耕畜連携・水田輪作で「古川モデル」 子実トウモロコシ、大規模実証栽培で成果 JA古川2024年11月27日
宮城県のJA古川がJA全農と連携して2022年から取り組んできた子実トウモロコシ実証栽培が完結した。今年は10アール687キロの収量を達成し、12月には子実トウモロコシを給与した仙台牛も売り出される。JA古川は11月25日、大崎市内で実証試験総括研修会を開き、3ヵ年にわたる本州最大規模の実証試験の成果と今後の展望を共有した。
JA古川産子実トウモロコシを使った配合飼料で育った仙台牛を試食。
うまい!と声を上げるJA古川の佐々木浩治組合長。左は試食する全農の由井琢也常務
畜産までのバリューチェーン
研修会に先立つメディア向け発表会で、JA古川の佐々木浩治組合長は、開会あいさつで「子実トウモロコシの実証実験は、3年目を迎え大きな成果を得られた」と強調。全農の由井琢也常務理事は「実証実験で栽培方法を確立できた。子実トウモロコシは労働生産性にすぐれ、水稲、大豆との輪作体系に組み込むことで、生産性向上と収益向上を果たすことができる。JAグループとして、子実トウモロコシ生産から畜産物までのバリューチェーン確立に取り組んでいきたい」とあいさつした。
栽培技術高めつつ収量を倍増
出所:JA古川子実とうもろこし3ヶ年実証試験総括研修会(11月25日)配布のJA全農資料から編集部作成
プロモーションビデオ上映をはさんで、JA古川の佐藤貴寿営農企画課長が取り組み概要を報告した。
佐藤課長は、子実トウモロコシのメリットとして、①面積当たりの労働時間が短い(10a当たりで水稲23~28時間、大豆6~8時間、子実トウモロコシ2.2時間)ことと、②土壌物理性が改善される(根が深く伸びて排水が進み、茎も土中にすき込むことで堆肥化)、③堆肥の有効活用と国産・地産飼料の供給による耕畜連携――を挙げた。
アワノメイガ対策で関係者の努力実る
子実トウモロコシ栽培の経過としては、1年目は、ひょう害に加えアワノメイガの食害、カビ毒(フモニシン)に悩まされ収量は10アール330キロにとどまった。
2年目は、アワノメイガ対策として飼料用トウモロコシ(子実)に殺虫剤プレバソンが適用拡大となりドローン散布をしたことで、収量安定とカビ毒低減が実現。
3年目の今年は、雄穂抽出前のアワノメイガ防除を確実に行うことを中心に収量は同687キロと、3年間で最高になった。製品重量も、2022年の330トンが24年には714トンと倍以上に増え、安全な子実トウモロコシを飼料用に供給できた。
佐藤課長は「子実トウモロコシと水稲との刈り取り時期の重複」「帰化アサガオの除草」にもふれつつ、2024年度は、子実トウモロコシ後に小麦をは種し、来年度6月末か7月に刈り取り、その後に大豆という「3年4作」にチャレンジしていると述べた。大きな課題として、「大型機械体系の推進や経営メリットの整理」を挙げ、「今の体系ではこなせる面積が決まってしまうので、高速作業体系にし経営のメリットを整理しながら、適地適作を基本とした新たな農業へチャレンジしていきたい」と報告した。
配合飼料に使うための課題と解決
JA古川産・子実トウモロコシを入れた配合飼料を生産したJA全農くみあい飼料北日本事業部の浦田克博本部長は、「飼料原料の輸入依存には大きな課題がある。解決策の一つが、日本の田んぼで生産されるトウモロコシを配合飼料で使う取り組みだ。採算はこれからだが、価格が合わないからやらないということではない」と話す。
昨秋収穫の子実トウモロコシ約600トンを24年5月から石巻工場で配合飼料「さくらパワービーフ」に用い、JA古川管内の和牛肥育生産者中心に使われている。浦田部長は、保管や輸送、税関上の課題にもふれつつ、「もっと量が取れてくれば養豚等への活用も検討する」と説明した。
日本農業、伸びしろしかない
農研機構東北農業研究センターの篠遠善哉主任研究員が「実証試験を100ヘクタール規模で3年間できたこと自体奇跡的。日本農業には伸びしろしかなく、現場が一体となって底力を出せば前に向かっていける」と総括した(要旨別掲)。
耕種農家と肉牛農家から
耕種農家を代表し、JA古川大豆・麦生産組織連絡協議会の鈴木正一会長は「当初は収量が心配だった。台風が来られたらアウトかなと思ったが、アワノメイガとカビ毒でたいへんショックを受け、毎日圃場を見守ってきた。2年目は雑草に見舞われたが、『畜産農家を助けるためにやるんだ』と生産者で話し合った」と振り返り、収量アップへの抱負を述べた。
肉牛農家からは、JA古川肉牛部会の千葉孝幸部会長が、「高騰する飼料を少しでも安定した値段で、という思いから始めた。地元産の子実トウモロコシは、香りが良い。牛の食い込みもよく、好んで食べてもらった。今まで飼料用米を入れて、米の力でおいしくなったと感じたが、国産トウモロコシを入れていっそうおいしくなった」と胸を張った。
3年間の完結は「消費者の評価」
3年間の実証試験で連携したJA古川肉牛部会の千葉孝幸部会長(右)と
同大豆・麦生産組織連絡協議会の鈴木正一会長
実証試験を補助した農水省東北農政局生産部畜産課の西川悠貴課長補佐は「素晴らしい結果が出たので全国に発信してほしい。仙台牛の販売が、消費者が生産現場を知るきっかけになれば」と期待を込めた。
JA古川の大友學専務が、「半信半疑のスタートで厳しい道のりだったが、ここまで来られた。子実トウモロコシを給与した牛を食べていただいて、消費者のみなさんに『おいしい仙台牛です』と言ってもらえることが、3年間の実証実験の最終完結だ」と述べた。
発表会の後、実証試験総括研修会とJA古川産子実とうもろこし給与『仙台牛』試食・お披露目会が開かれた。
JA古川産子実トウモロコシを与えて育った仙台牛
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