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JAの活動:JA 人と事業2014

【JA 人と事業2014】風見晴夫・岩井農協代表理事組合長 園芸部が農協をリード2015年4月3日

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・出荷組合が農協の原点
・所得向上が農協の原点
・親の背みて後継者育つ
・農家の姿に職員が学ぶ

 岩井農協は大消費地東京に近い野菜の大産地。販売事業のなかで野菜の比重が圧倒的に高く、生産者の組織である農協の園芸部を軸に組合員の結集力が強い。典型的な生産農協といえる。その生い立ちと理念を、風見晴夫代表理事組合長に聞いた。

野菜共販70%  高い結集力


◆出荷組合が農協の原点

 ―岩井農協の農業・農協の特徴を聞かせてください。

seri1504030101.jpg 風見 岩井農協は茨城県南西部に位置する坂東市内の旧岩井市管内を管轄としています。1年を通して穏やかな気候風土に恵まれ、野菜づくりに適しています。地形は平坦で、かつ洪積層であることから農業機械が使い易く、地下水に恵まれていることや、首都から50km圏内にあることなど、農業に好条件のところです。特産品のネギやレタスは全国でもトップクラスの生産量を誇り、首都圏を中心に多くの消費者の毎日の食卓を支えています。
 販売事業が主軸で、平成26年度末の取扱高は約65億円。中心となる園芸部は466名の生産者を擁し、約62億円の販売実績があります。一戸当たりの販売額は1300万円余り。このため耕地利用率が高く、全国で問題になっている遊休農地もここではほとんどありません。
 農協の特徴は、この園芸部の活動にあります。もともとこの地域は、コンニャクと葉タバコを作っていましたが、冬場の作物として野菜の栽培が始まり、これを集めて東京などの市場を開拓して、20、30戸の生産者が集まって出荷組合をつくってきました。
 その出荷組合が集まってできたのが、岩井農協園芸部で、7地区ごとに園芸部(支部)があります。
 岩井農協の原点は、この7つの園芸部の支部にあります。
 私の住む長須地区が典型ですが、37の集落に13ほどの出荷組合がありました。この組合が支部活動の基になっており、現在でも野菜の目合わせ会などを行っています。
 長須地区はかつて沼地であったため、米が作れず、農家は沼のマコモを田舟で刈り取り、農地に肥料として鋤き込み、野菜を作っていたのです。地区の農家は非常に仕事熱心、研究熱心です。こうした先人たちが苦労を重ね、必要だと思ってつくった農協です。その思いは、いまのわれわれの行動の基本になっています。ここまで来ることができたのは生産者と農協が一緒に歩んできた成果だと、胸を張って言うことができます。


◆所得向上が農協の原点

 ――そうした組合員の思いと同時に、JAの合併が唱えられていますが、どう考えますか。

 風見 合併して大規模化すべきだといいますが、問題はその後がどうなるかです。大規模化すると新しい雇用も生まれ、地域が活性化するともいいますが、その道筋が見えません。一定の収益を上げることは必要ですが、組織が大きくなると、力のある者は残れるが、力のない者はどうなるのでしょうか。
 合併以外にも別の方法があるはずです。会社と違って農協は、地域にどうあるべきかという原点に戻って考える必要があると思います。
 農協の役割は農家の所得を向上させることです。そのためには何を基本とするかが重要です。漠然とした「所得向上」では分かりません。所得向上のためには、農家の生産資材の単価を下げるのか、販売経費を削減するのか、具体的な裏付けが必要です。
 また地域にある農協の理念は、福祉事業などのサービスで、地域の利用者に喜ばれる組織でなければなりません。大きく合併した例に郵便局がありますが、山間地では郵便局がなくなり、住民は不便を被っています。そういう農協にはしたくありません。
 合併を推進する人は、いろいろなメリットをあげていますが、そもそも地元で一つの組織形態を守れないから、大きくするというのはどういうことでしょうか。組合員や利用者から「農協はいらない」といわれるのならともかく、ここでは全くそのような声は聞かれず、むしろ「支店がなくなったらだめだよ」と、生産者だけでなく、地域の人からもよくいわれます。
 岩井農協の自慢は、信用、共済事業が営農・販売事業としっかりコラボして運営していることです。農業で稼いだお金を預金に回す仕組みを壊してはいけません。経済事業がなかったら、信用・共済事業に特化せざるをえないでしょう。だがそうすべきではありません。経費はかかるが営農・経済事業と一緒に動かなければならないのが農協です。
 特に岩井農協は生産者が自ら必要と思ってつくった組織です。それを単に数字の上で大きくするというのでは、地域をないがしろにした合併だといわざるを得ません。金融・共済だけなら支店は廃止して、渉外を増やせばよい。だが農協はそのような組織ではないでしょうと訴えたい。本当に組合員のことを考えると、簡単に「はい、そうですか」といえないところがあるのです。


◆親の背みて後継者育つ

 ――農業の担い手は大丈夫でしょうか。

 風見 野菜農家のほとんどは後継者がいます。私も米と野菜の生産農家ですが息子が後を継いでいます。大学を卒業してまっすぐ農業に帰ってきました。管内でこうした後継者は珍しくありません。
 それを可能にしているのは、農業に自信を持って取り組んでいる親を見て育ったからではないでしょうか。また、普通のサラリーマンに比べて、収入が多く生活も安定しています。みんな目標を持って農業をやっています。
 どこの家庭にも親子代々の家庭の味というものがあります。戦後、欧米化されたとはいえ、こうした古き良き伝統を残して前に進むべきだと思いますが、農業収入が安定したところでは、これが引き継がれています。大学を卒業して迷わず就農するというのは、こうした伝統があるからだと思います。
 管内には外国人の研修生が多く入っており、自分の家でも受け入れていますが、トラブルが起きたとは聞いたことがありません。それは受け入れ農家が、本当に自分たちの労働力で間に合わなくなって雇ったもので、家族とともに働き、食事や休憩は一緒にとるなど、家族ぐるみで受け入れ環境をつくってきたからです。


◆農家の姿に職員が学ぶ

 ――職員にはどのようなことを期待しますか。

 風見 信用事業は不祥事を防ぐため職員を定期的に異動させますが、土づくりや種子のことなどの専門的な組合員の要望に応えられる職員を育てるには10年、20年かかります。それをこれまでずっとやってきたことが、野菜の共販率70%という結果につながっているのです。
 岩井農協の営農指導の担当者はすばらしい指導力をもっています。農家に入って、直接話を聞き、教えていただいて、絶えず勉強しています。職員は農協が育てるのではなく、農家に育てられるのです。もうこれはコンプライアンスとは別の次元の問題です。胸を張っていえるのは、わが農協では一件も不祥事がないことです。


◆100haの水稲 息子と経営

 ――今も現役の農家だと聞いていますが。

 風見 水稲100ha、レタス、ネギ3.5haで経営しています。農繁期になると息子と一緒に朝の3時、4時に起きて農作業、その後農協に出て、帰宅後、遅い時は10時ごろまで仕事をしています。
 息子に任せてありますが、作物を育てるには季節に応じた急所があり、これをサポートする必要があります。自ら働いて、人件費のコストを下げる。これが農家の真の姿です。

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