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JAの活動:農協改革元年

5年先見据え主体的に改革 准組合員問題 地域で真剣な議論を2015年6月23日

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インタビュー:冨士重夫・JC総研理事長(前JA全中専務)
聞き手:増田佳昭・滋賀県立大学教授

 農協法改正が国会で審議されている。成立すれば来年4月に施行される見込みで法制度としても改革が進められる。一方でJAグループは自己改革で掲げた「農業と地域に全力」を基軸に将来を見据えた主体的な取り組みが求められる。今回はJA全中の前専務の冨士重夫JC総研理事長に聞いた。聞き手は増田佳昭滋賀県立大学教授にお願いした。

seri1506231301.jpg 増田 今日は農協はこれからどうあるべきか、その将来像を大いに語っていただきたいと思います。ただ、やはりその前にこの1年あまりの農協改革議論を振り返っていただく必要があると思います。とくに規制改革会議での議論は一昨年から始まっていたわけですが、昨年5月の農業WGの中央会の廃止といった答申はあまりにも唐突でした。
 冨士 そもそも政府・与党が平成25年12月に決めた「農林水産業・地域の活力創造プラン」では農業所得の倍増を打ち出していましたから、それに基づいて規制改革会議の議論も行われていたはずです。農業WG座長も実のある改革をすると話し、われわれに対するヒアリングでも、どういう営農経済事業を展開していくのかが議論になりました。農業WGも現場の実態を知ろうと現地調査も行っていた。そこに中央会の法人形態の変更などという話はまったく出ていなかった。全農の株式会社化についての質問はありましたが、われわれにその考えはないと回答しています。
 ところが、意見のとりまとめの本当に直前になって突然、中央会の廃止、一般社団法人化という話が出てきた。非常におかしな動きでした。
 増田 農業所得の増大とは縁もゆかりもない法人格の変更が焦点になってしまい、ずいぶん驚きました。
 冨士 ただ、6月の与党のとりまとめでは中央会制度について、廃止という言葉は一切入りませんでした。農協法における中央会は自律的な新たな制度に移行する、ということであって、その新たな組織は組織討議を十分ふまえて改革するというとりまとめになっています。中央会は昭和29年に国が法制度化したわけですが、それをこれからは自分たちの意思で運営していくという意味で自律的な組織にする、と。したがって答えは組織討議の後となりました。 ところが9月からは大臣や党の責任者も変わり、むしろ規制改革会議が示した方向での議論が強まっていきました。農水省との意見交換でも結局「かたち」にこだわった。たとえば、監査の問題にしてもわれわれは農協監査士制度を進化させて、会計監査と業務監査を一体として行う体制にし、さらに客観性を保つため監査機構を整備し、また公認会計士も一体となって農協監査をするという改革はしてきた。しかし、今回はこの一連の流れを否定し、とにかく「かたち」を変えなければいけない、ばかりでした。
 われわれとしては6月の与党とりまとめをふまえて、11月に自己改革の方向を打ち出し、監査機能や代表機能などを果たしていくために農協法上必要な組織として位置づけるとしました。
 しかし、一方で准組合員の事業利用制限も提起され、中央会改革とのセット論となっていった。どっちを取るかということ自体が理不尽な話で、これは一種の脅しだからこれに屈してはだめだと言い続けてきました。しかし、実際には農協組織としては心配になる。利用制限という方向性そのものが改革案に入ること自体が認められないという現場実態がありますから。
 だから准組合員の利用制限という方向性を認めさせないためには、中央会制度のかたちを変えざるを得ないということに追い込まれていくということになっていった。監査について外に出して公認会計士法上の監査法人となっても、実質的に今までと同じようにできるようにすると言う政治決着となりました。

(写真)冨士重夫・JC総研理事長(前JA全中専務)


◆次に闘える体制を

seri1506231302.jpg 増田 大変なご苦労があったと思います。
 冨士 ただ、今回の改革について今までと何も変わらないようにできるという受け止め方と、いや、これは組織の根本問題を突きつけられていて深刻に受け止めなければだめだという認識に分かれていることが問題だと思います。
 前者の認識は、株式会社化など法人格の変更についても「移行することができる」と言っているだけですから、会員の意思さえしっかりしていれば今までと同じ組織形態を続けることができる―。全中にしても県中にしても会員の意思さえしっかりまとまっていれば今までと同じようにできる、ということです。
 しかし法改正の狙いはそんな方向ではないと思います。今後は改革の進捗状況と准組合員と正組合員の実態調査を行うということになっていますね。改革の進捗状況の検証とは、たとえば、農協組織の法人格が変わったかどうか、ということではないか。株式会社や生協などに組織形態変更ができるように法改正したのに、なぜそうやらないのか、と。今回の改革のベクトルはそこを向いていることがはっきりしているわけです。
 ですから、よほど3年後、5年後を見据えて、それぞれの農協が事業を実践していくための系統組織の事業・運営を革新していくことが非常に重要になる。そこに取り組まないと次に闘える環境を作り出せないと思います。
 増田 農協法改正案では組織変更について非常に柔軟な規定となっています。しかし、あの規定をつかえば今のJAグループを縦横無尽にどうとでも分解できるようになっている。本当に主体的に対応していかなければ解体の道をたどりかねず、私もそこにいちばんの危機感を持つべきだと思います。

(写真)増田佳昭・滋賀県立大学教授


◆新事業方式を確立

 増田 そこで、5年ほど先を見据えた対応が必要だということですが、ポイントはどこでしょう。
 冨士 今回の改革のおもなポイントは▽中央会制度の改革、▽農協組織の法人格の変更、▽理事構成や事業目的規定の変更、▽准組合員の事業利用制限です。
 このうち准組合員には共益権はなくてもそもそも利用権はあるため、利用制限は財産権の侵害だということになります。しかし、そうなると准組合員の利用制限自体はできないから、次にどういうトリガーが引かれるかといえば、もう准組合員加入はだめだ、ということではないか。
 一方、農業所得の増大が今回の改革の一丁目一番地であり、それは農業者の協同組合だから当然、と国は相変わらず強調しますが、実態はどうか。たとえばわが国の農業粗生産高は8兆円ですが、それを全部JAグループが取り扱ったとして販売手数料1%とすると800億円です。単純平均して1JAあたり1億円に過ぎません。これでは営農指導職員を雇い、さらに農業振興に必要なさまざまな投資や設備整備ができるかといえば極めて難しい。そうするとやはり信用・共済事業を含めた総合事業体としてやっていくことが、農業振興に欠くことができない。逆にいえば総合事業体でなければ農業振興もできないというのが実態です。この実態を突きつけていく必要があります。
 やはりわれわれがめざしているアイデンティティとは、食と農を基軸にした地域協同組合で、実態として准組合員が増えている。そこで改めて農業振興にどう力を入れていくか。その取り組みを連合会と一緒になってやる。
 ですから2つめは、系統事業方式の新たな確立、運営手法の確立だと思います。現場の単位農協は総合事業を展開していますが、連合会段階では事業連ですから、中央会がまとめ役になってきたわけですが、その機能が脆弱化していくことになれば、事業システムとして信用・共済の収益は農業・地域振興に活用されているという系統の事業システムとして確立する必要がある。単純ではないと思いますが、総合事業のメリットがどう農業振興に還元されているか、総合事業体としての協同組合の必要性を法制度として位置づけるためにも新たな事業、総合事業の機能発揮という運営方式を確立、展開していく姿を見せていくことが重要だと思います。

seri1506231303.jpg
◆地域の特性生かす

 冨士 3つめは法制度上の課題です。ひとつは組合員制度のあり方です。正組合員、准組合員という制度を基本にしながら准組合員に法制度上、利用権以外のどういう共益権をどのレベルまで付与するのか、真剣に議論しなければいけない。合わせて正組合員のあり方、正組合員の条件とは年間農業就業日数なのか、経営面積なのかといったことも地域によって違うと思いますが改めて考えるべきだと思います。
 さらに日本の協同組合法制全体の見直しも考えるべきではないか。少なくともその議論の芽をどれだけつくれるかです。今は、農協、漁協、森林組合、さらに中小企業協同組合と事業別に縦割りに組織されていて、それを横には合併できません。しかし、たとえば、震災で大きな被害を受けた南三陸町に行くと住民は農協、漁協、森林組合、生協と一家で4つの組合員になっているという実態がある。その地域ではまさに地域協同組合としてどう協同組合を成り立たせればいいのかという観点で検討する必要があり、農協が漁協、あるいは森林組合と合併するといった一次産業の協同組合間どうしの合併ができないのかということです。
 増田 今回の農協法改正では農業者の協同組合、職能組合という性格を強めるべきことが強調されています。しかし、食料・農業・農村基本法では農業だけでなく農村地域振興もきちんと視野に入れて政策を打ち出し実践していくこととされており、農協法改正の議論とはずいぶんベクトルが違う。しかし、組合員がつくりあげた農業協同組合は地域の資産であって、それを活かすことが地方創生にもつながるという正攻法だと思います。その点からも准組合員への共益権の認め方、あるいは農協への参加の仕方ということですね。
 冨士 これは一律ではないと思います。都市的地域と中山間地域、あるいは水田農業地帯と園芸が盛んな地域などで、いくつかのパターンがあっていいと思います。
 増田 枠組みは中央会などが用意しながらも、農協が自律的に考える必要がありますね。同時に准組合員の方々が利用する事業についても豊富に用意することも大切です。ただ、貯金を、共済を、では魅力がないし、わざわざ農協運営に参加しようという意欲も湧いてきません。
 冨士 そのためにもたとえば准組合員台帳の整備も考えてみてはどうかと思います。正組合員と同様に職業や家族構成など把握して接しているかどうか。その強化も考えていく必要があると思います。
 増田 中央会のあり方ですが、今の段階で考えていることはありますか。
 冨士 1県1JAという動きが進行していくとなると県中央会の機能発揮の仕方はどうなるかという問題があると思います。1県1JAではなくても3JA程度でも同じ問題はありますし、全国で20県ほどが1県1JAという組織になるとどう機能を発揮していくか、です。
 そして全中は一般社団法人になりますが、複数農協がある県中と1県1JAの県、さらに農業地帯別もふまえて代表調整機能をどう果たしていくかを考えていかなければなりません。それから教育については一元的に担ったほうがいいのかどうか。さらに基本的な問題は執行体制です。理事会、評議委員会など組織代表を含めてどうするかも課題になります。
 増田 今回は、本当に自分たちのJAがどうなりたいのか、それを各JAが作りながら事業のあり方、准組合員の問題を考えていくことが重要だと思います。そういう方向をサポートするような中央会であり連合会であってほしいと思います。ありがとうございました。


【インタビューを終えて】

◆地域社会に尽力を

 この間の政府主導の農協改革は、農業所得の増大と縁もゆかりもない理不尽なものである。突然持ち出された准組合員の利用制限論など、それまでからある財界筋、米国筋からの金融・共済イコールフッティング論の変化形に過ぎないのだが、グループへのインパクトは相当大きかったようだ。今回の農協改革攻防戦は初戦に過ぎない。これからも准組合員問題を中心に形を変えた攻撃は続くであろうから、JAグループには危機感を持った対応が求められている。「農業と地域のために全力をつくす」姿を組合員と地域に示せるか、地域社会のためのJAの必要性を伝える運動が作れるかどうか、正念場を迎えている。JC総研理事長としてのご活躍を期待したい。(増田)

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