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耕畜連携で食料安保向上を-農中総研フォーラム2023年9月15日

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農林中金総研は9月14日、「食料安全保障と地域資源循環の強化に向けて」をテーマにオンラインでフォーラムを開いた。フォーラムでは耕畜連携に取り組む生産者が報告、約600人が視聴した。

左から関根氏、須藤氏、青沼氏、丹戸氏、小針氏、平澤氏左から関根氏、須藤氏、青沼氏、丹戸氏、小針氏、平澤氏

地域の農地 有効活用

群馬県前橋市の農事組合法人元気ファーム20は、食用の米麦(計103ha)のほか、稲WCS(15ha)、飼料用米(17ha)、子実コーン、麦WCSなど10haで飼料作物を作付けしている。

同市内の須藤牧場は元気ファーム20が生産する飼料を利用し、たい肥を供給している。

耕畜連携の取り組みは2008年から続いている。牧場との調整で飼料設計に合わせて栽培面積などを決定し、双方の契約のもと生産した飼料は牧場が全量購入している。

元気ファーム20は飼料作物の生産・販売で米に依存しない経営体質をめざし、須藤牧場では個人経営では手が回らない自給飼料の増産を耕畜連携で実現し、多品目の自給飼料を供給することができるようになった。たい肥づくりは、市街地が近いため臭いがないたい肥を作ろうと牛に乳酸菌資材を食べさせ嫌気発酵させている。このたい肥の散布によって元気ファーム20では耕畜連携前より麦で収量が20%程度増加したという。

また、同ファームが事務局となってコントラクター組織を作ることによって地域の小規模農家も飼料生産が可能になり、農地の有効活用にもつながっている。関根正敏代表理事は、耕種サイドにある飼料生産という初めての取り組みに対する不安軽減や、交付金のあり方、日本での飼料生産の適した機械開発など課題も指摘した。

須藤牧場の須藤晃代表によると、耕種サイドに「飼料を作る意識を持ってもらう」ために勉強会を通じてコミュニケーションを図ることが大事だったと振り返った。自給飼料の導入により搾乳量は1頭当たり年間1000kl減少したが、一方で家畜共済の医療費が大きく減るなど「牛が健康になった」と話した。

長命連産 環境負荷低減

富山県高岡市のクローバーファームは、広島県生まれの青沼光代表が2015年に第三者継承による新規就農で起業した牧場だ。

地域の水田農家との耕種農家との連携で飼料用米、稲わらを利用し、たい肥を水田に散布する連携を始めている。地域の食品産業から出る酒粕やビール粕、野菜くずなどを飼料として活用しエコーフィードにも取り組む。牧場の眼の前の水田で通年放牧も行っている。これによって病気やケガなどのトラブルが減った。

さらに高齢化が進む中山間地域の集落には、水田の畦畔を取り払い畑地化して牧草生産へ転換することを提案している。

耕畜連携とともに「長命連産」もめざし、わが国平均の1頭当たり2.6産を少しでも伸ばすことによって育成牛を減らすことができ、それが環境負荷の低減にもつながることを指摘し、青沼代表は「持続的な社会のために役立つ酪農の価値を酪農家が自信を持って発信していくことが大事」などと強調した。

全酪連の丹戸靖企画管理部長は「地域でどう多品目の飼料を集めるか、地域一体となる必要がある」として、離農した元酪農家にも働きかけ飼料生産などで参画してもらうなど取り組みも求められると提起した。

小針美和主任研究員は「転作から飼料作物の本格生産へ政策としてしっかり位置づけるべき」と指摘した。

コーディネーターの平澤明彦理事研究員は「農地の維持には農業全体のデザインが必要だ」と強調し、米の需要が縮小していくなか畜産を維持していくには「飼料の高い生産性と品質を実現する施策」への転換が求められており、「耕畜連携は重要な要素として主流化すべき」などと話した。

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