内部統制と働きやすさは両論 コンプラでトップセミナー JA全中2024年11月29日
JA全中は11月28日、都内で令和6年度全国JAコンプライアンス実践セミナーを開いた。内部統制、コンプライアンス、不祥事やハラスメントの防止について報告と講演を受け、JAの信頼を守り職員のやりがいを生み出す役員のリーダーシップを学んだ。
セミナーで主催者であるJA全中の山中徹会長は、「内部統制と職員の働きやすさ、やりがいは車の両輪で、リーダーのみなさんは教育、指導、啓発の先頭に立ってほしい」と呼びかけた。
JA全中の山田秀顕常務理事がJA経営を取り巻く情勢や内部統制強化の取り組みを報告。第30回JA全国大会決議を踏まえた取り組みとして、経営戦略と人材戦略の連動をはかり、エンゲージメントを高めていくことが重要だと説いた。
この後、専門家ら4氏が講演した。
大森一幸公認会計士は、金融機関等の不正事案とその問題点を具体的に紹介し「身の丈に合う効果的・効率的な内部統制」を提唱。「人は誘惑に弱い。内部統制は不正を未然に防ぐことで職員を守ること。構成員の『誇り』こそ、最大・最強の内部統制です」とJAへの期待を込めた。
農水省経営局協同組織課の菊地護経営・組織対策室長は、系統内の事案と政府・農水省の対応を解説し、「コンプライアンス・ガバナンスの確保と職員の働きやすさ、働きがいのある職場環境が必要」とした。あいち知多農協を好事例として紹介。「みなさま方のJAの実態に合う取り組みを」と求めた。
高仲幸雄弁護士は、多様な事業を地域密着で営むJAの特質にもふれつつ、ハラスメントの問題と対策を説いた。「知識はネットにかなわない。求められているのは判断力と考え方だ」とし、「自分の娘が言われた嫌なことは、女性職員に言わない」「(職員誰某は)『積極性がない』と決めつけず、『その人なりの合理性』を意識する」、カスタマーハラスメント事案への上司介入のタイミングなど、豊富な実例を挙げながらアドバイスした。
裁判官出身の中島肇弁護士は、多数の不祥事事案調査に携わってきた経験から、「商品ごとに異なる商慣習を知らず帳簿だけ見ていると不正を見逃す」「公益通報のリスクは常にある。抑えるのではなく内部統制に反映させては」といった教訓を説き、「『挑戦による失敗を許す。しかし不正は隠蔽しない』というリーダーシップが求められている」と語った。
参加者からは、自身のJAの現状や取り組みを踏まえた質問が出され、経営・組織基盤強化の鍵となる課題を「自分事」として深める場となった。
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