JAの活動:JA 人と事業2014
【JA 人と事業2014】伊藤茂・JA松本ハイランド代表理事組合長 生産者組織育て協同活動強化2014年9月26日
・部会組織軸に総合食料基地に
・消費地の販促女性職員参加
・モデル設けて農家組合育成
・指導者育成へ「大学」設立
・災害時の支援はJA間提携で
JA松本ハイランドは、平地の少ない長野県では、松本平野という恵まれた環境にあり、米のほか果樹、野菜、畜産などを生産する食料の総合供給産地である。品目別の生産者部会や農家組合など、強固な組合員組織がJAの事業・運営を支えている。中でもJAの女性組織で構成する「女性参画センター」は、食農教育活動の指令塔として重要な役割を果たしている。組合員の組織活動に力を入れる伊藤茂組合長に聞いた。
女性の力「参画センター」で発揮
◆部会組織軸に総合食料基地に
――どのような地域農業をめざしていますか。
JA松本ハイランドは様々な農産物を生産する食料の総合供給産地を目指しています。野菜、果実などを年間通じて供給し、生産者の安定した収入を確保したい思いです。そのために必要なのは生産者の組織で、管内には数多くの組織があります。生産者の部会組織が、それぞれの特色を出しながら、生産から販売まで、JAの部会担当職員と一体となって活動しています。
水稲だけでも稲作連絡協議会や水稲採種部会、ライスセンター連絡協議会、水稲共同育苗施設連絡協議会、有機低農薬米研究会、稲作経営研究会、ほかに野菜、果実、畜産、直売など23の生産者部会があります。生産・販売計画、視察研修、選果所の運営など、それぞれ独自の活動を展開しており、これが農協の組織活動の大きな支えになっています。
また「90を過ぎても気にする中国産」の川柳もありますが、安全で、安心な、信頼される、おいしい農畜産物の生産が、私どもJAの基本であります。全品目・全生産者を対象に、栽培履歴の記帳・確認と、生産者GAP(農業生産工程管理)の継続を進めて参ります。
(写真)
伊藤茂・JA松本ハイランド代表理事組合長
◆消費地の販促 女性職員参加
――組合員組織では女性部・青年部が頑張っていますね。
青年部は「みどりの風プロジェクト」という若い男女の出会いの場を提供する取り組みを行っています。常勤役員になるときの公約だったのですが、農業に関心のある女性に呼び掛け、3?5坪の「マイガーデン」の園主になってもらいます。5月から年内に6回開催し、青年部員の助けを借りて農産物を育ててもらいます。
全国から女性が集まり、8年間で22組のカップルが誕生しました。農業者の高齢化は進んでいますが、スイカやリンゴ、ネギなどの主要な作目で比較的若い農業者が活躍しており、青年部の活動に期待しています。
もちろん「みどりの風プロジェクト」には、女性部も協力し、郷土料理を作ったり、農村の生活を紹介したりサポートしています。
女性の活動に関しては、平成20年に誕生した「女性参画センター」が大きな役割を果たしています。JAの組織運動と事業運営に女性が参加・参画しやすいように、5人の女性理事を中心に女性部や助け合い組織、農家組合のくらしの専門委員など女性の活動に係わる組織を中心に、さまざまな活動を企画します。
「よい食パク博」はその一つです。年1回、生産者、消費者、地域の住民が参加し、女性部が野菜のおいしい食べ方を紹介したり、子どもを含めた参加者が自分でおにぎりをにぎったり、さらに牛乳絞りなど、農業や地産地消をアピールするイベントとして定着しています。参加者は年々増え、今年は850人。将来を担う子どもたちに食べ物や農業のことを知ってもらうよい機会だと思っています。
「美味しさとどけ隊」も活躍しています。女性参画センター・JAの女子職員による農産物販売促進活動で、信用・共済事業の担当でも、JAの職員である以上、地域の農業や農産物のことを勉強してほしいという思いから始めました。3、4人のチームで、地元のほか東京、大阪、神戸などで店頭販売に取り組んで頂いています。
ワカメやウドやネギなどを、味噌・酢・砂糖・酒などで混ぜ合わせる事で、「和えもの」と言いますが、器の中でこれらが混ぜ合わさって、ひとつの風味をかもし出します。「おいしさ届け隊」は若い女子職員と、少し年を重ねた女性参画センターの皆さん、メンバー全員がルールを守り、相互理解を図りながら、「協調と、協力」し、一つのルールのもとで一緒に行動しながら、相互理解を深めることで、いい味を出しています。
◆モデル設けて農家組合育成
――地域の協同活動を担う農家の組織があり、JA松本ハイランドはこの農家組合がしっかりしています。どのような支援をしていますか。
毎年、1支所1つの農家組合を選び支援しています。326の農家組合のうち151組合が農家組合活動をしており、今年は40のモデル組合を選定しました。3年間で15万円支援し、年々希薄になる集落内のコミュニケーションを促し、連帯感を育てています。
活動は自由で、高齢者による注連縄(しめなわ)づくりや、共同で栽培したそばでそば打ち大会、親子で野菜づくりなどさまざまです。集落内の人が集まって一つのことをする事に意義があります。国は評価してくれないのですが、こうした活動はJAにしか出来ないのではないでしょうか。少しでも地域活性化につながればと期待しています。
◆指導者育成へ「大学」設立
JAの財産は組合員であり職員です。そしてJAの良さ、強みは親しみやすさにあると思います。これが最近は希薄になっているとも感じますが、JA松本ハイランドでは今年度、「JA松本ハイランド夢あわせ大学」を開校しました。
これまであった高齢者の生きがいづくりの「はつらつ大学」、若い既婚女性の「若妻大学」、全組合対象とする講演会の「組合員セミナー」、職員のリーダー研修の「人づくり塾」などを一本化したものです。それぞれを大学の「学部」として位置付け、新たに農協運動を牽引するリーダーを養成する「協同活動未来塾」を設けました。
私の好きなことばに「人生に特効薬はない。1つ1つの積み重ねの上にしか、花も実もならない」がありますが、常日ごろの組合員、職員間のつきあいが大事です。それには一定の見識をもっていなければなりません。大事なことは会話による相方のキャッチボールであり、一方的に話しても返事が返ってこなければ意味がないでしょう。キャッチボールによって組合員と職員が同じ目線でものを見て共感することができます。それが組合員への最高のサービスだと思います。
◆災害時の支援はJA間提携で
――宮城県のJAいしのまきと姉妹協定を結んでいますが、どのようなインパクトがありましたか。
JAいしのまきとは、同JAの矢本地区女性部と当JA女性部の交流がきっかけです。スイカや米、海産物など互いの特産品の販売や、職員相互の研修訪問などを重ねて、昨年12月姉妹提携を結びました。
当農協管内はこの冬、記録的な豪雪に見舞われ、約1200棟のハウスが倒壊する大きな被害を受けましたが、この時も支援にきて頂きました。そのお礼を兼ねて当JAからも8月?9月にかけて農業の復旧支援に行きました。一過性でなく末永い付き合いをしたいと思っています。また職員も他の地域の農業やJAを見る事は大変勉強になりましたと、報告も受けました。
神奈川県のJAさがみとも、合併前の農協のつながりを引き継ぎ、今年3月に災害時相互支援協定を改めて結びました。いずれも大きな地震の発生が想定される地域であり、将来の危険への備えでもあります。
――JAグループはいま、JA改革についての組織討議を始めていますが。
現況を見ますと、ふと「諦観」と言う言葉が浮かんできます。
「成るようにしか成らないなら、下手に逆らっても無駄である」との意味ですが、私たちには、守るべき地域があり、守るべき組合員がいます。
農協のあり方を決めるのは政府ではなく、財界でもなく組合員自身です。今後も、地域社会に向けて「社会的・共通資本としての農の営み」を強く訴え、様々な取り組みを通じて「一人は万人の為に、万人は一人の為に」という、協同組合運動の根幹を成す精神を忘れる事なく「真に豊かな農業農村の実現」に向けて、取り組みを進めて参ります。
(写真)
JA松本ハイランドの位置
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