再生リン配合肥料「こうべハーベスト肥料」をブランド野菜などに利用拡大 JA兵庫六甲2023年11月1日
JA兵庫六甲は、下水汚泥からの回収リンを活用した配合肥料「こうべハーベスト肥料」を水稲、キャベツ、スイートコーンなどの生産農家に販売し、地域循環型農業に取り組んでいる。自治体とプラント企業、農協などが協力して進める資源循環「こうべ再生リン」プロジェクトは2012年にスタートして10年以上が経過し、全国のロールモデルとなっている。
本プロジェクトでは、神戸市は下水汚泥からリンを効率的に回収し、水ingエンジニアリングが「こうべ再生リン」を原料に「こうべハーベスト肥料」を開発し、JA兵庫六甲を通じて地元の生産農家に販売する。このように地域資源を活用した肥料で栽培した農産物が地元で消費され、下水に戻ることでリンの資源循環を実現し、持続可能な社会をめざすというもの。
神戸市の下水処理場は、阪神・淡路大震災により壊滅的な被害を受けた。災害に強い下水道を目指し、復旧復興の過程で処理場での再生可能エネルギーの積極的な活用を推進するため、リン回収施設を東灘処理場(東灘区)に建設。現在のリン回収設備の能力は年間8万7200tの消化汚泥を処理し、130tのリンを回収できる。
一方、JA兵庫六甲は、生産農家等の意見を取り入れ、兵庫県上群町の水ingエンジニアリングと共に、再生リン配合肥料「こうべハーベスト10-6-6-2」を開発(表示はN・P・K・Mgの配合比率)。2014年度に肥料登録を終えて、販売を開始した。さらに、学校給食米用の水稲一発型肥料「こうべハーベスト18-13-13-1.5」や酒造好適米「山田錦」用の「こうべハーベスト10-6-6-2」を開発することで用途が広がっている。
「こうべ再生りん」
リン回収設備から回収したMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)を「こうべ再生リン」と名付け、2013年に肥料登録した。「こうべハーベスト肥料」は、「こうべ再生リン」を15~20%、有機肥料を50%配合している。再生リンの利活用については、神戸大学なども含めた産官学によるコンソーシアムで協議を進めている。
昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻や、肥料等産出国による輸出規制、さらに円安で肥料原料価格が高騰するなど、肥料を取り巻く環境は様変わりしつつある。神戸市でも2021年度まではリン回収量130tに対して、出荷量は約25tと需給ギャップがあったが、昨今の物価高や資材高騰、地域循環型農業の実現に向けて、2022年度から生産農家の「こうべハーベスト肥料」購入価格は全額補助する支援事業をスタートすることで、再生リン配合肥料の販売も上向いている。
2022年度の「こうべハーベスト10-6-6-2」の供給量は約1万3000袋(1袋20kg)となり、2023年度はさらに増える見込みであり「こうべ再生リン」の需給ギャップが解消され、むしろタイトとなっているのが実情のようだ。このため、リン回収設備を追加し、玉津処理場に設置することを決めた。2025年度には現在の倍となる260tのリンを回収できるようになる。
こうべハーベスト肥料シリーズ
今後は、資源循環「こうべ再生リン」プロジェクトの消費者への浸透を図るため、SDGSや地域内資源循環、さらに地域循環型農業に対する理解を深める必要がある。一般消費者への啓蒙を図ろうと一般家庭用(1袋1kg)の販売も実施している。「(その結果として)生産農家の再生産可能な農産物価格形成につながるようにブランド野菜を強化し、販路開拓などに努めていきたい」とJA兵庫六甲の担当者は語った。
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