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ネギの「根切り」にAI活用 (株)レグミン【JAアクセラレーターがめざすもの】2024年9月9日

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JAグループの資源をスタートアップ企業に提供し、農業や地域社会が抱える問題の解決をめざして新たなビジネスを協創するJAグループのオープンイノベーション活動である「JAアクセラレータープログラム」は今年度は第6期を迎え、9社が優秀賞に選ばれた。現在、JA全農、農林中金職員ら「伴走者」の支援を受けてビジネスプランのブラッシュアップをめざして活動をしている。9社の取り組みを随時レポートする。

埼玉県深谷市を拠点とするレグミンは、収穫後のネギの根葉切りを省力化する「ネギ調製装置」を開発した。

ネギと言えば深谷市のブランド野菜であり、同市は全国トップクラスの出荷量を誇る。レグミンは、すでにネギの農薬噴霧用AI自律走行ロボットを同市で展開しており、今回の「AI画像認識を活用しネギ調製装置」は、いわば第2弾のサービスだ。

ネギの根切りは、切りすぎるとB級品、切らなすぎると次の皮むき作業に支障をきたすと、ベテラン技が必要と言われる作業だが、レグミンは独自のAI画像認識技術で、最適な根切り位置を学習し、誰もが最適な位置で根と葉を切れて、全長60cmの最適サイズにカットできる装置を開発した。
(簗)JAアクセラレーター (株)レグミン.jpgレグミン代表取締役の成勢卓裕氏(写真)は「最適と言われる根切りの状態の画像を大量に撮影し、それをネギ調製装置のAIに学習させます。ネギを装置のトレイに置くと、その場で撮影、最適な根切りの位置をAIが判断し、カットする歯を移動させてベストの位置でカットします」と説明する。装置の処理スピードは、現在「1時間で1200本」(成勢氏)を目標としている。

現状は試作機による動作が可能という状況だが、成勢氏は「深谷市以外の、日本全国のネギの根切りの画像データを集めて、もっとカットする位置の精度をあげたい」と述べる。

JAアクセラレーターに応募した動機は、この「ネギの根切りの画像データ」の収集を全国レベルで実施するためだ。具体的にネギの産地を紹介してもらう、もしくは産地のネギを同社に送付してもらうことなどを想定している。すでにJAの伴走チームとともに、調整機の完成度アップに向けて、サンプル収集、根切りの現場見学など、多様な取り組みを行っている。

「農家とのコミュケーション」から着想

ネギの根切り作業について、「ベテランや熟練者じゃないと最適な位置を判断できない」というニッチなニーズに、レグミンが気づいた理由を聞くと、成勢氏は「われわれのメンバー全員が、現場に出ることが好きなんです」と、同社と農家のコミュニケーションの距離が近いことを挙げた。

(簗)JAアクセラレーター (株)レグミン.jpg2.jpg

深谷で実働しているレグミンの農薬散布ロボット

同社は、ネギ畑向けに農薬散布ロボットを提供していて、すでに深谷市では20軒近くの農家が利用している。そうすると農家から「噴霧スピードは、もう少し早い方がいい」「意外に静かだね。これなら朝夕の静かな時間でも散布できる」といった声をもらう。つまりロボットを介した農家とのコミュケーションが生まれてくるわけだ。

今回の開発も、同社の社員がネギ収穫後の調製作業を見学していて「その根切りの作業は、バイトがやってはいけないんですか?」と聞いたところ「いや、それは難しい」という返事がきっかけだった。「なぜ難しいのでしょう? といった会話を大事にして、そこを深く掘っていくことで、ニッチでもしっかりしたニーズに出会えたと思います」と成勢氏は振り返った。

特に同社の農薬噴霧ロボットはGPSで位置情報を把握しつつ、同時に畑の「うね」を画像で認識し、うねの具合に沿って移動できるので、うねが蛇行したり傾斜があっても問題なく畑を移動できる。今回のネギ調製装置は、このAIによる画像認識の機能が応用できるのではという発想も生かされている。農薬散布と根切りという、一見関係ない作業も、レグミンの視線と技術によって「繋がった」と言える。

人が足りない、ならロボットだ

レグミンが、農作業の生産性や効率アップに取り組んだ理由について、成勢氏は「農業は人が足りない、それでも生産性は維持しなくては。ならばロボットだと考えました」と語る。

そのために「農業のことをきちんと勉強しないと、ただ作りたいものを作って、それが使われないまま終わるリスクは高いと思いました。そこで自分たちでまず小松菜を作って、ロボットによる作業に取り組みました」。

成勢氏は「農作業の手順や今の農機具の使いにくい点は何か、農薬の適切な散布方法は、など身をもって実感できました。ここから農家の人と会話できるきっかけを得られました」と語った。

こうして農家との会話が生まれ経験も重ねた。
「最初は、作物の育成にフォーカスするのが得策と思いましたが、収穫しても出荷できなかったら意味がない。農業の一連の工程を見渡した上で、我々ができる人手不足解消は何か、という見方ができるようになりました」と振り返る。

今回のネギ調製装置は、AI画像やメカトロへの知見といった同社の強みに加え、農作業を俯瞰してニーズを深掘りできる視線と、ニーズに自社技術をどう組み合わせれば良いかの適切な判断から生まれたものと言える。

【伴走者のコメント】
全農、ホクレン、農林中金などJAグループ連携のもと、産地のネギのサンプル収集やネギの選果場の見学をサポート、他、購買者を明確にした販路開拓等も目指していく。サンプル収集と見学は候補を選定し調整中。販路開拓等は定例ミーティングにて意見交換中。

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