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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第9回 地域農業の構造をいかに改革するか2017年4月8日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

ー日本型農場制農業の創造を目指す(株)田切農産(長野県飯島町)-

「時計の針を止めずに分解修理」に成功し、すばらしい成果をあげている先進事例は、私の調査ノートには数多く色々のタイプのものがあるが、その中から、長野県飯島町田切地区にある(株)田切農産の社長をつとめている紫芝勉君のすばらしい活動とその基盤にある「田切の里営農組合(一般社団法人)」といういわゆる二階建て方式による日本型農場制農業の姿、そしてその創造をめざして一体となって推進・指導してきたJAや役場等々で組織された飯島町営農センターの活動や役割について述べてみたい。
 まず、その姿と輪郭を判ってもらうために紫芝勉君の作った第1図を示しておきたい。

(株)田切農産(長野県飯島町)第1図のPDFはこちらから

 (株)田切農産は図に示したように多彩な営農活動を行っているのであるが、その基盤には田切地区全戸で組織された一般社団法人「田切の里営農組合」があり、農地に関する権利の調整や水利や農地に関する利用関係の調整など多面的な活動を行っている。こういう地域の姿を創りだすことを通じて地域が一体となって多彩な活動を行なえるようにしているのである。

<田切地区の特徴>

 そこで(株)田切農産のある田切地区の特徴を参考のために記しておこう。
 (1)田切地区は飯島町に合併する前は旧村・田切村であった。飯島町は飯島、本郷、七久保、田切の4つの村が合併してできた。
 (2)田切地区には6集落あり、細かなことはその集落で決める。田切地区には区会があり、水利や道路の補修などはこの区会で決める。農業にかかわることは営農組合(=区)で決める。田切地区はまとまりがよく、これは昔からの人柄、土地柄で誰か一人でリードするのではなく、「長けた人」に任せながら全員一致でやってきた。また田切地区には、かつて製糸組合があり、伊那地方で最後まで残った製糸組合であり、こういう協同組合の活動と精神がいまだ伝統として生きているように思う。
 (3)田切地区の水田面積は110ha、農家戸数は240戸、うち80戸が(株)田切農産に土地を出し(貸し)ている。専業農家は10戸ほど、認定農家は3戸、田切農産を入れて認定農業者数は4。
 (4)(株)田切農産には田切地区の240戸の全員が出資。出資金は1株=1000円で5株出資とした。配当はしていないが、配当の代わりに委託(利用率、発注率)に応じて適切な還元をしている。
 以上は紫芝勉君の説明である。

<田切農産の活動>

 田切農産の社長をしている紫芝勉君は八ケ岳中央農業実践大学校の卒業生であり、かつて20数年前、私が特別講師として大学校で教えた時の学生であった。並み居る学生の中でひときわ目立つ鋭いかつ重要な質問を私に向けてした学生だったという記憶があったので、20数年ぶりに旧交を暖め、そのすばらしい現在の彼の活動に感動を憶えた次第である。
 紫芝君が社長をしている(株)田切農産の経営活動の内容は前掲図に示したとおり、普通作部から直売部にいたる7部門ですぐれた活動をしており、安定的経営を実現しているが、それぞれ経営成果などを含めて広範な活動を行っているが、その詳細については次回に述べよう。

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