JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー】課題整理し行動計画を JA改革へ現実的対応 地域・組合員の支持が第一2016年11月14日
協同経済経営研究所・加島徹専務
JA改革にどう対応するか。その方向が見えず、各JAは暗中模索といったところだが、(株)協同経済経営研究所の加島徹専務に「JA改革へ現実的対応」について話してもらった。
JA改革の目的は農業所得の向上にあるというが本当に農業所得の向上のための道筋は示さず、また生産資材価格を引き下げれば農業所得の向上が出来るような錯覚を与えています。しかし生産資材価格の引き下げを行っただけでは農業所得の向上はあり得ません。圧倒的な内外価格差を縮小するような構造改革がなければ意味がありません。
本当のJA改革の狙いは、改革のなかでイコールフッティング(平等な競争条件)がたびたび挙げられたように、TPP批准を控えて協同組合など特殊な組織形態と株式会社との競争では協同組合の方が優遇され、株式会社との競争ではアンフェアになるといった欧米の主張が底流にあります。株式会社同士の競争でなければ平等な競争条件が確保しているとは言えず、特殊な組織形態は排除すべきとの考え方が基本になっています。
改革への現実的対応を考える際に、まずは改革の本質が岩盤規制の象徴であるJAの排除にあることを明確に意識しなければなりません。排除が目的であればすべてのつじつまが合うことになります。
今回のJA改革では農業所得の向上をはじめ、公認会計士監査の義務づけや信用事業譲渡の促進、員外利用規制の強化と准組合員の事業利用制限の検証など、これまでのJAのあり方を今後、大きく変える課題が提起されています。
◆農林年金の清算も
平成30年頃には農林年金の制度清算に伴う引当処理が全国的に発生し、ほとんどのJAで当期剰余金が赤字に陥ると推測されます。また、マイナス金利によって収益の柱である信用事業の収益力が低下することが予想されます。このため事業利益が赤字に陥り、赤字体質が恒常的に続くJAが出現すると予想されます。こうした赤字が続くJAでは自然と信用事業を営むといったことが出来なくなると考えられます。
また平成31年度以降、公認会計士監査の義務づけと監査証明が得られない場合には外部監査の証明が得られないことになり、金融機関としての存続が出来ず、自動的に信用事業の譲渡へ移行するJAが出てくると推測されます。金融など収益力の低下、生産調整の廃止など外部環境の変化によって事業利益の確保が出来ないJAと監査証明が得られないJAは、信用事業譲渡を選択せざるを得ないか、総合事業で残れるかの選別が進むことと想定されます。
このJA改革の対応状況が5年後に問われることになります。改革によって引き起こされる課題を整理して5年間のアクションプログラム(行動計画)に落として最終的な到達点を明確にしていくことが必要です。改革によって将来、引き起こされる課題を整理すると次の5点に集約できます。
◆法定事項へ対応を
一つは農協法が改正されたために認定農業者、もしくは専門家が役員の過半を占めるという役員構成の見直し、公認会計士監査証明が得られなければ信用事業譲渡になるという法定化された事項への対応は必須です。
二つめには農業所得の向上が目的となっているが、本質的な所得向上に向けたことは必要ではあるものの、まずは生産資材価格の引き下げ、農業融資への対応、輸出、耕作放棄地の解消など、批判の象徴とされている事項についてJAとしての回答を用意することが最低限必要です。
三つめはJAの排除といった事態を想定すると規制の強化が考えられ、とくに組合員資格に関する規制の強化が想定されます。この課題に関しては組合員資格の検証と事業利用制限の無い正組合員をいかに増やしていくかといった課題に対処する必要です。組合員資格と定款の見直しが必要す。
四つめは信用事業譲渡などに陥らないためには、総合事業としての安定収益の継続、地域の金融機関としての能力向上と条件整備、取扱高から収益重視へ意識改革を伴った事業改革、経済事業の赤字の解消など事業分離を意識した対応が必要です。
五つめはJAの存在が問われているのがJA改革であるため、地域、組合員にとってのJAの必要性の向上策、支持が必要です。そのためには利用者満足度(CS)の向上と利用者ニーズの「見える化」を図り、組合員の事業利用占有度合を上げていくCSの向上を着実に図り、地域、組合員にとってのJAの必要性を高めていくことが肝要です。
◆対外説明を明確に
これらの将来想定される大きな課題認識を明確にしてそれを5年間の行動計画としてとりまとめ、実践し、成果を挙げていくことが改革への現実的対応としては必要不可欠といえます。最終的に対外的に説明ができる、地域や組合員の支持を高めていくことがJA改革への現実的対応では必要といえます。
(写真)協同経済経営研究所・加島徹専務
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