JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
屈辱的な「進捗管理」2016年12月2日
今回の「規制改革推進会議」による提言のドタバタ劇で、全農改革について政府与党が進捗管理をすることで決着することになりました。その内容は、購買事業について共同購入の利点を最大化するための組織のスリム化や手数料の透明化、販売事業については、実需者への直接販売を基本として中間コストの削減、米などを念頭に委託販売から買い取り販売への転換を促すというものです。
また、これらのことについて、全農自らが年次計画や数値目標を公表して改革に取り組み、与党および政府がこれを定期的にフォローアップし、自己改革を進捗管理するとされます。さらに、JAの信用事業の譲渡については、JAの自主選択であり検討対象から外され、JAグループには安堵感さえ漂っているように見えます。
しかし、全農改革について「与党および政府が自己改革を進捗管理する」というのは、JAグループないし、それ以前に民主主義国家として屈辱的というべきものでしょう。全農が破産状態にあればともかく、これではまるで北朝鮮なみの国家統制による政治です。自民党は、安倍一極体制とはいえ、自らの政党理念に照らして恥ずべきことでしょうし、JAグループも自民党一辺倒の政治対応がいかに危険かを思い知るべきです。
全農改革について、「推進会議」でどの程度の審議が行われたのか疑問ですが、その内容については、取りあえず以下のような指摘ができるでしょう。
購買事業について、生産資材は、物流はメーカーからJA(場合によっては組合員)につながっているのになぜ手数料を取るのかという、いわゆるペーパーマージン批判があります。全農は自ら合理化を進め、説明責任を果たしていくことは重要ですが、だからといって与党や政府がその進捗状況を管理するというのはいき過ぎでしょう。
全農が協同組合として生産資材について共同購入を行い、一定のシェアを持っているのは当然のことであり、何ら指弾されることなどありません。これについて、全農は共同購入という名のもとに組合員に利用を強制し高い価格の生産資材を売りつけているというのは、協同組合つぶしのためにする議論としか言いようがありません。
価格について、韓国に比べて高いことが指摘されましたが、生産資材の価格設定には生産方法や土壌・気候条件などが関わっており、単純にこれを比較することは適切ではありません。要するに、全農の生産資材を利用するのは組合員の主体的な自由意志であることが大前提で、現にそのように運営されています。価格については、今やネット通販の時代であり、その公開性・透明性が主要課題とされるべきです。
また、買い取り販売については生ものを扱う農産物については、少なくとも卸の段階でこれを行うことは大変危険です。売り先も分からず買い取れば、在庫管理ができず、たちまち倒産状況になるでしょう。米についても同様で、仮に農協食管等を構想するのであれば財政負担から無理な相談でしょう。したがって全農に買い取り販売を強制しても、結局は売り先を先に見つけて形だけを買い取りにすることにしかならず、真の販売事業改革につながるとは思えません。このような発想はまさしくお役所仕事というべきです。
農水省が優良事例と推奨する「JAみっかび」のみかん販売は、そのほとんどが卸売市場への無条件委託販売であることを当の農水省はどのように説明するのでしょうか。販売事業強化は、買い取り販売か否かで判断されるのではなく、ブランドの確立こそがポイントです。
買い取り販売を形式的に進めても意味はなく、それよりも、従来のJA・連合会の販売事業のやり方を抜本的に見直し、生産から消費まで一気通貫のバリューチェーンをJAグループ自らの力で構築して行くことが重要でしょう。販売事業については、激烈な産地間競争が行われ、産地・JA・連合会間でも利害相反の状況があり、実現には多くの困難が伴いますが、その克服が求められています。
◆ ◇
また、3年後のJAの信用事業兼営半減案は論外として見送られ、事業譲渡の選択制が議論されていますが、この問題はこれで終わった訳ではありません。信用事業譲渡はもともと選択制であり、そのことが問題ではありません。事業譲渡がJAからの信用事業分離の政策手段にされていることこそが問題であり、JA全中は速やかに総合JA解体の事業譲渡に反対の姿勢を明確に打ち出すべきです。自民党頼みだけでことを進めることは大変危険で、与野党を問わず政治勢力を結集することが自主・自立の協同組合のあるべき姿です。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日