JAの活動:JA 人と事業2015
【JA 人と事業2015】駒屋 廣行・JAひだ代表理事組合長 広域合併の成果着実に2015年6月1日
・米・野菜・和牛でブランド化
・販売185億円3品で95%
・確かな成果広域合併で
・営農販売で戦略室設置
・人事交流で職員一体感
・負託に応え事業改革を
・農家の気持が分かる職員に
広域合併して20年。農業・林業以外に目立った産業のない飛騨地方で、JAひだはスケールメリットを生かして米、野菜、和牛のブランド化で農家所得向上に実績を挙げている。
駒屋廣行組合長は厳しい自然環境の中で、現在の農業とJAを築いた先人の協同精神の大切さを強調。それに基づいて同JAは、今日の経済・社会環境の変化に対応した農協改革に
取り組む。
米・野菜・和牛でブランド化
◆販売185億円3品で95%
――飛騨の農業には どのような特徴がありますか。
駒屋 JA管内は大半が中山間地域に属し、標高は200?1200メートル、高冷地でもあり、農業に恵まれた地域とはいえません。そのなかでわれわれの先人は、小規模な家族経営で米や養蚕、葉タバコ、さらには和牛など、さまざまな形の農業に取り組んできました。
今は米、肉牛、野菜を中心にした農業が確立しており、特に米は昼夜の寒暖差の大きさと豊かな水を生かした「コシヒカリ」、もち米の「たかやまもち」、酒造好適米の「ひだほまれ」など、特色ある「飛騨の米」としてブランドを高めています。
「コシヒカリ」は26年度「特A」に認定され、食味分析鑑定コンクール国際大会でも2年連続金賞を獲得するなど、全国でもトップクラスの産地です。ホウレンソウやトマトなど野菜のブランド化を進め、夏場のホウレンソウは京阪神や中京市場で約8割のシェアを持つまでになりました。また全国に知られた黒毛和種のブランド牛、「飛騨牛」もあります。
こうした取り組みから、平成25年度末の農産物販売取扱高は約185億円。うち野菜は88億円で、ホウレンソウが46億円、トマトが35億円です。野菜と畜産の約71億円、米穀の18億円を加えた3品目で全販売高の95%を占め、バランスのとれた産地になっていると思います。
◆確かな成果広域合併で
――広域合併した成果もあるのではないでしょうか。
駒屋 JAひだは平成7年に6JA、同13年に4JAが合併して現在のJAになりました。農業以外の産業が少なく、中山間地の小規模農家が大半の飛騨地方では、他の地方以上にJAが大きな役割を果たしてきたのだと思います。
昭和40年代までは米が命、でした。増産のための高い営農意欲が、その後の転作による野菜、役牛から代わった和牛の産地づくりにつながりました。パイプハウスによるホウレンソウの雨よけ栽培は飛騨から始まったと聞いています。また名牛「安福号」の系統の種雄牛を導入するなど、当時の生産者と農協、それに行政が一体となって取り組んだ結果だと思っています。
こうして生まれた飛騨地方の一体感が、スムーズな合併につながったのだと考えています。合併前から農業管理センターや野菜集荷場、育苗センター、精米センター、カントリーエレベーターなどで共同運営に取り組み、さまざまな形で連携機運が生まれていったのです。このことからも、広域合併は農家の手取りを増やすために行い、成果を挙げたといえるのではないかと思います。
◆営農販売で戦略室設置
――どのような地域農業の将来ビジョンを描いていますか。
駒屋 米、ホウレンソウ、トマトのほか、最近は桃、リンゴが後発品目として入ってきています。特に気候が適する桃はおいしく、宅配で伸びています。ただ、こうした新しい品目に取り組む若い人の中には直接、量販店に販売するケースも出ています。
直売所などでもそうですが、今は?個?の時代ともいわれ、生産者一人一人の顔が見える関係が農産物の販売では必要だと思っています。生産者のモチベーションを高めることにもなります。
しかし、生産者がバイヤー的な仕事をすると時間や費用がかかり、規模を拡大すると精米や選果施設への投資も必要になります。個人でできることには限界があります。
米では高山市とJAが取り組んでいる「飛騨高山おいしいお米プロジェクト」がありますが、これに参加するため、個人出荷の生産者がJAの共販に戻るケースも出ています。それによってJAの施設の稼働率も高まります。
またJAは生産者のため、今の180億?190億円の販売を確保しなければなりません。そのために連合会を通じた共販を維持するのは当然です。両者の力を結集する必要があります。
JAひだでは、今年4月に、室長を含め5人のメンバーからなる「営農販売戦略室」という組合長直結の部署をつくりました。いわば多様な販売の道を探るため、担い手や後継者への個別対応を強めるとともに従来の共販体制も維持・強化しようということです。一般社団法人・日本食農連携機構のアドバイスも得て、2、3年のうちに方向を明確にしようと思っています。
生産者の高齢化が進み、野菜の後継者不足が心配されます。そこで、26年度にトマト新規就農者研修事業をスタートさせました。毎年3人つづ採用し、2年間トマトづくりを経験します
◆人事交流で職員一体感
――広域の合併で、職員のコミュニケーションはどうしていますか。一体感を育てるのは大変だったと想像しますが…。
駒屋 人事異動では職員に苦労をかけてきましたが、可能なところから本店に異動させるなどで、地域意識も薄まり、JAひだの職員としての一体感が育ってきています。正月と年度初めには約1100人の職員が一堂に会して意思統一に努めています。また30代の職員を中心に、将来の幹部候補としてJA全中のマスターコースで学ばせています。
◆負託に応え事業改革を
――JA自己改革の狙いと、取り組みはどうですか。
駒屋 生産組織連絡協議会や青年部、女性部の代表からなる「JAひだ農協改革検討委員会」を設けて改革案をまとめました。
JAは農業と地域振興の双方に全力で取り組むことで、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化をはかる必要があります。そのためには、改革案をもとに、営農指導・販売・購買の三位一体で改革に取り組むとともに、各事業が有効に機能する組織体制を構築し、担い手をはじめとする農業者の負託に応えるJA事業の確立を目指します。
◆農家の気持が分かる職員に
――これから農協を支える職員には、どのようなことを望みますか。
駒屋 組合員に笑顔で接することは当然ですが、農家と農協のパイプ役として、農家に飛び込んで本当の気持ちをつかむ能力を高めていだだきたい。組合員、地域と共に歩むJAを目指して。
◇
飛騨は広大な?山国?である。それぞれの地域は山で隔てられているが、飛騨としての一体感がある。天領であり、かつて「飛騨の匠」や杜氏の出稼ぎなどで、江戸や京・大阪との人的・文化的なつながりも強かった。
その中から多くの教育者が生まれ、協同組合運動でも優れた指導者を輩出し、協同の力で小規模経営の農業収入を増やそうという機運が醸成された。
この伝統が今日のJAひだに引き継がれている、経済事業を中心にした、同JAのさまざまな自己改革への取り組みに、こうした背景が伺える。
(写真)ブランドを確立したホウレンソウ(上)と黒毛和種
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