JAの活動:農協改革元年
改革新たなステージへ 全国大会に向け徹底した議論を2015年3月13日
インタビュー高橋専太郎JAいわて花巻代表理事組合長
政府は農協改革の法制度の骨格を決めこれから関連法案を国会に提出して審議される。その内容が農業所得の増大や地域活性化に結びつくのか、注視が必要だ。一方でJAグループは昨年11月にまとめた「自己改革」の実践に向け自らの取り組みを強化することが求められる。本紙はそのことを「農協改革元年」と位置づけ、今回から現場からどう改革を実践すべきか、広く関係者に聞いていく。JAいわて花巻の高橋専太郎組合長は「地域」と「農家」が原点にあることを忘れてはならないと強調する。

――政府は農協改革の法制度などの骨格を2月13日に決めました。どう受け止めますか。
今回の決定で農協改革に向けたステージが変わったと思っています。どのようなステージにいるかといえば、10月の第27回JA全国大会に向かうということです。そこに向けわれわれJAグループが自他ともに、全国民的に認められるような改革をどう展開するか、その議論がこれからのいちばんのテーマだろうと思っています。 それは農業所得の向上や農業生産の拡大、地域活性化の具体化が求められているということです。 とくに私たちのような水田農業地帯では、農業所得向上対策のひとつとしては、農地中間管理機構による農地集積事業にどう取り組むかも課題になります。それから米の海外輸出の促進対策も考えなければならないと思っています。 今はいいものをつくれば売れるはず、という発想では不十分であって、市場がどのようなものを求めているかを徹底的に調査をしながら、海外輸出の拡大を図っていかなければなりません。これはまさに全農が取り組むべきことだと思います。それから6次産業化など付加価値向上対策も課題です。こうした改革に取り組む現場のJAを支持する体制が必要になります。
とくに海外に打って出るときには都道府県単位ではだめでやはり中央で取り組むべきだし、JAグループはそれだけ力をつけてきたということもふまえて改革すべきだろうと思います。
その点で中央会改革といっても、やはり代表機能、総合調整機能が必要です。私はこれまでも主張してきましたが、組織のスリム化は必要になるかもしれませんが、中央会が全国連に対して横串をしっかり通すかたちで全国のJAへのリーダーシップをとる組織になってほしいと考えます。
(写真)
高橋専太郎・JAいわて花巻代表理事組合長
――各地域ではどう農協改革を進めていくべきと考えますか。
今回は、准組合員制度については、直ちに決めず5年間調査を行った上で慎重に決定することになりましたが、農協の総合事業は准組合員も一緒になって構築し、それが農協の地域貢献にもなっているのが現場の実態です。これを忘れてはいけないし、現場を知らないおかしな話に対してはこれからも主張していかなければなりません。
そのうえでいよいよ改革をスタートさせなければなりませんが、自主・自立、相互扶助が協同組合の精神です。その農協の原点から改革をやっていかなければなりません。
私たちの農協は東西120kmにもなりますが、中央集権的な運営を打破しようと27支店それぞれが支店行動計画を作るという実践をしてきました。
今年も26年度の支店行動計画の反省点などについて各支店長から提出されていて、目を通してみると、まさに自らが考えたアイデアと実践を地域、組合員とでがっちりスクラムを組んで成果を上げていると評価できる支店が増えてきました。やはり地域にしっかり根ざした活動ができているかどうかだと思います。
支店行動計画には共通テーマがあります。持続的農業の確立をどうするか、組合員の生活を福祉を含めてどう支えるかですが、何と言っても農村の伝統文化をどう継承して支店運営をやっていくか、です。農村の歴史、文化を尊重しなければなりません。これが国土の環境保全につながるのだと思っています。
――地域レベル、支店レベルでしっかり組合員と話をしていくことが自己改革へのスタートということでしょうか。
美しい村は最初からあったわけではない、そこに村人たちがいて美しい村をつくった、と言われてきました。これが原点であって、その村人たちがつくったのが農業協同組合だと思います。村に住む人たちが絆を強め、そして訪れる人には癒しを提供し国土の環境保全を担ってきた。
しかし、アベノミクスの成長戦略で市場原理を主張する人たちは、果たして今の地方の実態を知っているでしょうか。地方は疲弊しつつあって、そのために農業・農協改革が求められているということではないですか。それが農業の成長産業化ということならば、やはり農協がやるしかありません。
このことを徹底的に議論をして今度の大会議案にも盛り込んでいかなければならないと思っています。
農業の成長産業化に向けた農業・農協改革が必要だといっても地域の農業、農民、組合員、これがベースなんだという議論をしていかなければならないと思います。
協同組合はどういう組織かということを真剣に捉えていく、それがなければ私たちの組織は足下から根こそぎすくわれかねない状況だと思います。
今、農協は全国に700弱ありますが、私は企業に勝るとも劣らないような自己責任経営というものが求められているということを強く主張したい。というのも地域振興を担うのは農協であり、これからは何があってもわれわれ農協がしっかりしなければならないと思うからです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日