地域包括ケア より重要に「患者の在宅復帰が要」文化連が農協の医療・介護の役割で研究会2024年5月30日
日本文化厚生連は5月24日、東京都内で「厚生連医療経営を考える研究会」・「厚生連病院と単協をつなぐ医療・福祉研究会」を開いた。「医療・介護の連携」が本格化の段階を迎えようとしているなかで、地域を基盤とするJAグループがどのように関わっていくのか。地域包括ケア(地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供すること)を支える厚生連医療・農協福祉の役割について議論を深めた。
地域医療のあり方を探ったパネルディスカッション
研究会では「地域包括医療病棟の新設と地域密着型病院の展望」について日本福祉大学・二木立名誉教授が講演。次いで、「『医療・介護の連携』本格化段階の厚生連医療・農協福祉」をテーマに湖東厚生病院(秋田県厚生連)、海南病院(愛知県厚生連)、社会福祉法人・稲穂会(兵庫県JA兵庫南)が、それぞれ実践報告した。厚生連やJAの病院長や経営幹部、組合長など約130人がオンライン参加した。最後に参加者によるパネルディスカッションを行った。
地域包括病棟に期待
二木立名誉教授
特別講演した二木立名誉教授は、日本の今後の国民医療費の負担について、「コロナ危機を通して、国民が平等な医療を受けることを当然の権利と理解しており、この権利の制限につながる医療費の大幅抑制、医療給付範囲の大幅縮小を断行することは政治的に困難になっている」と指摘した。
また病院の再編・統合は、特に急性期(症状が急に現れる時期や病気のなり始め)病院で必至といわれているが、同名誉教授は、今後再編・統合の必要性が生じるのは高度急性期(病状が不安定かつ緊急性を要する急性期の患者に対して行う診療密度が特に高い医療)病院、及び人口減少が激しい地方の公立病院(一部民間病院を含む)に限られるとみている。
その上で「一般急性期、回復期を担う民間中小病院は広く分散している方が、高齢患者の入院医療ニーズに応じるうえでも、医療費の過度の上昇を抑えるうえでも合理的」と指摘。また、一般急性期病棟と地域包括ケア病床の機能が似ていることから、今後制度的に両者を統合することは検討に値すると指摘した。そのためには「病院・診療所や介護・福祉施設、行政機関等との地域連携、ネットワークの形成・強化が不可欠」と地域包括ケアの意義を強調した。
今回、入院医療関連の改定で出された地域包括医療病棟の新設が打ち出された。この病棟は既存の急性期一般入院にリハビリテーション・栄養・口腔管理機能を加えた病棟で、「地域で高齢の患者等を受け入れ、在宅復帰を目指すという地域医療病棟の理念・目的に沿ったもの」として、二木名誉教授は評価する。
「地域包括ケア」拠点
実践報告した秋田県厚生連湖東厚生病院は、「秋田県で一番、高齢者に優しい病院」をキャッチフレーズに総合診療・家庭医療に取り組み、地域包括ケアを支える病院としての役割を果たしてきた。
同病院は地域の人口が減少するなかで、かつて内科系医師が一人になり、平成23年(2011)には一時入院を休止した。その後、「湖東地区医療再編計画」で①地域の高齢者を中心とする在宅を含めた内科系医療に対応②地域の高齢患者の容態悪化への対応を中心とした救急医療③急性期治療後の医療(リハビリテーション等)など、地域における「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の五つのサービスを一体的に提供できるケアシステムを支える病院として位置付け、再編に努めた。
波多野善明病院長は「患者は多くの合併症を抱えた高齢者が多く、当病院は地域の住民の希望にマッチした総合診療を目指す」という。そのため総合診療医の育成に力を入れ、入院・外来共に主治医を固定せず診療機会・経験を増やすグループ診療を実施している。
地域の人口は減っているが、主にベッド稼働の増加・改善によって事業収益は増加、不採算地域のため秋田県や周辺4町村からの特別交付金があり収支均衡を維持している。これら自治体とは定期的に懇談し、「地域包括ケアを支える病院」としての役割、機能、現状、将来像について話し合っている。
地域完結型医療の軸
愛知県厚生連海南病院は病床数540床の高度急性期医療を行う基幹病院であるとともに、地域に根付いた高齢者福祉事業を展開している。奥村明彦病院長は同病院が果たすべき役割として、①地域完結型医療の基幹リーダー病院、②地域医療構想における高度急性期・急性期医療の提供、③地域医療のさまざまな支援・連携、専門医プログラムを通じての医療支援のハブ病院、を挙げる。
また、デイケアやヘルパー事業に取り組むことについて、同病院は「入院から在宅への患者の流れをスムーズにするとともに、病院で育ててきた人材とノウハウを地域に還元する。地域で必要としているものを作り、地域に還元することだ」と、地域包括ケアの一員として同病院の役割と位置付けている。この考えで居宅介護支援、訪問看護、訪問介護、訪問入浴、地域包括支援センターなどの各種事業を展開している。
一方、病院そのものは急性期医療に特化させ、高度急性期機能も強化する考えだ。ただこうした機能強化で「リハビリ、ケアの充実で機能回復・退院が早まり、病床に余裕ができるが、病棟で療養中の患者の生活を支える介護福祉士が不足している。確保できれば転倒等のリスク回避やケアの質を向上できる」と奥村院長は、人員確保の必要性を指摘する。
社会福祉法人と連携
JA兵庫南はJAが行っていた福祉事業を(デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅・介護付き有料老人ホーム、訪問介護事業など)を社会福祉法人稲穂会に事業移管した。同会の林佳史部長は行政との調整、仕事の内容や労働条件などJAから転籍する職員の納得を得ることなど、移管に伴うノウハウを報告し「農協の福祉事業は曲がり角にある。社会福祉法人化による展望を示したい」と話した。
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