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【現地レポート】被災者支援に奔走するJAのと(2)「先が見えない不安」2024年12月10日

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農業協同組合新聞は4月20日号で、元旦に発生した能登半島地震で被災者支援に奔走する能登農協(JAのと)について現地取材した村田武本紙特別編集委員(九州大学名誉教授)のルポを「真の復旧なお途上」と題して掲載した。ところが、9月には県や国の復旧事業の遅れを天が罰するがごとき豪雨土石流災害が能登半島を襲った。以下は、豪雨で深刻な「二次被災」を被った能登に、11月18日、JAのとを訪ね、穴田睦実審査役(災害復旧担当)とともに、森川斉理事(災害対策室長)の運転する車で、とくに被害の大きかった町野地区(輪島市の東端、町野川流域)を中心に被災地に入り、農協本店で中島正明専務理事、浜中勝則営農部部長からも話を聞いた村田武九州大学名誉教授の取材報告である。

【現地レポート】被災者支援に奔走するJAのと(1)「地震直後より深刻」から続く

「先が見えない不安」

刈り取れなかった稲

刈り取れなかった稲

中島 農家にとって最大の不安は、豪雨災害後の深刻な農地被害の復旧がどのように行われるのか、令和7年に自分の水田は稲の作付けができるのかどうか、つまり、「先が見えない」という不安でした。というのも、元旦の地震で被災した農地の復旧工事計画が、すぐに着手されず稲刈り取り後の10月以降だとされており、復旧工事の遅れに農家の多くが危惧していたからです。10月23日に、農協は担い手経営11戸との意見交換会を主催しました。県の奥能登農林総合事務所は、そこでの復旧工事計画を提示してほしいという生産者の声に応えてJA管内の支店単位で「農地復旧説明会」を開催し、速やかな応急復旧工事を含めて農地被害のレベルに応じた3段階の復旧計画を提示しました。

浜中 県の提示した、3段階復旧工事計画の「小規模被害」の約150haは、土砂堆積が5cm以内と薄く、流木も散乱程度で、土砂などの除去、用水などの確保の応急復旧工事または直営施行をおこなえば、来年度には営農再開が可能という農地です。「中規模被害」の約150haは、畦畔は残っているものの土砂・流木が大量に堆積しており、それらの除去と農地復旧に1~3年程度が必要であるというものです。「大規模被害」の約100haは、河川氾濫で水田が原型をとどめない状態であり、河川と農地の復旧に少なくとも4~5年以上必要です。

容易でない農地復旧

土砂を大量に被った農地

土砂を大量に被った農地

穴田「中規模被害」「大規模被害」農地合計約250haの復旧は容易ではありません。「中規模被害」の農地復旧も、すべてではありませんが農地の大区画化が求められます。「大規模被害」農地の場合は、河川が流路を変え、農地が原型をとどめていないので、再度の基盤整備事業が不可避です。政府はようやく10月25日の閣議で、能登半島豪雨など全国各地で甚大な被害になったことから、激甚災害に指定してくれたので、農水省の適用事業として「農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置」として、農地、農業用施設、林道の災害復旧事業で、通常の国庫補助率を86%から96%に引き上げてくれます。しかし、基盤整備事業にともなう経費の4%は地権者の負担です。問題は、再度の基盤整備事業が必要な被災農地の過半は、耕作できない小規模高齢農家が担い手経営に耕作を依頼していることです。

この農地復旧計画を原案として、農協は県・市町と一体で、集落生産組合(460集落)に入り、復旧事業についての合意形成を図っていきます。賃貸されている農地の再基盤整備事業費の自己負担分をすべて地権者にもたせるのはむずかしいでしょう。この問題を含めて、農協は知恵を絞りたいと考えます。

受委託欠かせず

浜中 二重の被災のなかで、とくに住宅損害を被った高齢の小規模農家の相当数の離農は抑えがたいでしょう。農地復旧の合意経営には、被害の少なかった農家による復旧農地での農作業受託の促進が必要であると考えられます。また、復旧農地でのカボチャやブロッコリーの栽培など畑地的利用を奨励することで生産農家の意欲を刺激し、能登地域農業の多様化を積極化することも考えたいですね。

〈取材を終えて〉
土砂や流木が積み重なった農地に加えて、地震で壊れた大きな農家住宅がそのままのなかに豪雨土石流で崩された農家や倉庫が無惨な姿をさらしている奥能登の被災現場に入った。二重災害に対処して、先が見通せない組合員を励ます農協の苦労を見せてもらった。

提案をひとつ。膨大な損壊住宅廃材、それに加わった土石流で押し流された流木、これはいずれも木材チップ化することでバイオマス発電の燃料にできる貴重な地域バイオマス資源である。災害復旧事業のなかに、地元バイオマス資源を活用するバイオマス発電所の設置を取り込むことはいかがであろうか。

豪雨による山崩れの多発は、能登半島のみごとな「あすなろ林地」が、間伐が行き届かず荒れてきたことも要因のひとつではなかったろうか。能登に木材チップ工場とバイオマス発電所を開設することで、適切な間伐も推進できるではないか。自治体に設置を求め、管理運営は農協が担うバイオマス発電所が奥能登にあってもよいのではなかろうか。(村田武)

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