認や次年度の作業依頼などにも活用できることを期待している。
DPSはタブレットでZ-GISアプリを起動し圃場を確認する。
作業指示や作業報告もZ-GISのデータでやり取りをおこなう。
令和4年度におこなった無人ヘリによる航空防除の圃場数は1240筆あり、この圃場情報を一宮町の担当者自らがZ-GISに移行するのは大変と判断し、ZGRの「Z-GISの入力支援とポリゴン作成」を利用することにした。
DPSの作業は自動操縦を使わずオペレータの操縦でおこなう
ZGRは、営農支援という観点からスマート農業を活用したJA・行政向けの営農支援をおこなっており、令和4年度からは「Z-GISの入力支援・ポリゴン作成」のサービスを開始している。今回は令和4年度の散布情報に含まれた地番から、圃場を特定しポリゴンを作成した。圃場の特定には農林水産省の提供するeMAFF農地ナビと筆ポリゴンを活用し、2週間ほどでデータが完成した。また、ZGRの作業により、圃場の合筆や同一圃場の精査をおこない、800筆の圃場にデータを整理することができた。
移動は軽トラで素早く行う、また、長時間の野外作業のため充電器をトラックに装備している。
ZGRは、データの納入とともに、一宮町の担当者に向け、データ管理のコツや次年度への反映方法など具体的な事案を含め、Z-GISの操作説明をおこなった。実際のデータを触った担当者からは、「データが使いやすく、Excelベースのためアレンジもしやすい。新たに覚えることは少なく、これなら問題なく使用できるし、次年度に向けた新たな活用にも期待できる」と評価を受けた。
一宮町の担当者は、納入されたZ-GISのポリゴン情報をもとに、令和5年度の散布先情報を作成し、7月に控えた作業に向けDPSに作業依頼をおこなった。DPSでは、800筆を超える一括の作業受委託となったが、Z-GISデータのおかけで、令和5年度の作業を無事迎えることができた。
ハウスや住居が入り組んだ場所もあるためオペレータと補助者で作業をおこなう。
一宮町では、水稲栽培をおこなえる圃場が約2000筆あり、今回のポリゴン作成に含まれなかった残りの圃場もZ-GISに登録をおこなう予定。今後もJAグループと協力しながら、一宮町管内の水田全圃場を管理し、様々な使用方法を検討している。
今回は、一宮町という行政が中心となり、スマート農業を活用した新しい農業への移行を実現した。スマート農業というと先進的な農業生産者の専売特許のような言い方をされることもあるが、行政やJAこそ、新しい技術を取り入れ、地域農業の発展と管理の効率化を目指すべき課題といえるのかもしれない。
出穂のタイミングを見ながら品種ごとに圃場を分けて作業をおこなう。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日