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【農水省経営局の担当者と質疑応答】信用事業譲渡は有効か?2017年1月27日

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受け皿は特定承継会社
代理店化は机上の論理

 JAからの信用事業譲渡は政府が勧める農協改革の本丸ですが、事業譲渡についての認識はそれほど進んでいるとは思えません。その最大の理由は、これはJAの自主選択だという説明があるからのように思えます。しかし、JAの監査が公認会計士監査に変わり、また准組合員の事業利用規制が宿題になっていることを考えると、とてもJAの自主選択だからとのんびり構えている訳にはいかないでしょう。前回の新世紀JA研究会の第3回危機突破・課題別セミナーで、農水省からはじめて事業譲渡およびその実施方法としてのJAの代理店化の考え方と内容が明らかにされました。JAが農林中金・信連の代理店になることによってJAの信用事業はどのように変わって行くのか、今回の農水省説明を今後の対策の出発点にして行くことが重要です。

 ――農林中央金庫の100%子会社としての特定事業承継会社を受け皿として事業譲渡を進めるということですか。また、代理店になった時には、公認会計士監査の対象外になるのかどうか。さらに、准組合員の利用規制についてどのようにお考えなのか、准組合員の調査はどの程度進められていますか。

【農水省経営局の担当者と質疑応答】信用事業譲渡は有効か? 【農水省】信連がない県がいくつかあります。そこで、農林中金が事業譲渡を受け入れる場合の受け皿として特定承継会社を考えています。農林中金は、元来リテールの仕事はやってきておらず、システムやその他の面で体制面ができていません。事業譲渡をしたいというJAがある場合、それを受けられるような制度を作りましょうというのが特定承継会社での取り扱いの趣旨で、平成38年までの暫定措置としています。代理店になった場合、負債20億円と言った大規模なJAは別にして、信用事業の観点からは公認会計士監査の対象にはなりません。
 准組合員の事業利用規制については、5年の間に調査をして結論を得るということで、今申し上げられることは何もありません。また、准組合員の調査の進捗状況ですが、どのような方法で調査をすれば適切かということで、そのマニュアル案を検討してきました。いま、そのマニュアルがやっとできたところで、100ぐらいのJAにご協力を頂いて、その改善点についてご意見を頂いているところです。
 また、生活関連のインフラサービスについては、例えば何メートルや何キロ以内の距離に金融機関や生活購買店舗がなければ、不平等、不満足や不便を感じるのか等の一般的な条件について調査を進めています。

 【JA】これからの信用事業の収益環境は大変厳しい、また、バーゼル規制なども強化される、それは分かりますが、JA、信連、農林中金を通ずるトータルのコストやリスクは変わらないのでは。代理店化によって、農林中金に事業権限を集中することでリスクはむしろ高まるのではないですか。今一度原点に戻って、農業融資など自立JAの方向を指導するのが本来の姿ではないですか。

 ――農林中金の還元は非常に高いと思います。0.5~0.6%ぐらいの還元で、異常というぐらい高く、それだけリスクの高い運用をされているとも思いますし、その努力は多とします。しかし、だとすれば、農林中金への事業譲渡・代理店化の方向ではなく、各地域のJAが融資を拡大して生き残りなさいと指導すべきではないですか。

 【農水省】JAの貯金は90兆円、貸し出しは20兆円で、うち農業融資は1.3兆円です。これ以上農業融資を伸ばせといっても農業粗生産額が10兆円にも満たないので無理があります。おそらく、JA段階で融資先がこけると農協全体の経営が危うくなるケースが結構あります。またトータルとしてのリスクは変わらないじゃないかということについては、違う見方をしています。リスクの許容量は、個々の農協で受け入れるのか、信連・農林中金で受け入れるのかで全然違います。小さい規模の農協ですと、リスクの許容量に限界があります。
 
 ――JAはもともと協同組合金融です。メンバーシップということで、最終的には組合員が全て責任を負います。そうした考え方に立って、信連・農林中金の連合組織や貯金保険制度、JAバンク基金など様々なサポート体制が敷かれています。営利企業とは違うという認識が必要と思います。むしろ今の仕組みを充実させていくことが重要ではないですか。

 【農水省】協同組合金融と言っても、金を動かす点では他の金融機関と同じです。リーマンショックの時には、JAが農林中金を支えましたが、今、JAにその余力はありません。それと、JAでは、自己資本と同程度のものを外部出資として連合会に預けているにもかかわらず、自己資本として扱われていますが、このようなことは、本来金融機関としてあり得ず、限界にきていると思います。
 また、貯金保険機構にしろJAバンク支援基金にしろ、JAの個別判断で行ったことに対して全体のお金を使うことについてはなかなか許されなくなってきていると思います。したがって、信用事業譲渡について、それは絶対だめだということではなく、メリット・デメリットをよく考えて下さいということです。

 【JA】信用事業譲渡のメリットとして、信用事業から経済事業に人員をシフトすることができるとされているが、現実的には不可能に近く、人員整理に終わる結果になりかねません。それから、農業所得の増大はJAだけの責任ではありません。政府が言うのは、今の農業者を半分にして所得倍増すると言っているのに等しく、これでは地域の農業・農村が成り立ちません。

 ――水田農業のもとでの東南アジアなどでは、総合農協は重要な役割を果たしています。信用事業の兼営は維持すべきと思います。

 【農水省】総合事業の意義は認識しており、JAが農林中金の代理店になっても、組合員には総合事業を利用できる仕組みは維持できると考えています。

 【JA】規模の小さいJAではリスクやコストを負担することは難しい。だとすれば、それは合併で解決すべきでしょう。JAグループと農水省はもっと信頼関係に基づく将来の方向性を検討すべきと思います。それから、もう十分な積立て水準に達しているので、「JAバンク支援基金」の掛け金凍結に続いて、貯金保険機構の掛け金についても凍結してもらいたい。

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