役職員の声ふまえたJA経営戦略へ 全国4連がセミナー2024年9月26日
JA全国機関4連(JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫)は9月24日に東京都内で「JA役職員エンゲージメント調査を通じた経営戦略高度化セミナー」を開いた。オンライン視聴も含め44県から300人が参加した。
東京都内で開催されたJA役職員エンゲージメント調査を通じた経営戦略高度化セミナー
基調講演をした法政大学経営大学院教授の高田朝子氏はエンゲージメントについて「私も組織に入れ込んでいて、組織もまた私に入れ込んでいること」と解説した。
職員を対象にしたES(従業員満足度)調査は職場環境や福利厚生など仕事以外の満足度を調査するのに対し、エンゲージメントとは「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」と経産省が定義しており、役職員への調査によって、JAの経営理念の浸透度や組織への貢献意欲などを可視化し、組織と職員との相互理解度を表す。
JAでは職員の確保・育成が課題となっているが、組合員・利用者の期待に応えて信頼される組織として事業を実践するには、役職員の声をふまえた経営戦略と、戦略実践に向けた人材戦略の一体的な策定が必要となっている。
その取り組みを進めるJA全国組織4連が事務局となって全国のJAで「JA役職員エンゲージメント調査」を行う。
2024年度を初年度として2027年度までに全JAでの実施をめざす。
調査の内容は「仕事を通じての達成感の有無」、「経営理念への理解深度」、「業務評価への納得感」などで個々のJAで独自の設問も設定できる(最大5問)。調査実務は外部に依頼し、今年度は11月に実施し調査結果は12月下旬に還元される予定。
調査結果は他のJAの結果と比較して、強みや弱みを知り経営戦略、組織戦略の改善につなげる。そのために役員と職員との対話を充実させることや、上司と部下との1対1面談を実施するなど、さまざまな対策を実施していくことになる。
法政大学経営大学院教授の高田朝子氏は「手間ひまをかける経営のススメ」と題して話し、「人間は見たいのものだけ見る」と指摘、自分たちの組織の姿を知るにはエンゲージメント調査などで「数値化」して捉えることが重要だ話した。
法政大学経営大学院教授 高田朝子氏
そのうえで紹介したのは職員に課すノルマをなくした京都信用金庫の事例。同信金は「すべては地域の人々と会社がよく暮らせるために」を大前提とし、地域が良くなれば自分たちも良くなるとして、顧客に寄り添って課題を解決する力を発揮することを重視してきた。
デジタル化も進めているが、それは機械ができることは機械に任せ、職員は顧客と合って話をする時間を確保するためという目的を明確にしているという。
こうした事例をもとに、参加者に向けて「私たちは何のために存在しているのか」をそれぞれのJAで役職員が再度共有することが大前提となると提起した。そのほか「ありたい姿」の実現のためには、職員に「何を言っても大丈夫な組織」という心理的安全性を与えることや、すぐに結果が出ないことについて「早急に答えを求めず、我慢する力こそ不可欠」、上司と部下とのこまめな意思疎通による評価で成功体験を積み上げることなどを提起した。
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