JAの活動:JA 人と事業2015
【JA 人と事業2015】間渕誠一・JAちばみどり代表理事組合長 家族農業を軸に産地づくり2015年5月19日
・需要に応じ多品目生産
・野菜販売高8割占める
・産地支える生産者組織
・多方面から物事を見る
・外部の目線長計に反映
JAちばみどりは全国でも園芸販売高がトップクラスの農協である。強固な共販体制を生かし、首都圏に近い野菜産地として不動の地位を築いている。生産者の組織を軸に経済事業に重点を置いた運営は、JAグループが取り組んでいる農家所得の向上という自主改革のモデル的JAともいえる。間渕誠一組合長にJA運営についての考えを聞いた。
強固な生産組織で共販徹底
◆需要に応じ多品目生産
――地域の農業はどのような特徴がありますか。
間渕 管内は東部、中部、西部に分けられ、それぞれ特徴ある農業を行っています。東部地区はキャベツ、ダイコン、トウモロコシなどの露地野菜、それにメロン、スイカ、トマトなど平均2?3haで、家族経営としてもっとも理想的な形があり、後継者もそろっています。
中部地区はキュウリ、トマトなどの施設園芸と米作、西部地区は米作、ネギのほか植木などがあります。管内全体で60以上の作目があり、年間を通じて出荷できる体制ができています。これが卸売市場の信頼を得て、販売面でJAの強みになっています。
政府は「農業改革」で経営規模の大型化、あるいは会社化を進めていますが、今の家族経営を中心とした経営が、孫、ひ孫の代まで継続できるようにしたい。これがJAの役割だと考えています。
◆野菜販売高8割占める
――家族農業の強みはどこにあるのでしょうか。
間渕 日本の農業は面積が限られているなかで、いかに品質のよいものを多く作るかがポイントです。単品に特化すると、価格が下がったときのリスクが大きくなります。そうではなく、安全・安心、おいしいものをという消費者のニーズに応えていくことが、野菜産地として重要だと考えています。それには家族でできる規模が理想的です。
生産者の数が多く、多様な作目・作型があるのも強みです。1品目の栽培回数は一人の生産者の一生で30回くらいですが、10人の生産者がいると10倍の経験ができ、その技術を共有できます。この役割を組合員の部会、そしてJAが果たしているのです。
その結果、平成26年度のJAの園芸販売高は約240億円で、総販売高295億円の8割強を占めます。価格の低迷や生産者の高齢化で、販売高が落ちている中で、JAちばみどりは、平成13年の合併以来この水準を維持しています。
◆産地支える生産者組織
――それには市場出荷を最優先してきた共販体制がありますね。
間渕 これだけの産地を維持できているのは、長年の取り引きで築いた卸売市場との信頼関係があるからです。供給が多い時や少ない時などお互い調整しながら、価格の維持に努めてきました。安定した取引価格による安定した所得が生産者の意欲を促し、後継者の就農につながっています。
こうした産地づくりを支えてきたのが組合員の生産組織です。特に園芸では、各地区に組合や部会などがあり、これを統合したJAちばみどり園芸連絡協議会は約3700人の部員を抱え、大きな影響力を持っています。
いまJAが力を入れているのは安全・安心な農産物の供給です。生産組織が中心になって、出荷品への異物混入防止を含めた生産工程管理(JGAP)、産履歴記帳の精度向上、農薬ドリフト防止、残留農薬の自主検査、農薬安全使用の啓もう活動などを展開しています。
農産物は、一件でも残留農薬が検出されると産地全体の問題になります。このため、特に心配される系統外の出荷者には、行政の協力も得て、検査への参加などを呼び掛けています。こうした安全で安心な農産物を消費者に供給することは、同時にJAの地域貢献でもあるのです。
当JA管内は日本で最初に協同組合をつくった大原幽学にゆかりのあるところです。組合員がお互い助け合うという伝統が根付いているように思います。安全で安心な農産物の安定供給ができるのは、多くの生産者がJAを中心にまとまっているからです。
◆多方面から物事を見る
――長く農業に従事し、組合長になって何を感じていますか。
間渕 女性部の総会に出席して感じたのですが、実にいろいろな人が出席しています。参加するということがいかに大切かということが分かり、誰でも参加できる環境をつくる必要があると感じました。JAはこうした機会をつくることが協同活動ではないでしょうか。
JAの職員については、ものごとを多方面から見るようにしてほしいと思っています。同じものでも正面から見るのと、脇や裏から見るのでは、それぞれ違います。長い間、同じ環境で育った職員は、みんな同じ見方になりがちではないでしょうか。
組合員組織について、われわれのような組織をつくってきた世代は、ある程度自己犠牲もありうると思っていますが、いま加わる人は組織があって当たり前、欠点は指摘するが、それを自分ならどうするかという考えを持ってもらいたいと感じることがあります。
生産組織で扱っている品物は、全量出荷が原則です。必要なのは目先の利益でなく、その先にあるものです。そのためには厳密なルールが必要です。これを若い世代に理解してもらいたいと思います。
(写真)銚子野菜連合会の総会(上)と一面のキャベツ畑(銚子市で)
◆外部の目線長計に反映
――JAとしてこれから取り組むべき課題にはどのようなことがありますか。
間渕 平成28年度から実践する中期経営計画や農業振興方策の策定作業を進めています。これまではJAの職員を中心に進めていましたが、今回は農協改革という視点で、外部の目線を入れるため、コンサルタントに委託し、いま組合員がJAについて思っていること、期待していることなどを聞き、良いところや悪いところについてそれぞれの特徴を調査し、計画に反映させていこうと思っています。
合併後、支店や事業所の統廃合を行っていますが、この先、それぞれの利用度、場所、資材の配達などを考えると、さらに再編が必要になるかも知れません。地域に合った計画が必要ですので、生産部会など組合員から意見をあげてもらうつもりです。
◇
間渕組合長は現役の生産者である。「生産者からJAのリーダーを」という組合員の声に押され、キャベツ農家から1期の理事を経て昨年3月、組合長に就任した。
「なぜ協同組合が必要か」。この原点に返ることが「JA改革」の基本だと指摘。全国トップクラスの園芸産地で生産部会の活動を経験し、このことを身を持って知っている。インタビューでは、この地で日本最初の「協同組合」を創設した大原幽学の話も出る。農協は何を目的にした組織か、改めて考え直す必要があると教えられた。
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