「古川モデル」子実トウモロコシから水田輪作へ JA古川、3年間の実証実験総括 農研機構東北農業研究センターの篠遠善哉主任研究員2024年11月28日
JA古川が2022年から取り組んできた子実トウモロコシ実証実験が完結した。JA古川が11月25日に開いた実証試験総括研修会で農研機構東北農業研究センターの篠遠善哉主任研究員が、3ヵ年にわたる実証試験の総括を述べた。
「子実トウモロコシから水田輪作への展開が持続的な地域農業の展望を拓いた」と話す農研機構東北農業研究センターの主任研究員・篠遠善哉さん
みなさまとはこの3年間、実証実験に一緒に携わり、この日を迎えられて、生産者のみなさまのご尽力に感謝します。何よりも生産者の方々、この3年間いくら実証試験とはいえ100ヘクタール規模で3年間続けたのは、奇跡といっていいくらいすごいことです。
子実トウモロコシの認知度向上
100haという規模に大きなインパクトがあり、JA古川・地域一丸となって取り組んだことから、全国の土地利用型農業から注目されてきました。
この試験が与えたインパクトは、まず、子実トウモロコシの認知度向上です。水田関係者では「もう知らない人はいない」というレベルまで来ました。みなさんの取り組みは全国の水田農家の輪作の幅を広げました。
アワノメイガ対策も「100haの力」
アワノメイガ対策はこの規模でやったからこその結果、相当のスピード感で、飼料用トウモロコシ(子実)に殺虫剤プレバソンの適用拡大がなされました。全国のトウモロコシ生産者とも恩恵を一緒に共有することができたと思います。
構築連携「古川モデル」に
生産から配合飼料までを通じた地元の仙台牛への給与という新しい取り組みがこの地で始まったのも大きな成果で、一連の取り組みを含め、まさに「古川モデル」として全国に発信できると考えています。
高速作業体系の導入
この3年間の取り組みの中で、確実に、高速作業体系が目にふれる機会が増えたと思います。たとえばスタブルカルチですとかバーチカルハローです。これも子実トウモロコシに取り組んだ成果です。
大豆と違って楕円形の種であるトウモロコシは、播種量が大豆の半分なので、少ない播種量をきちっと蒔く。今年から本格的に真空播種機も導入されました。子実トウモロコシの取り組みはトウモロコシに限らず、大豆や水田輪作全体の技術にいい影響を及ぼしたと思います。
広がった乾田直播
稲においては乾田直播の導入がこの2年余りで急激に広がっています。スタブルカルチ、バーチカルハロー、真空播種機やグレンドリルなどを組み合わせることで、畝作りも自ずと乾田直播にだんだん目が移っていったんではないでしょうか。
これまではどうしても、「豆後の稲」は倒れてしまう、「稲後の豆」は湿害でいいものが取れないということで、輪作がしたくてもできないという課題があったかと思います。
乾田直播後の大豆は作りやすいですし、大豆後でも稲が倒れづらい。トウモロコシを導入することで、稲づくりも幅が広がってきました。子実トウモロコシをきっかけに輪作全体へと取り組みが拡大したのがこの3年間であり、それが今後につながると考えています。
「ゴール」は地域が続くこと
どの地域も、例外なく人が減ってきます。自ずと経営体は規模が拡大します。少ない人でどうやっていくか。どこの地域も一緒の課題を抱えています。そんな中にあって、みなさんはたまたま子実トウモロコシに出会われた。
ゴールはトウモロコシをやることではなく、地域がずっと続くことです。乗れる限りロータリーに乗っていただきながら、乾田直播やトウモロコシ、大豆など高速作業体系を組み合わせることで、お持ちの機械と、値は張るけど高速作業できる体系をうまく組み合わせることが重要です。
圃場が大きくなれば、その上に乗る「農業の形」もどんどん変わっていきます。子実トウモロコシや乾田直播で培われた技術や輪作をツールにして、次の方々につなげられる地域農業を築いてほしいと思っています。
(文責・編集部)
子実トウモロコシ
麦
大豆
水稲乾田直播
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