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人が育つJA経営へ 理念を共有し、働き易い職場を【全中・人づくりトップセミナー】2024年1月15日

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JA全中は1月12日、「人づくりトップセミナー」を開き、離職・採用難が続くなかで優秀な人材を確保・育成する方策を探った。職員を大切にする経営に挑戦する千葉県のJAいちかわ、人が育つ会社づくりをめざすカット野菜の(株)旭物産の取り組み事例報告をもとにディスカッションした。オンラインで約180JA、700人が参加した。

今野博之・JAいちかわ組合長今野博之
JAいちかわ組合長

セミナーでは、JA全中の大島信之副会長(JA全中人づくり推進委員会委員長)が、最近の若者の就業観の変化を踏まえ、明確な経営ビジョンに基づくJAの人材育成基本方針の見直し、職員を大切にする「選ばれる職場づくり」の必要性を強調した。  

JAいちかわの取り組みは、今野博之組合長が「職員を大切にするJA経営への転換」で報告。同JAは都心から30キロ余りにあり、大消費地に近い強みを生かした梨や野菜の産地としても知られる。組合員約2万4700人のうち、准組合員が約2万人を占める典型的な都市型農協で、信用・共済・資産管理事業が経営を支えている。

同JAは、准組合員を「農業振興応援団」として位置付け、2022(令和4)年から23年にかけて准組合員7000人の純増を達成した。今野組合長は、増えた准組合員は、単なる事業の利用者でなく、JAの教育文化活動に参加し、管内農産物を知ってもらうことで「質の高い自己資本になる」と言う。

そのためには対話能力、情報発信力の高い職員の確保が欠かせない。同JAは優秀な人材確保のため、東京の女子大の「社会人インタビュー」の受け入れ、就業体験「1dayオープニングカンパニー」の開催や役員による大学訪問などをリクルート活動を積極的に展開している。

給与面でも、若年層の労働意欲向上のため初任給の引き上げに努め、令和5(2023)年大卒で20万円超と、県下最大の地方銀行、千葉銀行と遜色ない水準に引き上げた。また、組合長自らWebで「講話」を配信。JAの状況や戦略、さまざまな会議・セミナーなどで感じたことやJAのめざす姿を職員に伝えている。

楽しく働ける会社に

一方、旭物産の人材確保・育成の取り組みについては同社の小林正二会長が動画で報告した。同社は「人が育つ会社をめざした。その結果、会社が育つ」と、企業にとって社員を大切にすることの重要さを強調した。

同社は1971(昭和46)年に創業し、最初はモヤシの製造・販売からスタートし、カット野菜ブームに乗って関西・九州に工場を拡大したが、管理する人材の育成が追い付かず「売り上げは伸びるが利益が上がらない」状況が続いたと言う。

経営が軌道に乗り、初任給の高い新卒を採用し始めたときは、古くからの社員の反発もあったが、「会社の将来を担う社員であり、みんなで育ててほしいと話した。その後、新卒は期待通りの仕事をしてくれて、職場の雰囲気が変わった」と、小林会長は、楽しく仕事ができる職場づくりの重要さを強調した。

このほか、セミナーではJCA(協同組合経営研究所)の西井賢悟主任研究員が「協同組合人」が育つ要因について述べ、「職場における理念の尊重」(常に理念を意識して仕事をする)「JAに対する情緒的コミットメント(組織へ愛着を持つ)の重要性を強調した。

【パネルディスカッションから(敬称略)】

報告者をパネラーにディスカッション報告者をパネラーにディスカッション

――賃金水準について

今野 8年前、大卒の初任給を20万円台に乗せた。経営にとって内部留保も大事だが職員の幸せが第一。来年はさらにアップさせたい。賃金は将来への投資だ。

――職員の意識改革について

今野 現在、経営のバランスが取れているのは職員みんなのおかげと常に話している。その気持ちが伝わって職員の経営への関心が高まり、新年のあいさつなどで収支の話が自然に出るようになった。

――人事教育課と職員課の人事部の2課体制について。

今野 人事部職員7人ほどで2課体制になり人事部の職員が学校訪問や、さまざまな機会を利用してJAのPRができるようになった。

田村政司(JA全中教育部次長) べ―スアップはこれから避けられないだろう。人の採用は、量もあるが質も問われる。人事の仕事が増える中で、JAいちかわの人事と教育を分けた2課体制は学ぶべきだ。

――融資事業について

今野 JAいちかわの強みは融資事業にある。かつては「金に金を貸した」が今は「人に金を貸す」のであって、いい貸付けによって融資事業をもっと強くしたい。

――JAいちかわの野球部の活躍について

今野 運動部経験者を積極的に採用している。特に野球部が強く、アークカップで優勝したこともある。准組合員も多数応援に参加した。JAの部活動が職場の活性化と組合員とのつながりを強めている。こうしたインフォーマルなつながりを大事にしている。

――トップとビジョンについて

今野 トップが一番仕事しなければならない。私は組合長室にはほとんどいない。JA以外の情報をいただいている。それを月1回のWeb講話で職員に伝えている。

――求められる人材について

今野 常に新しい発想を持ちたい。組織は人材を育てる道具。その組織がきちんどしているかどうかで、人の成長が決まる。

西井 経営には守りと攻めがある。攻めの経営にはリスクはあるが、トップに理念があるから人が集まる。高い貯貸率、梨の輸出などJAいちかわは常に新しい事業に挑戦している。そこに職員は未来を感じる。

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