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JAの活動:JA 人と事業

【JA 人と事業】第4回 高峰博美・熊本県JAあしきた代表理事組合長に聞く2013年5月15日

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・戦後の「農協麺」が原型
・「接遇」で九州一目指す
・研修は役員が垂範率先
・異業種とネットワーク
・JAマークの全国展開を
・経営に透明性と先見性
・「成功の習慣」を身に付ける

 独特の6次産業化を進めている熊本県のJAあしきた。JAの地域・事業の範囲に捉われず、さまざまな異業種と連携し、それぞれの特徴・強味を生かした事業を展開している。高峰博美組合長に、その考えと取り組みについて聞いた。

seri1305151101.jpg――農業・JAとのかかりを聞かせてください
 葉タバコ農家の跡取りで、高校卒業して農業を継ぐ気持ちで、アイリスなどに挑戦していましたが、まだ若いので、いろいろな経験が必要だと言われ、先代の組合長に声を掛けられて農協で働く機会を得ました。
 農協では、ほとんどの部署を経験しました。学識経験者の理事が必要だということになり、53歳のとき専務に就任しました。その間、熊本県経済連の専務などをやり、8年前にJAあしきたの組合長を引き継ぎました。

◆戦後の「農協麺」が原型

 この間、先代の坂本(栄吉)組合長には、多くのことを教えられました。戦後、まだミカンが導入される前ですが、産業らしいものがなにもないこの地域で、麺類の製造・販売を始めたのが先代の組合長です。農家は農作物をつくるだけでなく、売って出なければだめだということ始めたと聞いています。当時としては珍しい、農協による加工・販売事業でした。これを九州管内や生協などに「組合麺」、つまりJAマークの商品として納めるようにしたのです。
――それが今のJAの取り組みにつながっているのですね。
 そうです。JAあしきたの6次産業化・農商工連携の取り組みの原型はそこにあります。私はそれについていくなかで、商品づくりや販売のノウハウなど多くのことを学びました。それが現在のJAあしきたのデコポンゼリーをはじめとする多くの商品を開発し、毎年モンドセレクション(食のオリンピック)への出品で金・銀賞などに入賞するなど、名実ともに認められた商品開発につながっていると考えています。
――さまざまな新規事業や仕事にやり方に挑戦されていますが。

◆「接遇」で九州一目指す

 常に新しいものを取り入れ、変えていこうという気持ちを持っています。購買を担当していたころは、展示会のやりかたや会場のレイアウトなど、新しいやり方をどんどん取り入れました。支所に勤務していたときには、本所や役場を巻き込んだ農協祭を初めて企画しました。これがいまのJA祭の始まりです。
 そのころから思っていた目標の一つが、なにかで注目されるJAにすることです。正組合員4500人ほどのJAですが「小さくてもキラリと光るJA」をめざしています。そのメインに「接遇」の向上を掲げました。
 個人的な体験ですが、小学高学年に新聞配達していたとき、「おはようございます」といってポストに新聞を入れても、返事を返さなかった無愛想なおやじさんがいましたが、あるとき突然、むこうからあいさつを受け、感激したことがあります。仕事でも同じです。JAの事業で大事なのは、お客さまのニーズに応えることですが、そのためには、自分がして欲しいことを相手に対して実践することです。
 この考えで、24年度のテーマに「接遇・九州一を目指すJAあしきた」を掲げています。県でなく九州一としたのは、全国を視野に入れて、という気持ちを含んだものです。
――それを役員が先頭に立って実践されました。

◆研修は役員が率先垂範

 役員が率先垂範です。接遇の研修では、まず役員・部長が受講しました。コテンパンにやられましたよ。それから、職員に対する言葉掛けが変わり、職場の雰囲気がよくなりました。いま、常勤役員は朝7時半出勤です。5つの支所があり、毎週月曜日の7時半から定例会議を開いていますが、役員と本部長が分担して出席します。また早朝の勉強会があるとき朝6時からです。昼や終業後の会議は来客や私用などで、出席できなくても、早朝に予定を入れることはありません。会議の出席率も高く能率もあがります。
――6次産業化・農商工提携で、さまざまな事業を軌道にのせていますが、その原動力はどこにありますか。
 6次産業化は他力本願ではできません。JAの事業そのものだと考えて取り組んでいます。JAあしきたは甘夏ミカン、デコポン、辛みの少ないタマネギ(「サラたまちゃん」)、それに「あしきた牛」が主産物で、これらはすべて加工などで付加価値をつけ、販売しています。

◆異業種とネットワーク

 ただ6次産業化は、それだけではだめです。地域の商工業者や大手の流通業、消費者団体などを巻き込んで取り組むべきものです。JAあしきたは農産物直売ネットワークを設けています。JA、生協、量販店、卸売会加工製造業から、行政、学校、メディアなどあらゆる業種、組織・団体が入っています。こうした組織・団体とさまざま面で連携し、JAのあしきたのファンになってもらうのです。
 例えば、加工品はJA自体が製造するのでなく、地元の加工業者に委託します。製品はJAでも販売しますが、加工業者のルートでも販売してもらいます。JAのファーマーズマーケット「でこぽん」では、こうした加工業者の商品も販売しています。異業種とのコラボレーションです。それぞれ得意分野を生かすことができ、あらたな設備投資も抑えられます。JAも地元企業もともに潤うようにしなければ、地域振興とはいえないでしょう。
 コンビニのセブンイレブンとも提携しています。当初、ATM(自動預け払い機)の設置で考えたのですが、コンビニには365日営業という強味があり、JAは地元の信頼と地域での営業のノウハウがあります。コンビニの商品をJAのらいふサポート事業による宅配も行っています。こうしたコラボレーションで新しいビジネスモデルが生まれます。当初、市場リサーチしたコンビニは出店を渋ったのですが、今では、地域でのJAの力におどろいています。
 卸売市場に対しては「丸ごと販売」を仕掛けています。例えば「サラたまちゃん」は青果だけでなく、それを加工したドレッシングやギョウザなども一緒に販売するのです。

◆JAマークの全国展開を

 日ごろはがゆい思いをしているのですが、こうした連携による6次産業化を展開することで、JAマーク商品の全国制覇ができないものでしょうか。JAマークは安全・安心のマークです。全国連、県連、JAが内部の事業としてのみ取り組んでいては進歩がありません。
――次々事業を取り入れていますが、職員のモチベーションはどのように高めていますか。

◆経営に透明性と先見性

 JA経営は健全性はもちろんですが、透明性と先見性が求められます。ファーマーズマーケットを作るとき、職員や組合員の代表を連れて、先進のJAにじ(福岡県)に何度も視察に行きました。本当に自分たちでやろうという気になってもらうためです。
 いま、万田酵素の利用を考えており、広島県因島にある本社を役職員、組合員が何度も視察しています。新しい事業に取り組むにはリスクもありますが、必ず成功させるのだという本気度が重要です。本気であれば相手もそれに応えてくれます。また仮に行き詰っても、その言い訳をしたり、あきらめたりするのでなく、どうしたらできるかを考えることが重要です。そうすると必ず次の活路が見つかるものです。こう考えると、何事も「失敗」で終わってしまうことはないはずです。

◆「成功の習慣」を身に付ける

 これは「成功の習慣」をつくることでもあります。そのためには日々、自分の行動をチェックするよう職員を指導しています。私はこれを「人生が楽しくなる基本的な行動計画」といっていますが、朝のあいさつから始まって、余裕のある出勤、一日の記録と反省など、それぞれ年、月ごとの目標をたて、それをチェックすることです。これによって、考え、行動する習慣が身に付きます。その時は効果が見えなくても、習慣として継続すると、必ず成果が出てきます。

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