命を守り地域をつなぐ力が輝く 新春特別講演会 農協協会2025年2月5日
(一社)農協協会と農協研究会は2月4日、東京都内で新春特別講演会を開催した。JAグループ関係者など約150人が参加した。
今年のテーマは「混沌(カオス)の中に確かな光明を見出す 持続可能な社会に向けた3つのメッセージ」。
「無実だから無罪は当たり前」 命の闘い58年
講演する袴田ひで子さん
最初の報告者は、権力による冤罪に抗して袴田巌さんを58年にわたって支えた92歳の袴田ひで子さん。
事件が起きたのは1966年。ひで子さんは33歳。当時、表情や態度がいつもとまったく変わっていない3歳下の弟・巌さんを家族は「人を殺めたはずはない」と信じ、関係がないと思っていたが犯人にさせられた。その後の裁判を傍聴した人から、この裁判はおかしい、との声をかけられ味方もいると思ったが、68年に死刑判決が下る。母は病にかかり68歳で急死、父もその半年後に逝去した。
兄弟は6人。ひで子さんは「兄弟は何とか助けなければならない」と思って無実の訴えを続けた。1980年に最高裁で死刑確定。「こうなったら何でもやると巌を励まし闘いました」。
拘置所への差し入れ、面会は欠かさず続けたが、巌さんがひで子さんに会おうとしなかった時期もあったという。それでも「面会できようができまいが毎月行っていました。行かなければ家族は見捨てていないことが伝わらないからです」。
2008年の第2次再審請求に対して2014年に静岡地裁が再審開始決定と死刑と拘置の執行停止が行われた。48年ぶりに釈放され、昨年9月静岡地裁は
無罪判決を下す。
「無実なのだから無罪になるのは当たり前と思って闘ってきました。でも巌だけ助かればいいという問題じゃない。冤罪被害者がまだたくさんいる。その人たちをお助けしなければ、58年闘ってきた甲斐がない」と再審法の改正や死刑廃止など課題は多いとして「まだ元気。これからも一生懸命がんばっていきたい」と笑顔で話した。
こども食堂は地域の寄り合い回復
2つ目の報告は全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長で東大先端研の湯浅誠特任教授。
こども食堂は昨年1年で1700増え全国で1万866となり中学校数を超えた。こども食堂の8割が利用者に制限はなく、3分の2が高齢者も利用している。
湯浅氏は「食べられない子どもたちための場という誤解があるが、子ども専用ではない。むしろ人と人とのつながりをつくるために、"子どもきっかけ食堂"といえる。昔の子ども会のような場所」と実態を説明した。
湯浅氏は、こども食堂が増えている背景に人口減少社会を挙げる。6人の人間が1人づつ全員とつながると「つながり」の数は15となる。これが1人減って5人になるとつながりの数は10に。1人減るだけだが、「つながり」は5減となる。
人口減で急速につながりが減っていくなか、つながりを作り維持するには子ども、大人、高齢者、さらには外国人といった属性を超えてつながることと、町内会、NPO、商店といった分野や領域を超えてネットワークをつくることだという。
実際に寺で開くこども食堂が増えているなど、地域のつながりを作るという昔からの機能を回復しようとしている例や、地方への移住希望者を地域の人々と結びつけようと開設している移住コーディネーターの取り組みや、行われなくなった寄り合いの新しいかたちとして復活させようと全集落でこども食堂の開設をめざす地域なども紹介した。
湯浅氏はヨコのつながりだけでなく、子どもから高齢者までというタテのつながりをつくるこども食堂の特徴にも着目し、「地域のことを考える大人を次の世代につなぐ」可能性にも期待した。
「いい会社」(社縁)を築き社会貢献
3つ目の報告は社員の幸せが会社の目的を掲げる長野県に本社を置く伊那食品工業の塚越寛最高顧問。会場では谷口信和東大名誉教授のインタビュー映像が流された。
同社は寒天の製造からスタート。その分野では後発企業だったため、さまざまな業界に寒天を売り込むことがニーズの発掘につながり研究部門に力を入れるようになり、人材も集まるようになった。
社員の幸せが会社の目的だとして、とくに製造工場の環境整備に力を入れてきた。寒天製造は水仕事だが、長靴ではなく運動靴で仕事ができる環境整備に努めた。そのほか社員からの声を聞き改善を重ねるとともに、売り上げ目標なども社員それぞれが考え、自己目標を立てている。
「自分たちで決めているから自分の会社だと思える」。
急成長より着実な成長をめざし、それを「年輪経営」と称している。「いい木材は年輪が詰まっている。会社も同じ、内実に沿った会社になっているか」などと塚越氏は話した。
講演会後は恒例の新春祝賀パーティが開かれた。
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