JAの活動:パラグアイの日本人
【パラグアイの日本人[5]】農地の不法占拠2013年5月7日
パラグアイでは昔から「土地なし農民」が原始林や農場を不法占拠する事件が起こっていた。それは、日本人移住地も例外ではない。1989年、イグアス移住地では1400人がJICA(国際協力機構)の未開地を占拠した。
武装し警官の命令など聞かない。結局、日本国大使館とJICAが移住地の外の1500haの代替地を与えた。当時の農協役員はこの解決法に反対した。案の定、彼らは代替地を売り払って、どこかへ消えて去った。農協では「日本人は甘く見られている」と警戒してきた。
イグアスは2011年9月にもまた、不法占拠事件が起こる。今度は組合員0さんの畑など。首謀者は当時のルゴ大統領の従妹だった。
日本人移住者は占拠地に通じる市道に大型農機や重機を並べ、彼らの出入りを止め、交代で24時間の監視態勢を組む。誰もが「これを許したら、日本人全てが追い出される」という危機感があった。
この間、県知事、近隣の市長や農協も応援に駆けつけた。国道に大型農機を並べ、大決起集会も開いた。日本大使館はパ国政府と交渉。
畑では農協の仲間も協力し、大豆の播種を強行。この強い反撃で占拠者は畑からは撤退して行った。
パラグアイでは土地所有の不公平が著しい。「大農」はわずか数パーセントでも全農地の3分の2を所有している。日本人のほとんどは「中農」。その土地は59年の「日パ移住協定」に基づき、正当に購入したものだ。
ルゴ前大統領は神父で貧困層を救済すると公約したが、それには何の手も打たず、不法占拠や犯罪行為を黙認してきた。不法占拠はその後も各地で起こり、某国会議員の私有農地では警官隊との銃撃戦となる。
死者17人、怪我80人以上を出し、国会は一連の騒動を黙認した大統領の弾劾決議を圧倒的多数で可決。ルゴ氏は決議を受入れて辞任した。
日本では一部の新聞が、米国に批判的な南米某国大統領の「クーデター」コメントをそのまま伝えた。それは明らかに違う。弾劾決議や辞任の様子はテレビで中継され、ほとんどのパラグアイ国民も、日本人も正当で平和的・民主的な政権交代と受け止めている。「パラグアイの政治はまだ『健全』を保っている。これから、良くなると期待したい」と、ある日系農協組合長は語っていた。
(写真)
不法占拠に移住者は大豆の播種で対抗。
(食と農・環境ジャーナリスト(家の光協会OB 若槻武行)
(おわり)
【短期連載:南米パラグアイの日本人移住者】
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