JAの活動:パラグアイの日本人
【パラグアイの日本人[4]】農協存亡の危機2013年4月23日
パラグアイ(パ国)の大豆のほとんどは搾油用で、シカゴ穀物相場を見ながら各農協の判断で巨大穀物商社に販売する。この大豆がどこで加工され、消費されるかは不明だ。
日系のフラム農協とピラポ農協は1978年、高値の好機を逃し、予定価格の3分の1以下で売ったことがあった。両農協とも理事が総辞職。ピラポ農協では執行部への不信感が頂点に達し、総会は紛糾。多くの組合員が脱退した。
また、収穫物保存サイロの建設でイグアス農協は存亡の危機に立った。当時は業者のサイロを借りていたが、その手間と費用から自前のサイロ建設借金の返済は可能と判断し、79年に建設に踏切る。ところが農地拡張は計画どおり進まず、記録的な異常気象の連続で減収が続き、借入金は2年後に4倍に膨張した。
この当時の南米各国の超インフレ、パ国経済の低迷による金融引締め策で、計画はさらに狂い、農協は窮地に陥る。加えて、大豆国際相場の高値好機を逸す、JICA(国際協力機構)のドル建て借金の高騰(10倍)と悪いことは続いた。
それでも、その後は豊作に恵まれ、初めは苦しんだドル高騰が次第に有利に作用し、農家も農協も立ち直ることができた。
その間、大型機械化への転換は新たな問題をもたらしていた。まず大雨による土壌流亡だ。だが不耕起栽培がそれを克服させた。収穫が終わると、耕起せず次の播種を行なう。
イグアス移住地の日本人2人がその播種機をメーカーに作らせ、83年に成功。それが全パに普及する。まさに農業革命だった。
大豆の病気では90年代にカンクロ病、2000年に入ってサビ病が蔓延。農薬等でコストが高騰した。一方で病気に強い品種の開発も進んだ。
頑固な雑草も次々に出現。高価な除草剤も開発されたが、耐性の雑草が出て、イタチごっこが続く。そのために離農した仲間もいた。雑草から救ったのが、04年に解禁になったGM(パ国ではランドアップ耐性から「RR」=ラウンドアップレディ)大豆だった。
「RRがあるから農業が続けられた」と振返る日本人農業者は、今も多い。
(写真)
2008年当時のイグアス農協の穀物サイロ
(食と農・環境ジャーナリスト(家の光協会OB 若槻武行)
(つづく=第5回(最終回)は5月上旬に掲載します)
【短期連載:南米パラグアイの日本人移住者】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(103) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(13)-2024年7月20日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(19)【防除学習帖】 第258回2024年7月20日
-
土壌診断の基礎知識(29)【今さら聞けない営農情報】第259回2024年7月20日
-
コメの先物取引は間違い【原田 康・目明き千人】2024年7月20日
-
(393)2100年の世界【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月19日
-
【'24新組合長に聞く】JA鹿児島きもつき(鹿児島) 中野正治組合長 「10年ビジョン」へ挑戦(5/30就任)2024年7月19日
-
冷蔵庫が故障で反省【消費者の目・花ちゃん】2024年7月19日
-
農業用ドローン「Nile-JZ」背の高いとうもろこしへの防除も可能に ナイルワークス2024年7月19日
-
全国道の駅グランプリ2024 1位は宮城県「あ・ら・伊達な道の駅」が獲得 じゃらん2024年7月19日
-
泉大津市と旭川市が農業連携 全国初「オーガニックビレッジ宣言」2024年7月19日
-
生産者と施工会社をつなぐプラットフォーム「MEGADERU」リリース タカミヤ2024年7月19日
-
水稲の葉が対象のDNA検査 期間限定特別価格で提供 ビジョンバイオ2024年7月19日
-
肩掛けせず押すだけで草刈り「キャリー式草刈機」販売開始 工進2024年7月19日
-
サラダクラブ三原工場 太陽光パネルの稼働を開始2024年7月19日
-
「産直アウル」旬の桃特集 生産者が丹精込めて育てた桃が勢揃い2024年7月19日
-
「国産ももフェア」直営飲食7店舗で25日から開催 JA全農2024年7月19日
-
「くまもと夏野菜フェア」熊本・博多の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年7月19日
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(1)地域住民とともに資源循環 生ごみで発電、液肥化2024年7月18日
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(2)大坪康志組合長に聞く 「農業元気に」モットー2024年7月18日
-
【注意報】野菜・花き類にオオタバコガ 栽培地域全域で多発のおそれ 既に食害被害の作物も 群馬県2024年7月18日