地域農業の未来 原動力は出向く活動 TAC部門の全農会長賞にJA石川かほくの櫻井さん TACパワーアップ大会20232023年11月17日
JA全農は11月16日と17日、横浜市のホテルで全国のTAC活動の成果を共有するTACパワーアップ大会2023を開いた。大会では各地で選出された代表事例が発表され、当日の審査の結果、最優秀JAとTACに全農会長賞が授与された。
大会は今回で16回目で初めて地区別審査会を実施し、当日は最終進出者の発表をもとに審査が行われた。
JA部門で全農会長賞に選ばれたのは岐阜県のJAにしみの。TAC室の富田一幸室長が発表した。
JAにしみの 富田一幸室長
支店の統廃合が進み担い手との距離が拡大する懸念もあるなか、同JAではTACの人数は19人から24人へと増加させ、とくに担い手からの要望が多いみどり戦略に対応した栽培法や、施肥コストの削減の提案に取り組んだ。
具体策としては1300件を超える土壌診断の実施、ドローンを使ったリモートセンシングによる生育量の把握など行い、収量は128%増、施肥量の14%減を達成した。
さらにコスト削減に向け、多収品種「ほしじるし」の育苗センターによる高密度は種苗の供給、TAC一斉訪問による肥料予約注文の取りまとめ強化、国の肥料高騰対策の申請取りまとめなども行っている。
担い手からは新品種への全量切り換え希望や、国への申請支援など評価されるなどJA利用が拡大した。
収量の増加など実績の「見える化」や農業者の声に寄り添った継続した提案活動を今後も続けていくと話した。
TAC部門で全農会長賞を受賞したのは、石川県のJA石川かほく営農企画課の櫻井和幸さん。「高松紋平柿ブランド化に向けた取り組み」と題して発表した。
JA石川かほく営農企画課 櫻井和幸氏
高松紋平柿は石川県在来の渋柿だが、10年前は高齢化が進み、産地存続の危機にあった。活性化に向けて生産者やJA、県本部、行政などで検討会を開き、低樹高栽培への切り換えや、大きさや糖度にこだわった商品づくりや東京の大田市場への出荷などブランド化に取り組んだ。さらに氷温貯蔵方法を確立しお歳暮需要にも応えることも可能にした。
10年前は産地存続の危機にあったが、2022年産は生産量、販売単価、販売金額で「トリプル増を達成。生産者の意欲は最高潮、今後も担い手の所得向上と新規生産者の確保をめざす」と意欲を語った。
今大会のテーマは▽地域農業の課題の解決に資する出向く活動基盤の強化、▽食料安全保障に資する「強い農業」の創出に向けた生産基盤の維持・強化、▽次世代に地域農業をつなぐための環境調和型農業の実践の3つ。
開会のあいさつでJA全農経営管理委員会の折原敬一会長は「変化の激しい時代に持続可能な農業は重要なキーワード。多くの課題を担い手とともに解決し、新たな未来を描いていきたい。その原動力となるのが担い手と強固な信頼関係を築き困難を乗り越えてきたTAC」と激励した。
来賓の農水省経営局の勝野美江審議官は「組合員の意見や要望を丁寧に聞き対応するTAC活動はJA自己改革の核心。組合員の所得向上につながることを祈念します」とあいさつ。
また、JA全青協の稲村政崇会長は異常気象や資材高騰、人材不足で「農業者は未来に向け迷子になっているような状態。出向き寄り添い、伴走して切り開くTACと一緒に協力していきたい」など話した。
2日目は地区別優秀賞の事例発表や農業労働力支援、スマート農業などをテーマにした分科会が開かれている。
大会では以下の大会宣言を採択した。
【TACパワーアップ大会2023】大会宣言
◯担い手と消費者の懸け橋として「食」の未来を支えます。
◯JAグループの総合力を高め担い手の声に応え、営農を後押しします。◯担い手と共に活気ある地域農業を未来につなぎます。
受賞者と関係者のみなさん
各賞の受賞者は以下のとおり。
◯JA部門
【全農会長賞】
JAにしみの(岐阜県)【優秀賞】
JA水郷つくば(茨城県)
◯TAC部門(敬称略)【全農会長賞】
JA石川かほく 櫻井和幸(石川県)
【優秀賞】
JAしまね 原紀行(島根県)
JAいわて中央 米田菜摘(岩手県)
◯TAC部門地区別優秀賞
JAほくさい 須賀大輔(埼玉県)
JAさがみ 森海人(神奈川県)
JA能美 西田誠也(石川県)
JA鈴鹿 谷口昌志(三重県)
JAさが 鶴田新侍(佐賀県)
JA本渡五和 山下清弥(熊本県)
◯TACトップランナーズJA
JA金沢市(石川県)
JA阿蘇(熊本県)
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