植物の乾燥・高温耐性を強化するバイオスティミュラント『スキーポン』の普及拡大 アクプランタ2023年10月31日
JAアクセラレーターの第一期採択企業であるアクプランタは、10月11日~13日に千葉市幕張メッセで開催された「第13回農業WEEK」の「AgVenture Lab(あぐラボ)ブース」内でパネル展示し、バイオスティミュラント(農業用植物活力剤)『Skeepon(スキーポン)』の特性認知訴求を図った。
植物の成長促進に働くバイオスティミュラントの認知度向上に貢献
あぐラボブースのパネル展示の前で、金鍾明社長(中央)とスタッフ
同社は、スタートアップ企業の支援とオープンイノベーションの促進を目的としたCVC投資(コーポレートベンチャーキャピタルファンド)からの資金調達をしている。「この5年間でジャンルとしてのバイオスティミュラントの知名度は上がり、『スキーポン』も急速に名前が知られるようになってきた」と金鍾明社長は振り返った。
『スキーポン』は、お酢の主成分である酢酸をベースに作られた農作物全般の生育に適した生産資材である。農薬や肥料とは異なり、植物に散布すると乾燥・高温から強くなるため「"地球沸騰化"と言われた今夏の引き合いがとても多かった」と金鍾明社長。実際に日本全国で『スキーポン』の販売を開始。北海道ではホクレンでの取り扱いがスタートするなど、堅調に裾野が広がっているようだ。
東京大学大学院農学生命科学研究科特任准教授を兼任する金鍾明社長によれば、もともと植物に乾燥や熱のストレスを与えると、自分で酢酸を作り出すメカニズムがあるという。この植物の性質を利用して、乾燥・高温耐性のある植物の遺伝子を活性化する刺激剤として製品化した。「そのメカニズムはネイチャーの論文になっているので科学的なエビデンスがしっかりとしている」と金社長は研究者としての素顔も見せた。
収量減のリスクを回避し、出荷量増と高値取引で営農収益が向上
処理区と未処理区(小雨・高温時のほ場栽培)
今夏は、記録的な猛暑日が多かった群馬県高崎市のネギや、北海道の水稲、ブロッコリー、レタスなど、幅広い農作物にも使えることから裾野が広がったようだ。「これまで暑さに強い言われてきたトマトでも熱害を受けて収量減が見られる中でも『スキーポン』を使用した農家では、収量減のリスクを回避できた。出荷量は作物品種と栽培環境にもよるが1.2倍〜2倍に増やせ、高値で取引されていることから営農収益の向上に貢献している」という。
「いろいろな使い方ができるが基本は500倍に希釈して使用するので、『スキーポン』1本(容量1L)だと500L。128穴のセルトレイで考えると1枚に1L与える感じなので、500枚のセルトレイをつくれ、6万4000本の苗が処理できる。価格は税込7150円なので1苗当たり0.1円程度の計算になる」と金社長。しかも一回苗の状態で散布しておけば、3ヵ月間は効果が継続するため、定植時に施用するのが最も効果的という。
化学肥料や化学農薬を減らすことを目的とした国のみどり戦略にも合致した商材といえる。「(特定農薬の範疇には含まれるが)病害虫の殺虫効果を持つような濃度ではなく、(肥料成分は含まれていないが)肥料の施用時と同じような植物に活力を与える効果があるため、米国カリフォルニア州では肥料認証を取得している」と付け加えた。現在、米国でも活動の幅を広げている。
節水・節電効果からカーボンクレジット獲得も今後の事業の柱に
処理と未処理(室温50度、湿度10度の高温乾燥状況下のポット栽培)
『スキーポン』を使用することで、使う水の量を減らせるため、干ばつに悩まされている米国では地下水をポンプアップする電気代を節約できる。また、乾燥に強くなるので、苗を運搬する際に冷蔵車で運んでいたものを常温で運べるようになればクーラーを使わなくて済むのでガソリン代を節約できる効果が指摘されている。
「"地球沸騰化"と言われる時代に、農業で安定した食料生産をするのが第一のミッション。さらに当社は米国の森林局と森の木を増やす作業も同時に行っている。農地で作物を育てながら、森の木を増やして地球温暖化を食い止め、カーボンクレジットの創出で新しい産業をつくるところまでをワンセットで考えたい」と金社長、最後はビジネスマンとしての顔をのぞかせた。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































