豊かな食届ける役割胸に(2) ホクレン(北海道)会長 篠原末治氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年12月24日
「農村ユートピア」を追い求める「士幌イズム」に学び、農業・農村の活性化を進めるホクレン(北海道)会長の篠原末治氏。JA事業やその方向性などを聞いた。聞き手は文芸アナリストの大金義昭氏。
販売・購買・営農支援 三位一体で
ホクレン農業協同組合連合会(北海道)会長、(一社)全国農協観光協会会長 篠原末治氏
長期計画で目標を共有
ホクレンには中期計画(3カ年)がありましたが、長期計画はなかった。「Vision2030」は「農村ユートピア」を追い求める「士幌イズム」に学び、北海道に農業・農村の「理想郷」を実現すべく策定しました。中期計画は現在から将来を考えるフォーキャスト、長期計画は望ましい未来から現在を考えるバックキャストでシナリオをみんなで共有しようと、会長就任の1年目に提案して部門横断で経営職層の部長以上が集まる会議を開催し、1年かけて練り上げました。ホクレンは今、「Vision2030」と中期計画とを車の両輪に、「販売・購買・営農支援」の三位一体で走っています。
コロナ禍もあり、会議はリモートを併用して支所長・支店長にも加わってもらいました。理事会の決定事項が以前は1カ月くらい後に紙で回覧されていました。それでは間に合わないと、理事会もWebで傍聴できるようにしました。職員も経営職層が経営者と同じ考え方を持たないと事業は大成しません。
大金 職場風土や文化が変わった?
篠原 変わりつつあります。今までは組織・事業が縦割りで「隣は何をする人ぞ」でしたが、そこに横串を入れ、総合力を最大限に発揮したいと考えています。また、DXの取り組みにより、旧来の紙ベースの仕事をデジタル化し、スカイツリーくらいの高さの紙を削減しました(笑)。組織風土の変革の一つの手段としてデジタルシフトに取り組みながら、30年近く使ってきた基幹システムの再構築に向けた大型投資を進めています。
大金 担い手や労働力の確保など国内農業の課題が山積していますが。
篠原 世界人口は増えている。一方で、自然災害や国際紛争が頻発しています。食料生産の安定がますます重要になり、国内でも食料に関する考え方が変わってきました。海外から食料が入ってこない可能性も見据え、改正基本法の下で基本計画も練り直されている大事な時期です。その中で北海道をどう位置づけるか。食料自給率223%の北海道の役割は大きいと思っています。ホクレンは、道内102農協(うち総合農協が97)の連合会であり、生産・加工・流通・販売など多角的な事業を総合的に展開し、全国に豊かな食を届ける役割を担っています。
生産現場に目を据え、暑熱対策やホクレンGISなどスマート農業などにも力を注ぎ、JA全農の力を借りて電気事業も始めました。酪農家を応援しようと「ミルポテっと」という、ミルクを味わうナゲットも開発しました。農畜産物に付加価値を付ける「加工」にも力を入れています。なんにせよ、北海道だけでなく全国の系統組織と協力し、同じ考え方でやっていくことが大事だと思います。
大金 そのオープンマインド・スタンスが心強い。(笑)
「継続は力」信じて前進
篠原 コラボすれば、できることはグンと広がりますから(笑)。いずれにせよ、基本は「自助・共助・公助」の取り組みです。先ずは生産現場で「自助」努力を惜しまない。その上でJAを拠り所にした助け合いの「共助」があり、消費者や実需者、地域住民の皆さんとの連携があり、必要なことを国に求める「公助」がある。
また、JA士幌町では「3分の1ルール」と言っていましたが、利益が出たら、先ずは組合員に3分の1を返し、次に頑張った職員に3分の1を返し、残る3分の1を内部留保して将来のリスクに備える。内部留保がないと、いざという時に組合員を守れません。
ホクレンはそのために販売・購買の取扱高2兆円を目ざし、取り組んでいます。「継続は力なり」でやり続けていけば、目標は必ずかなうと信じています。
【インタビューを終えて】
握手したら、大きく柔らかな手で包み込まれるように温かだった。「敬天愛人」という言葉が思い浮かんだ。あの西郷隆盛が好んだ言葉である。篠原さんは長野県からの移民の末裔だが、巨躯といい、穏やかな雰囲気といい、「西郷さん」のイメージに重なった。泰然自若として「覚悟」を秘めた志の高さ。男が男に惚れるエピソードが身辺には山ほどありそうだ。協同組合の連合組織として北海道を代表する巨大な経営体をけん引する「風雲児」の来歴からは、十勝の士幌を舞台にした黎明期の巨星が綺羅星のように連なって浮上してきた。朔北の大地には、厳しいけれどもそれに勝って優しく人を育む風土がある。その風土を、篠原さんはみずから間違いなく体現している。(大金)
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